ソルの魔女っ子計画〜空飛ぶ箒編〜(終)
空飛ぶ箒、最終回です。涙が出ますね(真顔)
「よし、箒の仕上げにかかろう」
晩御飯を食べ、ソルとリルを置いて鍛冶小屋に来た。
ちょっと1人でやりたかったからな。完全に没頭できる環境でやる。
「ネタ切れ解消にはやっぱり、魔法を作るしかないか」
移動、攻撃、防御の魔法は搭載したんだ。あとの......何かを載せたいな。
「となると、回復やバフ、デバフか......俺、聖属性とか持ってねぇよ......」
ただの怠慢だ。魔法を覚えることを面倒くさがった俺が悪い。
今ある物で、何か新しい魔法は作れないものか。
「......採取用の魔法とかどうだろ」
風属性魔法の『ウィンドスラッシュ』を元に、風の鎌で草を刈り取る魔法とか作れないかな。
魔女と言えば薬。薬と言えばポーション。ポーションと言えば薬草と、そう言う感じに連想した。
「う〜ん、でもそのまま切ったら元の植物がダメになるかもしれんしな......」
薬草の切り口を塞ぐ魔法とか、植物を回復させる魔法とかないかな?
「あ! 木魔法!」
おいおい、なんでこんな簡単な事が思いつかなかった。木魔法、というより自然魔法ならその分野は十八番だろう。
「頼むぞ、自然魔法。魔法作成!」
今回作るのは、『狙った植物を風の刃で刈り取り、回復する』魔法だ。
結構複雑なイメージのせいか、魔法陣の円は25個だ。
そして今回は実験もかねている。それは『既存の魔法の応用』が出来るのか、ということだ。
今から作る魔法で言うと『サーチ』と『ウィンドスラッシュ』の応用となる。
さ、イメージを固めよう。まずは発動する順番からだ。
サーチで採取対象を探し、ウィンドスラッシュで刈り取る。そして植物の傷を、魔力で覆って回復するイメージだ。
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『ガン!』
『ガン!』
これは3ミスと捉えるか、2パーフェクト3グレートと捉えるか。
ここはモチベーションの為に後者で捉えよう。
次に発動速度だが、これは1秒だ。
認識から行動までに1秒もあれば十分だろう。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
これは完璧判定なのね。なんか緩くなってない?大丈夫?ソルの尻尾揉む?
「脱線しちゃいかん。集中しろ」
尻尾の事は後で考えよう。
そして次はスキルレベルだが、まぁ大丈夫でしょ?レベル100だぞ?
『カチン!』
『カチン!』
『ガン!』
『ガン!』
『カチン!』
なんだ? まだレベルが足りないのか? 嘘だろ?
まぁ、なってしまったものはしょうがない。受け入れるしか道がない。
「最大MPはそこまででしょ」
サーチとかを使うとは言え、そこまで必要にならないだろう。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『カチン!』
「ぬぅ......何故この魔法にこんなに苦戦してるんだ......」
採取用とか言ったからダメなのかな。知らんけど。
では最後、お名前タイムだ。
「『ヘルバハーベスト』」
名前の意味はそのまんま『草の収穫』という意味だ。どうかな?
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
好物だけど、毎日食べたいとは思えない。そんな反応の仕方だな。これは。
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『自然魔法:ヘルバハーベスト(消費MP:60)』の作成に大成功しました。習得しますか?
『はい』『いいえ』
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「はい、と」
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『自然魔法:ヘルバハーベスト(消費MP:60)』を習得しました。
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効果確認は後で、とりあえず箒に刻んどくか。
「頑張ろ。足りない分は後から足すとするか」
魔法を作ったら、その時に箒もアップデートすればいいからな。焦る必要はない。
そうして3時間ほどが経ち、何とか魔法陣を刻み終えた。
「ではでは、魔石の粉を入れていくぅ!」
最後の作業だ。これで箒に魔力を流せば、好きな魔法が発動するだろう。
「これ......何のスキルで粉にするんだ?」
『聖神魔石:インフィニティレイ』は鍛冶スキルでは粉末に出来ないだろう。かと言って、錬金術や裁縫スキルでも無理だろう。
となると――
「『調薬』......だな」
漢方薬とか、乾燥させて粉末化したやつが多いからな。きっと調薬スキルに粉末化があるだろう。
「粉末化!」
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『聖神魔石:インフィニティレイ』を粉末化しますか?
成功率:100%
消費MP:500
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「安いな。最高だ」
確定かつ低燃費。とても良い仕事をしてくれるな、調薬スキルは。
......待て、これ本当に調薬スキルだよな? 変な薬になったりしないか?
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『光の星屑』Rare:64を作成しました。
『調薬』スキルレベルが81上がりました。
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「うぉ! 経験値うんま!! ってか、どんどんレア度上がるじゃん。『ジュエラー』のせいか?」
あの称号、宝石を使用したアイテムの品質を上げると書いてあったが、まさか素材の段階から適用されてるのか?
それより、変な粉薬にならなかったことを喜ぼうか。
わ~い。
「まぁいい。粉を入れていこう。『サーキュレーション』『アウラ』」
砂鉄を入れていた容器に、魔法を使って『光の星屑』を入れていく。
この容器、中で粉が混ざらないから超便利だ。
そして次に、鍛冶小屋の備品にある柄が長い小さなスプーンを持ってきて、『光の星屑』を乗せた。
「金色に光ってるの、めちゃくちゃ綺麗だな。見惚れる」
正に光の星屑。そう言えるほど、金ピカに光る粉となっていた。
俺は様々な角度から眺め、充分に満足したので、光の星屑を彫った魔法陣に入れていく。
「これで......いいのかな? いいよな? うん、いいよ」
魔法陣に粉を入れ終わると、その魔法陣が箒と馴染むように一体化した。
「すげぇ......これで使えるようになったのか?」
そう思い、箒に魔力を注いでみた。すると――
「おぉ! 浮いた!!」
フラカンが発動し、箒が浮いた。
「ふんふん、ちゃんと移動も出来るし、完璧だ!」
左右上下に動くように制御すると、ちゃんとイメージ通りに動いてくれた。
「喜んでくれるかな、ソル」
空飛ぶ箒が出来たんだ。喜んでくれるといいな。
「っとと、他の魔法陣にも入れていかないと」
このまま全ての魔法陣に光の星屑を注いでいこう。
それから30分程度で、全ての魔法陣に光の星屑を注ぎ終えた。
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『ルナちゃん特製☆メテオラス』Rare:65 製作者:ルナ
攻撃力:2,500
耐久値:∞
付与効果『範囲拡大』『風の手助け』『焼却』『美化』『太陽光吸収』『顕現』『帰還』『不壊』『生命力増強:1,500』『魔力増強:2,000』『神速回復:魔力』『INT補正:特大』『魔力吸収:5%』『太陽光強化』『月光強化』『星の煌めき』『癒しの光』『鼓舞の光』『感情超強化:愛』
『専用装備:ソル』
刻印魔法『フラカン』『クロノスクラビス』『アクアスフィア』『イグニスアロー』『アウラ』『茨よ』『蔦よ』『サーチ』『サーキュレーション』『サンダー』『サンダーチャージ』『マグナ』『ヘルバハーベスト』
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「で、できたぁぁぁ!!!」
空飛ぶ箒でありつつ、神器を超えてる(多分)超高性能のアイテムだ!
「俺の知ってる装備の良いところを全部盛ったような効果だ......これ、控えめに言って頭おかしい」
パッと見でステラ、ブリーシンガメン、グラジオラスの効果は分かる。
この箒、『メテオラス』は、俺の知ってる武器の中で最も高性能なアイテムだと言えるだろう。胸を張って、これが自信作だと言える。満足だ。
「よし、帰って寝よう! 明日のソルの反応、楽しみだな〜」
そうして寝室に戻ると、俺のベッドにはリルが先に寝ていたので、そっと布団に潜り、一緒に寝た。
そして朝――
「おはようリル」
「おはようございます、父様」
寝癖の付いたリルの髪を撫でながら、俺は昨日の夜の話をした。
「ソルの箒が完成してな。後で渡すんだ」
「本当ですか!? それは楽しみですね!」
「あぁ。じゃ、ご飯にしよう。その後に渡す予定だ」
「はい!」
◇◇
「ソル〜」
「ん〜? どしたの〜?」
「はいコレ。空飛ぶ箒だ。受け取ってくれ」
「出来たの!? ありがとう!」
「どういたしまして。そして性能を見てみろ、飛ぶぞ?」
「どれどれ?............っ!」
驚きすぎて声が出ない様子だ。
「言ったろ?『飛ぶぞ』って」
「だ、ダブルミーニング......」
意識も飛んで、箒も飛ぶ。完璧っすわ。
「こ、これ。本当に受け取っていいの?」
「当たり前だ。ソルのために作った、ソルの専用装備だぞ? 受け取らなかったら俺、寝込むわ。一週間くらい寝込みますわ」
「それは......うん、受け取るね! でも私、貰ってばっかだよ......何も返せない」
お? この期に及んで対価を出すつもりか? そんなの、ソルが隣にいてくれるだけで1万倍になって返って来てるというのに......
「気にするな。俺が好きでやってる事だしな」
「でも、何かお礼がしたいよ」
「そう思うならソルの好きにすればいい」
「じ、じゃあ......ちょっと目を瞑って?」
「ん? はいよ」
何を渡されるんだろう。
もしかして、ワイバーンの心臓とか?
結構気になってたし、期待しておこう。
「い、いくよ?」
「うん」
ちゅ
「ん?」
今、ほっぺに柔らかい感覚があった気が......
「ん〜? 目を開けても?」
「う......うん」
そして目を開けると、目の前に顔が真っ赤なソルがいた。近い。
ん? 近い? 赤い?
Oh......今、全てを理解した。
「ありがとう」
お礼を受け取った側だけど、俺がお礼を言う。
よし、ちょっと抱きしめてみるか。
「る、るなくん!?」
「感謝の気持ちだよ」
とっても嬉しいよ。凄く幸せだ。
「え、えへへ......頬っぺにちゅーしちゃった」
「知ってる」
感覚とその後の表情で理解した。
「ん〜可愛い。今度、リアルでもしてくれるか?」
「あ、当たり前だよ!」
「言質、頂きました。逃がさないからな?」
「も、もちろん! いっぱいちゅーしちゃうもん!」
「頬っぺに、を付けてな」
安全ラインを保って行きましょう。俺達はマイペースに、ゆっくりと進んでいけばいいからな。
「母様が遂に動きましたね。それも大胆に」
「ですね。これは熱い展開ですよ! この先が楽しみです!」
「こんな狐ちゃんを見たら、稲荷ちゃんは泣いて喜ぶだろうなぁ」
3人が何か言ってるが、気にしない。
「じゃあルナ君。今日から魔女っ子の服、作ろ?」
お、魔女っ子計画が進むのか。
「あぁ。前にも言った通り、金属を糸にするのは任せろ」
「うん! 頼りにしてるね!」
さぁ、これからは服作りかな? 作業の合間に、リルの分の箒も作りたいな。
2人に関しては、何も言うまい.....シュウマイ。
あ、今回作った『ヘルバハーベスト』は今後もちょくちょく出る.....予定です。それよりも『フラカン』に悩まされますがね(^・ェ・^)
では次回、『ソルの魔女っ子計画〜ローブ編〜』です!
お楽しみに!