最後の休息
次回予告、ストラァァイクッ!!
前回の次回予告を例えるなら、そう。『サンドイッチのパンの部分』と言った所でしょうか。
ハムやレタス、卵の無い、パンの部分だけ出してしまった感じですね。
そんな感じで今回は、ハムやレタス、卵の回です。召し上がれ?
「たっだうぃま!」
「おっきゃえり!」
「おかえりなさい、父様。また最速で終わらせましたね」
「おろ? そうなのか。まぁ、楽しかったからいいや。それと......おいで、フー」
「はい。改めてお疲れ様でした」
「ん、お疲れ」
っていうかカズキさん達、マジで予選通過した後に観戦席に飛ばしてくれたな。感謝しかない。
「さぁさぁ、次は最後だし、1番楽しまないとな」
「そうだね! 楽しんで優勝して、ついでに家を貰っちゃおう!」
「ウキウキワクワク、ですね!」
「せ、せやな! ウキウキワクワクやな!」
なんかリルの使う言葉のレパートリー、ドンドン増えてないか? ソルが教えてるのかな?
俺としてはこう、『成長してる』って感じがあって、凄く嬉しいぞ。
「そう言えばフーって、刀状態でも魔法は使えるのか?」
これは気になっていたのだ。
魔刀術の時はフーが調整しているし、何かしらの事で魔法系に干渉しているはずなんだ。
「使えません。厳密に言えば、魔刀術の時に流される魔力の調整は出来ますが、魔法自体は使えません」
「なるほど」
出力の調整をしてくれていた訳か。
だから魔力がオーバーしても、フーの力で一定のラインを保ち、俺に害が無いようにしてくれてるんだな。
「いや〜、助かってるよ。ありがとうな、フー」
「ふっふっふ、ご主人様をサポートするのはメイドの務めですから」
「その呼び方は辞めてくれると嬉しいなぁ」
その呼び方だけは嫌だ。な〜んか変な感じがするんだよな。
「嫌ですね」
「俺の方こそ嫌ですね」
よし。困っときは――
「ソルえも〜ん! フーがいじめるよ〜!」
「本当かいルナ太くん? 私が行ってこよう」
「ちょ待っ......ソルさぁぁん!!」
秘密兵器の『ソルえもん』だ。フーに特効ダメージが刺さる、現状で最強の武器だ。
「ほら、リルおいで」
「はい〜」
トテトテと近寄ってきたリルを膝の上に乗せる。
「ここはリルの定位置だな」
「えへへ、そうですね! 凄く落ち着きます」
可愛い。
少しだけ他の予選の状況を見ておこう。
するとマサキが映っていたのでピックアップして見てみる。
「魔剣術か......俺、雷しか使いたくないな」
「そうなのですか? 他の属性も強いと思いますけど......」
「いや、強いのよ? 強いんだけど......自分らしくない気がしてな」
「父様らしく、ですか?」
「うん。自分の癖というか、型というか、そういうのに合ってるのが雷属性だけなんだよな」
発動速度、攻撃力、消費MPに回復MP。どれを取っても、自分に合うのは雷属性だけな気がする。
「では、魔剣術を作ればいいのではないですか?」
「え? 作れるの?」
嘘でしょ? それ、『スキルを作る』って言ってるようなもんだぞ?
「多分、出来るんじゃないですか?」
「多分かぁ」
多分......というより、基本的に確率を信用してはいけない。だってアイツら、『98%です!』とか言うから信用してみれば、物の見事に2%を引くんだもん。
もうね、この世界の1%も2%も98%も、全部一緒だよ。総じて信頼できん。
「その点マサキは上手いよな。火に偏ってる節はあるが、全体的に精度も威力もある。それに剣との相性も良い」
「そうですね......あ、勝ち残りましたね」
マサキが予選を通過した。
「おめでとうマサキ」
「父様と当たることになりましたね〜」
「だな。楽しみでござる」
全力のマサキとは戦ったことがない。だから楽しみでもあるけど、少し怖い。
まぁでも、誰と当たろうが別にいい。今日犬子君だろうがマサキだろうが、俺の持てる全力で相手をする。
それで――
「......ラストは安全を取るか、勝利を取るか。2択問題になってるんだよなぁ」
「両方取れるのが1番ですけどね」
「いや、本当にそれ。でもそんな強欲な人間になると、どっかでコケるんだよなぁ」
フーにも言われたっけ。『これから何百回もコケる』と。こういう事なのか?
「人生は選択の連続だ、と言うけど、まさかこんな所で再確認するとはな」
「父様の認識してる中で、1番最近の選択はなんですか?」
「え? 俺の?......う〜ん、そうだなぁ」
最近の選択か......あるじゃん。1番デカい選択が。
「ソルに告白したこと......かなぁ」
「「「なるほど〜」」」
「うぃっ!?」
ビックリした! 2人とも戻ったなら言ってくれよ!
「ルナ君ルナ君、それはどういう方向に選択したと思う?」
「そりゃあもちろん、良い方向だ。100パーセントな」
98パーセントや99パーセントは信じられなくても、100パーセントは信じられるからな。
「えへへ〜私も〜」
ソルが抱きついてきた。あたたけぇ。身も心もあたたけぇぜ。
「わ、私も〜!」
「「させん!」」
「そんな〜」
フーはブロックします。だってさ、膝の上にリルを乗せて座って、後ろからソルに抱きつかれて、その上にフーまで来たら俺、潰れるぞ?
初めての死をここで経験しちゃうぞ?
「それに......なぁ?」
「そうだよ......ねぇ?」
「そうですよ......えぇ」
「な、なんですか?」
「「「重いじゃん / 重いじゃないですか」」」
「うわぁぁぁぁん!!!」
3段階チャージの攻撃だ。それもクリティカルヒット。
「それに、具体的にどうするつもりだったんだ? 膝の上はリルだし、後ろはソルだぞ? フーは『私も〜』なんて言ってたけど、どうするつもりだったんだ?」
「えっ......そ、それは......」
「これは」
「ポンコツ」
「ですね」
「うわぁぁぁぁん!!!」
3段階の弱チャージ攻撃だ。そしてまたもやクリティカルヒット。
「まぁ、隣に座って一緒に観戦か」
「うぅ......」
「でもフーちゃんは良いじゃん。ルナ君と戦えるんだよ? それも握ってもらえるんだよ?」
「た、確かに! これは私にしか出来ません!!」
......今のソルの発言。ツッコんだ方が良いのか?
ど、どうするべきだ? 彼女のまさかな一面を見れた反面、とてつもない地雷な気もする。
これは容易に手を出せん問題だ。さぁ、考えろ。考えてから喋るんだ俺!
「握ってもらえる、ってのは誇張表現が過ぎたね。でも、ルナ君と戦えるのはフーちゃんだけだよ」
「......ほっ」
良かった。誇張表現だったようだ。あ〜安心した。
「でも、私なら握ってくれるのはまだまだ甘い表現だけどね」
「ヴぉい!」
なんで上げて落とすの!? 本当に、本当に束の間の休息だったぞ!?
「ふふふっ、冗談だよ。そんなこと言ってルナ君に嫌われたくないし」
「別に嫌わないけどさぁ......」
サラッとフーとの会話に差し込むのに問題があるんだよなぁ。
「父様父様、全部の予選が終わりますよ!」
「マジか。もう最後の試合が始まるのか」
予選が終わるということは本戦が始まる。
「ルナ君、また最初は水蒸気爆発でいくの?」
「んにゃ? まぁ、それもありだな。60人くらい削らたらいい感じだし......そうするか」
俺の試合、最速で終わったらしいし、水蒸気爆発の事を知ってる人はいないだろう。
「それに、あのトリオの爆発を逃れても、俺とフーで首を物理的に回していくだけだ。絶対に勝つ」
あ、でも多分、ルヴィさんとかいたら話さないとダメなんだよな。
だって魔法部門で当たった時に、観戦席のお礼を言えなかったから。
「はぁ、私もルナ君みたいに、ここでアクセサリーが作れたらなぁ」
「どうした?」
「だってルナ君、空き時間にそのネックレス作ったんだよね?......なら私も、観戦の合間に作って、ルナ君のサポートがしたかった」
おやおや。嬉しい事を言ってくれるじゃないですか。
「次の武術大会でやればいいさ。今回は出来なくても次がある。それに、ソルが観てるって事だけでも、とんでもなくサポートになってるんだぞ?」
「そうですよ。ルナさんってば、戦闘中にもソルさんの事を考えてるんですから」
「言うなぁ!!」
人が良い感じに言ったのに!
なんでそう台無しにしてくれる!!
めちゃくちゃ恥ずかしいだろうが!!!
「えへ、そうなんだね〜」
「うわぁぁぁぁん! リルえもぉぉん!」
「はいはい父様。父様が母様を好きなのは皆知ってますから、大丈夫ですよ。それにほら、次の試合が始まりますよ?」
『さぁさぁ皆さん、お待たせしました!! これより、第1回イベント武術大会、最後の試合となる、『総合部門』本戦を開始いたします!! !出場者の皆さん、ウィンドウより入場ください!!』
「じゃあ、いっちょやってきますかな」
「うん! お家と最強の座をもぎ取ってね!」
「父様なら出来ます!!」
「頑張りましょう、ルナさん!」
「おう!」
フーを布都御魂剣にして、腰に装備する。
「『行ってきます!』」
「「行ってらっしゃい!」」
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『総合部門』本戦会場に転移します。
頑張ってください。
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なんか応援メッセージ付きのウィンドウが出た。
そして転移した先は――
「いつもの決勝の会場を、バカみたいに広くしたな」
『ですね! でも、ここなら戦いやすいです!』
「そうだな」
足も滑らない、見渡しも良く、傾斜も無い。
「最弱最強への、第1歩と行こう」
お粗末さまでした。
次回は100%、最後の戦いですね!
ルーレットによって変わる結末はお好きですか?私は大好きです。
次回、『最後でそれする?』です。お楽しみに!