潜入!プレイヤーショップの裏側!〜リルを連れて〜(前編)
今回のお話、結構お気に入りです。ほのぼのした回ですので、リラックスしてお楽しみ下さい(o˘д˘)o
朝食を終えた時――
「リル! 街に行くぞ!」
「はい!」
「おぉ、ルナ君が街に自分から行くなんて珍しいね! 何か欲しいものでもあるの?」
「情報だな。これから情報を集めに行く」
「ん〜、って事はそのまんま、情報屋に行くの?」
うぇ? そんなのあるの? 知らなかった。
「情報屋の存在に驚いているが、そこには行かん。自分の目と耳で入手する」
「そっか。でも気を付けてね? 色んなプレイヤーがルナ君を狙ってるよ? 基本近寄らないってのが鉄則だけど」
「え......俺、暗殺対象? VIT低いから速攻で死ぬんだけど」
困るなぁ。リルの目の前で死んだら、最悪王都が滅ぶぞ? リル1人で壊滅しちゃうぞ?
「違う違う! ファンだよ、ファン。大会で優勝したから、色んな人がルナ君のファンになってるの......男女問わず......」
「そうなのか。知らなかった」
「前からファンの人はいたんだよ? でもね、大会のお陰で沢山増えたんだ」
「よく知ってるな〜掲示板か?」
「うん。ルナ君の専用スレは全部見てる」
「こわっ!」
俺の専用スレがある事にも驚きだが、それを全部チェックしてるソルの方に驚いた。
「だってぇ......私の知らないルナ君がいたら気になるじゃん?」
「無いだろ。ソルが1番俺を知ってるよ。正直、母さんより知ってるんじゃないか?」
「いや〜流石にそれは......あるかもしれない」
ありそう、と言うよりある。確実に母さんより知ってる。
「っとと、話してないでもう行くか。じゃあ行ってくる。リル〜」
「は〜い! 今行きます」
「行ってらっしゃ〜い」
「「行ってきます」」
街に潜入調査だ。
プレイヤーがどんな物を売ってるのか、どんな人に向けて売っているのか、どんなものを買っているのか、どんな人が買っているのか。
プレイヤーの流行りとか、知りたいな。
「あ、ルナさん! 狩りですか?」
「お兄さん、私も連れてって〜!」
「狩りじゃない。潜入調査だ。それとシリカ、付いてこい。帯刀する」
「おっけ〜!」
シリカは何故か、フーと同じようにメイドになると言い出してからフーのお手伝いをしている。
ソルの作ったメイド服を着ているのだが、中々に似合っている。この2人のメイド服適性の高さには驚くばかりだ。
『これでよし!』
「ん。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
「『行ってきます』」
そうして城の敷地から出ようと思ったが――
「今日は人がいるな。客か? 虫か?」
「虫だったら潰しましょう。前に確認、取ってましたよね?」
「確認ってか、一方的な言葉だけどな」
『何かあったの?』
「いや、門の前にいる奴が人間か害虫かの話だ」
『ほえ〜、そうなんだ。お兄さん、実は嫌われ者?』
「一部の人間にな。上に立った以上、一定数からそういう風に想われる」
『面倒だね。人間って』
「「ホントそう / ホントそうですよ」」
人間、マジでめんどくさい。
「は〜い、開けてくださ〜い、出れませんよ〜」
「「「は、はい!」」」
ん?? 暴言が来なかったぞ?
とりあえず門を開けてみた。すると――
「ルナさん、握手してください!」
「フレンドになってください!」
「強さの秘訣を教えてください!」
あぁ......これがソルの言ってた事か......フラグになる前のフラグ回収、早かったなぁ。
「え〜と、全部お断りします。握手は毒が怖いのと、フレンドは作らないスタイルなのと、強さの秘訣は前に大会で言ったから」
「「「そんなぁ」」」
「いいのですか? 父様。友好関係が築けるかもしれませんよ?」
「「「うんうん!」」」
「えぇ......俺、知り合いとか作っても、結構な頻度で会わないと忘れちゃうしなぁ」
アウルさんとかタルさんとか、もう殆ど印象が......
「まぁまぁ。毒を塗られても死にませんし、握手くらいはいいのでは?」
「「「お願いします!」」」
う〜ん......
「まぁ、リルがそう言うなら。はい、どうぞ」
「「「ありがとうございます!」」」
この人ら息ぴったりだな〜、パーティか?
「俺、ルナさんに殺された時からファンです!」
「私、最初の生放送の時からファンです!」
「俺、掲示板で知って、そこからファンです!」
「あ、そう。とりあえず君は、殺してごめんね? 大会の時、楽しくて一人一人は覚えてないんだ」
「い、いえ!」
『殺された時からファンです』って、ヤバすぎだろ。超が付くほどのMなのかもしれない。
「じゃあこれで。皆、ユアスト楽しんでな?」
「「「はい!」」」
楽しむことを忘れちゃいけない。皆でこの世界を楽しもう。
「リル、行こう」
「はい!」
こうして出待ちプレイヤーとの出会いを終え、街を歩いていく。
「父様、見られてますね」
『お兄さん、めっちゃ見られてない?』
「せやな。リル、前に渡した指輪で隠れるぞ」
「はい!」
路地裏に入り、気配隠蔽系の効果を使う。
「じゃあ改めて行くか。最初は万能ツルハシを売ってくれたオッチャンの所に行こう」
「はい! 父様とお出かけ、楽しみです!」
「そうだな、楽しもう」
出来れば隠蔽系の効果は使わずに楽しみたかった。
カランカラン〜
「いら......いらっしゃい!」
「「こんにちは」」
「お、最初に買い物に来た語り人の兄ちゃんか! 今日はどうした?」
おぉ、覚えててくれてた。少し嬉しいな。
「今日は聞きたいことがあったので、それを聞きに」
「いいぞ? 道具関係ならなんでも聞いてくれ」
「では。空を飛べる箒を作りたくて何度も試したんですけど、上手くいかなかったんです。それで空を飛べる魔道具の作り方とかを知ってたら教えて欲しいな、と」
「『ぶふぅ!』」
「「ん?」」
オッチャンとシリカが吹いている。
『本当に言ったね! お兄さん、本当に言ったね!』
「まさか、そんなバカ正直に来るとはな......」
「はい。それで、何か知りませんか?」
「知ってるぞ。だが、タダではこの情報はやれん」
「幾らですか?」
「俺は金より、道具の方がいいな。そうだな......『品質10以上』の道具を持ってきたら、教えてやるよ」
「ではコレ、どうぞ」
俺はそう言って『箒de蜂起』を出した。
これはレア度21だし、条件クリアだな。
「え? どれどれ?......ぶふぅ!」
短時間に2回も吹いてる。オッチャン大丈夫か?
「お、お前! どこでこれを手に入れた!!」
「昨日作りました。言ったじゃないですか、『何度も試した』って。その失敗作です」
「なんでこれが作れて空飛ぶ箒が作れないんだよぉぉぉ!!!」
「え〜、そんなこと言われましても......」
困るよ。知らないから聞きに来たのに、『なんで作れないんだ』って言われても、困っちゃうよ。
「いいか、よく聞け。そもそも『魔道具』と『魔具』の違いを、お前は理解してるか?」
「いえ。何か違うんですか?」
「全く違う。『魔具』は魔力を宿した、ただの道具だ。魔力を流さなくても魔力的な反応を起こし、効果が発動するのが殆どだ。だが、効果に大小が生じることがある。だから、不安定とも言える」
パッシブ効果的な? 不安定なのは知らんけど。
「そして『魔道具』は、魔力を流す事によって、『魔法と同じ効果』が出せる道具だ。これは安定した出力だから、効果がバラつく事がない」
開発品と量産品的な? なんか違う気がするけど。
「それで、魔道具の作り方は至って簡単だ。『魔法陣を刻む』んだよ。
道具自体に魔法陣を刻み、そこに魔力を流すことで魔法が発動する。という訳だ」
ん?
「それって、どんな魔法でも乱発できるんじゃ?」
「はっ! 安心しな。素材が弱かったり、品質が低いと、そもそも効果を発揮しねぇよ。魔法に合った素材で、かつ、良質な魔法じゃねぇとそう簡単に強い魔法はポンポン撃てねぇんだ」
「そうなんですか。では、魔法の杖とかの役割りってなんですか?」
「ん? 知らねぇのか? あれは杖の先端に『魔石』が付いていて、その魔石に応じた属性の魔力を高め、魔法の威力を上げてんだよ。......ほら、そこの杖とか見てみろよ」
そう言われ、箱に入っている杖を指を指される。
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『ファイアロッド』Rare:5
攻撃力:2
耐久値:90/120
付与効果『火属性補正:小』
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「弱いですね」
「そりゃあ中古品だしな。お前さんならもっと強いのも作れるだろう」
俺、鍛冶を使えばレア度10以上になっちゃうからな。金属を扱えば、大体15くらいのレア度になってしまう。
だからこの杖を効果を超えるのは避けられない。
「これ、いくらですか?」
「1,000リテだよ。新品なら1,300リテだ」
「へぇ〜そうなんですね」
イニティは格安だ! ってレイジさんが言ってたけど、マジだった。
だってこの性能、イニティなら500リテぐらいだろ。
「では最後に、もう1つ質問していいですか?」
「勿論。こんな高価な物を貰っといて、情報で返せるなら嬉しいもんさ」
「じゃあ、魔法陣を複数個刻んでも効果は発動しますか?」
これが出来るなら、空を飛べる魔法とクロノスクラビスを付けてあげたい。これならソルを守ってくれるだろう。
「出来る......が、それはお前さんの『金細工』スキルレベルによる。もしお前さんが『神匠』の、それもレベル50以上なら『4つ』は刻めるだろう」
「100だったら幾つ刻めるんですか?」
「驚け、『10個』だ」
「じゃあ10個刻むとしましょう。丁度レベル100なんで」
「嘘だろ? そんなレベルまで上げてる人間、過去に数人しかいねぇぞ」
「じゃあその箒、なんでそんな品質なんでしょうね......付与のスキルレベルも、何か関係あったり?」
「聡いな......その様子だと、マジで神匠か」
「レベル100も、ですね。で、付与との関係は?」
「金細工と一緒さ。2つ無ければ意味が無い」
うわ、この人騙そうとしたな?まぁ、金細工をやってたら付与も上がるから、別に問題ないけどさ。
「付与も神匠で100なら、幾つ刻めますか?」
「......20」
「っしゃきた! ありがとうございます!」
ソルの箒、20個の魔法を刻めるようだ。ラッキー!
「お前さん、冒険者なのか? 職人なのか? どっちだ? お前は誰なんだ?」
「語り人の武術大会の総合部門で優勝した、冒険者ランクDのルナです」
「えぇ! 優勝者か! それも総合部門の! っかぁ! それは見とけばよかった!」
「では次回の武術大会、見に来てください」
「おう! それじゃあ箒、ありがとな! 店の前の掃除や、庭の掃除に使わせてもらうぜ」
「はい! ありがとうございました!」
「気を付けてな!」
そうしてオッチャンの店を出た。
「リル、ソルの箒はとんでもない性能になりそうだ」
「ですね! でも父様、20個も魔法を刻まれるようですが、何を刻むのですか?」
『そうだよ! 攻撃系? 防御系? 補助系?』
んなもん決まってる。
「決まってるだろ? 全部だ。ソルの矛となり、盾となり、支えとなる。神器を超えてやるさ」
「『おぉ〜!』」
「リルにも作るぞ。ソルと一緒に魔女っ子になっちゃえ」
「はい! 母様に言ってみます!」
魔女っ子ソルさんと魔女っ子リルさん。可愛いだろうな。
「さ、次は語り人の店に行くぞ!」
「『お〜!』」
実は特殊クエストです。魔道具の作り方は自分で見つけるか、特殊クエストの報酬か、の2択です。
ルナ君でも、流石に見つけられませんでしたね。
でもどうやら、一部のプレイヤーは見つけたらしいですよ〜?
では次回は後編です。お楽しみに!