潜入!プレイヤーショップの裏側!〜リルを連れて〜(後編)
プレイヤーの流行り
「剣と杖、弓を売ってるよ! フォレストウルフ製だよ!」
「こっちは水筒を売ってるぞ! 1回煮沸した安全な水だぞ! 安いよ!」
様々なプレイヤーの声がする大通りを、俺はリルと手を繋いで歩いていた。
「う〜ん、何が流行りだ?」
「流行り......というより、どこもフォレストウルフ製が多いですね」
「そうだな。鉄で作らないのはなんでだろな?」
「さぁ? あ、父様なら何を売りますか?」
「大量生産可能で、かつ作りやすいという面でオリハルコン製の物だな。鉱山でボロボロ取れるし、精錬も簡単。それに加工しやすい上に高性能。言う事なしだ」
「なるほどです」
『お兄さん、普通の人間はオリハルコンなんて貴重な物、売れないよ?』
「え? 貴重?」
それは流石に盛ってるだろ。サーチ使えばボロボロ取れるんだぞ? 貴重もクソもない。
『あのね、お兄さん。オリハルコンの別名、知ってる? 神金だよ? 神の金だよ? 貴重に決まってんじゃん』
「鉱山で大量に採れるのに貴重とは......」
『他の人間が見つけてないだけだろうけど、本当に貴重な金属なんだからね?』
「へぇ〜い」
その内鉱山の奥にも行かないとなぁ。オリハルコンの匂いがするぜぇ......
そうして雑談しながら大通りを歩いていると、見知った人間がいた。
「お、あれマサキ達じゃね?」
「本当ですね。ついて行きますか?」
「もちろん。バレるまで後ろを付けよう」
ストーカー行為だよな、これ。警告来るかな?
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「ルヴィ、本当にそれ買うのか?」
「うん! 前のやつより性能良いからね」
「そうか。にしてもそれ、何で出来てるんだ?」
「ルビーとワイバーンの心臓の魔石」
「ぷっ......ルヴィが、ルビーの......杖......ぷふっ!」
「何よ! 別にいいでしょ!」
「いや、だってさ、ははっ! ガーディ達はどう思う?」
「ん? 別に何とも、かな。ルヴィの攻撃力が上がれば、俺達全体の動きが良くなる」
「そうだよ! ルヴィちゃんの魔法、もっと強くなるんだもん! 頼もしいよ!」
「ベクトルが違った......」
「はい、買ってきたわ。行きましょ?」
「次はどこだっけか......ニクス山?」
「そうだぞ。アイスワイバーンの討伐だ」
「「楽しみね!」」
「だな!」
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マサキ達は馬車に乗り、そのまま何処かに行ってしまった。
「マサキ達、あの依頼を受けるのかな」
「みたいですね。アイスワイバーン、Aランクです」
「ってかワイバーンの心臓とか言ってなかったか? そんなのがあるんだな」
「心臓は希少部位ですね。稀に取れるそうですよ? 母様が言ってました。それと、とても美味しいらしいです」
「ハツか......美味しいもんな」
俺、焼き鳥のハツ好きだもん。ワイバーンの心臓が気になるぞ。
『ワイバーンよりドラゴンの方が美味しいよ』
「ドラゴンとか、今までに出会ったのってあの神龍だけか」
『えっ......神龍かぁ。よく出会ったね、お兄さん』
「なんか知らんけど、俺達の持ってる龍魔法目当てで目の前に降りてきたんだよ。んで、仲良くなれそうだったから写真撮った」
『勇者じゃんお兄さん! 凄いね!』
「だろ? あれは武勇伝の1つだ」
良い出会いだった。神龍さん、元気かな?
「でも次に出会ったら倒すんですよね?」
「当たり前だ。あんなカッコイイドラゴン、戦うしかないだろう」
『戦闘狂でもござったか、お兄さんは』
ちゃう。断じて違う。戦闘狂はアテナで、俺は一般ピーポーだ。
そんな雑談を続けながら、俺達は大通りを歩いた。
「うん、まだ活性化してないようだな」
「ですね。フォレストウルフが大半で、ごく稀にワイバーン製の物があるくらいです」
「他の店も、皿とか家具とかあっても品質が低すぎるんだよなぁ」
本棚の品質が2なのを見て絶望したわ。
どんな木材で、どんなスキルレベルで、どんな作り方をしたらレア度2なんて作れるんだよ。
「今日はもう帰ろうか」
「え〜......もう少し外にいたいです」
んぬっ!? ここでおねだりですか!
「しょ、しょうがない。そうするか。どこに行きたい?」
『リルちゃんにも甘いんだね、お兄さん』
「うっせ!」
甘くないもん! 優しいだけ!......多分。
「父様、王城に行ってみたいです!」
「王城......そう言えば行ったことがないな。多分、門の前で止められるだろうけど、それでもいいか?」
「はい!」
予定変更! プレイヤーショップの潜入調査から、王城に遊びに行くぞ!
「ここの噴水、結構大きいな」
「はい! イニティより大きいです!」
手を繋いでいるリルがぴょんぴょん跳ねている。可愛い。
「あ、プレイヤーだ。死んだな、あの人」
「あぁやって復活するんですね。語り人って不思議です」
『神の力、凄いでしょ? 語り人の蘇生って、冥界神とか創造神とか、かなり上位の神達がやってるんだよ』
「「へぇ〜」」
豆知識が増えた。......どうせ神界に行く時には忘れてるだろうけど。
そうして歩いて行き、王城の門の前まで来た。
「近くで見ると、より綺麗な城だなぁ」
「ですね! お家のお城より大きいです!」
『真っ白で汚されていないのは、善政を敷いてるからだろうね』
「政治は知らんが、いい王様なんだろう」
門の前で2人で城を見ていると、何やら数人の足音が聞こえてきた。
「誰ですか? 謁見予定はもう無いはずですが......」
どうやら衛兵さんのようだ。
「あ、ただの親子です。お城を見てたんですよ」
「そうですか! お嬢さん、ロークス城、綺麗でしょ?」
「はい! とっても綺麗なお城です!」
「それは良かった。お父さん、本日はお散歩で?」
「はい、そんなところです。まぁ、そろそろ城に帰るんですけどね」
「ん? 城?」
あ......やらかした。普通に家に帰るって言えばよかった。
「いえ、言い間違いです。家、ですね」
「でも父様、私たちのお家はお城ですよ?」
「リルぅぅ!!!!」
何バラしとんじゃい! 戦争になったらどうすんだ!
「城......家......もしかして、お父さん。武術大会で優勝されました?」
「え?......えぇ、まぁ」
もういいや。なんか起きたら、首1つで許してくれるように説得しよう。
「「「本当ですか!?」」」
ダメだ、逃げよう。絶対に城関連で問い詰められる。
「では、この辺で。またここに来たら会いましょう」
「えっ、待ってください!」
「嫌です!」
リルを抱っこして歩く。これで追ってきたら......クロノスクラビスで少し動きを止めよう。
城門から歩くこと数分――
「追っては来なかったな。良かった〜」
暫く歩いたが、全然追って来なかった。安心だ。
......とりあえずリルを降ろそうかな。腕が疲れた。
「うぅ......し、仕方ありません」
お? 一瞬しがみついたが、前にソルが言ってたことを思い出したのかな?
「ほら、行くぞ。暖かいお家に帰るぞ〜」
「はい」
『家という名の城。城という名の家!』
何かシリカがバグっとるが、大丈夫だろう。フーにもそういう時期があった。
きっと、超短期間の厨二病的なやつなんだろうな。知らんけど。
それからゆっくり歩き、家に着いた。
「「『ただいま〜』」」
「おかえりなさい! 楽しめましたか?」
「あぁ。家の方は大丈夫だったか?」
「はい! 誰も来てませんよ!」
「なら良かった」
もしかしたら衛兵さんが来てるかと思ったが、大丈夫だったようだ。
「じゃあリル、ソルのところに行くといい。俺は箒を作るから」
「私も行きます」
まぁ、言うと思った。今日は甘えたいデーかな?
「分かった。シリカ、フーの手伝いするか?」
シリカを降臨させて聞いてみる。
「うん! 今日はありがとね、お兄さん!」
「あぁ。また出かけような」
「うん!」
ささ、空飛ぶ箒を作りますかな。
マサキ......死ぬなよ。
マサキ達はアイスワイバーンに勝てるのか、楽しみですね〜
次回はのんびり、箒作りですね。予告するなら.....そうですね。『ソルの魔女っ子計画』ですかね!お楽しみに!