ソルの魔女っ子計画〜空飛ぶ箒編〜(3)
是非とも、楽しんでくださいna!
朝ごはんを食べ終わった頃――
「リル、今日も小屋に来るか?」
「はい!」
「いいな〜私も〜!」
おやおや。朝から抱きついて来たりと、今日はソルの甘えたがりデーかな?
「もちろん。じゃあフー、シリカ、家の事は頼んだ」
「「はい! / うん!」」
「じゃ、また後で」
「「行ってらっしゃい!」」
う〜ん、何故だろう。メイドの居る生活に慣れてきた気がする。
おかしいな、2人とも俺の『武器』のはずなのに......
もう、気にするだけ無駄かもな。ありのままを受け入れよう。
鍛冶小屋にて――
「じゃあまぁ、これから数時間に及ぶ魔力打ちをする訳だけど、2人は暇だぞ?」
寝る前にどれだけ魔力打ちをしたか忘れたので、完全に感覚でやる。故にどれくらいで終わるかが分からない。
2人の時間を奪ってしまうのは嫌だからなぁ。
「ううん! ルナ君と一緒なら暇じゃないよ!」
「そうですよ!」
途中で寝た子が言うと信憑性がガタ落ちだが......午前だし、大丈夫か。
「そう言って貰えるのは嬉しいな。でもまぁ、暇になったら2人で遊んでてもいいからな?」
「「うん! / はい!」」
ちゃんと念を押して言っておかないと。暇になることに罪悪感を持たれたらこっちが辛いからな。
「では、長い長い魔力打ちの、始まり始まり〜」
「「ぱちぱちぱち〜」」
ではまず、小さなハンマーに全力手加減で威力を抑え、全力の魔力を込める。
そして! ソルへの愛を! 全開で! 込めるゥ!!!
カン!......カン!......タン!
あ。なるほど。こうやって徐々に音が変わるんだな。ほんの少しの音の違いが分かったぞ。
タン!......タン!......タン!
タン! タン! タン! タン! タン!
綺麗な眼を均等に叩いていく。この綺麗な球体を歪ませてはいけないからな。
そう言えばフェンリルの眼って、完全な球体なんだな。人間とは違う。すげ〜
そうして魔力打ちを始めて、4時間が経ち、遂に何も音が鳴らなくなった。
そして肝心の『幻獣狼の眼』は、金色から虹色に変わった。
正直、キモイ。
「完成だ」
「「おぉ〜!」」
「......ソル、テキスト付きとテキスト無し、どっちがいい?」
「有りで!!」
「......いいだろう。心して見るといい」
なんかね、もう嫌な予感がプンプンしてんだ。
そして俺は2人の前にウィンドウを出す。
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『夢幻の愛』Rare:42 製作者:ルナ
愛の具現化とも言えるアイテム。
この世に存在する数種の幻獣の素材に、無限とも言える愛が注がれた物。
神ですら知らぬ、優しい愛が込められている。
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「......やっぱりな」
「へ、へへへへ」
「凄いですね......元の眼の数倍は力を持ってますよ、これ」
「そうなのか」
でも、神が嫉妬に狂うのではなく、知らない愛を込めちゃったのは予想外だな。
「じゃ、こいつらを魔石にするか」
「魔石? 何それ?」
「あぁっとな。魔石は――」
それからソルに、魔石について説明した。
「へぇ! じゃあルヴィちゃんや他の魔法部門に出てた子が使ってた杖って......」
「あぁ。間違いなく魔石が付いてるな」
「なるほどね〜」
でも、みんなには申し訳ない事をした。その効果を実感する前に消し飛ばしちゃった☆
「では参ります。魔石化!」
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『未来光る宝石』と『夢幻の愛』を魔石化しますか?
消費MP:3,000
成功率:100%(初回のみ)
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えむぴー、足らん。
「アルテ」
アルテを装備する。これでギリギリ足りる。危ないねぇ?
......生産の為のレベル上げも視野に入れないといけない所まで来ちゃったか。
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『聖神魔石:インフィニティレイ』Rare:63を作成しました。
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「......やば」
レア度バグってない? 大丈夫? それ、もう神器で良くない?
いや違うな。俺は『神器を超える』と言ったんだ。神器と同格ではダメだ。
システムの壁ギリギリまでやってやる!
「よし、これで魔法陣用の魔石は完成だ!」
「おめでとう! それとお疲れ様!!」
「お疲れ様でした。父様は頑張りました!」
うぅ......2人が1番欲しい言葉をくれる......特にリル、『頑張りました』は本当に染みるよ......ありがとう。
「ありがとう。取り敢えず昼ご飯にしよう。続きはそれからだ」
「うん!」
「そうですね! 私もお手伝いします!」
「ありがとうな、リル」
「えへへへ〜」
可愛いすぎんか? こんなんダダ甘になるのも仕方ないだろ?
「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」
お昼ご飯は野菜炒めとスープでした。あっさり健康的!
「じゃあ作業再開するわ。来るか?」
「「うん! / はい!」」
仲良しだねぇ。いいぞ、モフモフがモフモフとモフモフに仲良くなるのはいいモフだ。
鍛冶小屋に戻り――
「ま、後の作業は魔法を作ったりその魔法陣を彫って魔石の粉を垂れ流すんだけどな」
刺青みたいな感じだな。
「ってな訳で、今回使う箒はこちら。『箒de蜂起』ぃ〜」
「「おぉ〜」」
「このままでも箒君......箒ちゃんですが、この子に魔法陣を刻んでいくぞ〜」
「今、私が使うから男の子から女の子に変えたね?」
「思考を読むな」
「へっへっへ」
辞めてくれる? ちょっと気になったから訂正したのに、その裏側まで見るのはやめて? 恥ずかしい。
「でな、まず最初に飛行できる魔法が必要な訳だ」
「そうだね。ルナ君、空を飛べる魔法はあるの?」
「ない。だから作ります!」
「「いぇ〜い!」」
いぇい。
俺の中でどんなイメージで空を飛ぶかによって、箒の挙動が変わるからな。慎重に、かつ大胆に魔法を作ろう。
......よし、イメージは固まった。
3つに分けるなら、『空間の操作』『風属性魔法』『自然魔法で補助』という感じだな。
「では。魔法作成!」
はい。30個の円ですありがとうございます。
魔法を作るのも大変、魔法陣を彫るのも大変、魔石を入れるのも大変。
3つの大変が集まった。変態だね。
さぁ、思考を切り替えよう。まず最初のイメージは『重力に逆らう』『空間の固定』イメージだ。
本来落ちる物が上に上がっていき、本来落ちる物がそこで留まる。そんなイメージ。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
よし。4個は完璧に決まった。次だ。
モモンガのように『滑空』をイメージする。
具体的な感覚では、魔力の板が出て、それで風に乗る......という感覚で。
だけどまだ1つ足りない。
それは『ブースト』だ。水平方向への加速が無ければ動けないからな。飛行機で言うエンジンの役割を、『風』で再現する。
『ガン!』
『ガン!』
大丈夫、成功だ。でも、まだ気を緩めてはいけない。
次の発動速度。これが難解だ。0.2秒程度にすれば加速が早すぎて体がぶっ飛ばされるし、5秒程度にすれば、ゆっくりすぎて敵から逃げれなくなる。
となればこれは、『可変式』でいくしかない。
最速0.2秒、最遅が5秒にしよう。高速飛行と低速飛行をイメージ。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
よし、完璧。速度は固定しないとダメかと思ったが、そうでも無いらしい。良かった。
そして最大MP。これは幾らでも参照してくれ。アルテも付いてる。
消費量に関しては、完璧作成ボーナスで少なくなる事を祈る。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガガン!』
『ガガン!』
ひぃぃ!! 怖い音がした! だ、大丈夫か? いや、信じろ。ここは大丈夫だと信じ込むんだ。
そしてスキルレベルだが、今回は『自然魔法』と『風属性魔法』だから大丈夫だ。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガッ......ガン!』
『ガン!』
それ何ィィ!? 怖いんだけど! 完璧から一気に失敗とか、そういうのは辞めろよ?
そして最後、名前だ。これはいつもの厨二ネーム。
「......『フラカン』」
風の神の名前だ。クロノスクラビスと言い、フラカンと言い、勝手に名前を使ってすまんな、神様達。
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
『ガン!』
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『自然魔法:フラカン(消費MP:50)』を完璧に作成しました。習得しますか?
『はい』『いいえ』
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おえぇぇえ!? 継続消費じゃないだと!? 最高か?
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『自然魔法:フラカン(消費MP:50)』を習得しました。
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「出来た! 1発だぁ!!」
「凄いね! こんな短時間で空を飛べる魔法を作れるんだね!」
「おめでとうございます! 空を飛ぶ魔法など、誰も使ってるところを見た事がありません!」
「やったぁ......」
ここ最近で1番嬉しい気がする。だって、空を飛べるんだもん。ロマンも実用性も完璧だろ?
「よし、後は魔法陣を刻むぞ〜!」
「「おぉ〜!!」」
って言っても、2人は見てるだけなんだがな。
楽しんでくれるといいな。
次回、刻む。デュデュデュスタンバイ!
にしてもインフィニティレイ.....名前がカッコイイですね。好きです。
幻獣素材と幻の宝石。この2つからできる魔石はとんでもない効果ですよ、えぇ。
それでは、次回も楽しんでいただけると嬉しいです。