新しい魔法、強いね
誰ですか?『かき氷食べたい』とか言ったの。
次回予告が、とうとう何の意味持たない文字列と化してきましたね。やったぁ。
「総合部門、不安よな。ルナ、動きます」
「どうしてご近所さんの芸人のような事を?」
「気分」
「そっかぁ」
総合部門が始まるまで10分あるので、リルを膝の上に乗せてモフりつつ、ソルと雑談していた。
「実際問題、結構不安だったりする」
「そう? これまで全部優勝してるし、いけると思うけど......」
「んにゃあ、そんなに総合は甘くないはずだ。何せ、このルールだしなぁ......」
観戦席に転移したタイミングで出てきたウィンドウに、こう書いてあった。
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『総合部門』の準備が終わるまで、暫くお待ちください。
『総合部門の概要』
試合形式は予選、本戦共にバトルロイヤルです。
参加者が約9,800人いるため、予選で98人に、本戦で1人になるまで戦います。
『ルール』
・全スキルの使用可能
・『ポーション系統』のアイテムの使用不可
・全装備効果の使用可能
・テイムモンスターの使用不可
となります。皆様の持てる力全てを使って楽しんでください!
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「いやぁん、リルと戦いたかったよ〜」
「大丈夫ですよ、父様。ちゃんと見てますから」
「それでもなぁ......モフい」
モフいです、リルさん。その耳ピコはモフいですよぉ!
「ルナ君、試合が始まって最初にどうするの?」
「最初? 最初か......遠くで水蒸気爆発?」
「えっ......アレ試すの?」
「う〜ん、上手いことクロノスクラビスを使えたら近距離でも問題ないしなぁ」
「「「クロノスクラビス?」」」
あらら、そう言えば3人には言ってなかった。
「俺の新しい魔法だよ。そうそう、フーにも聞きたかったんだ」
「私に、ですか?」
「そうだ。今から見せるから、感想? 意見? があったら言ってくれ」
「分かりました」
よし、なら最初はファイアボールから。
「『ファイアボール』」
うんうん、普通のファイアボールでござる。
「じゃあ、いくぞ?」
3人が頷いたのを確認してから、俺は指パッチンをする。
パチン!
パキッ! パリン!
「「おぉ〜」」
「嘘......今のは絶対――」
フーさんが熟考モードに入ってらっしゃる。
「こんな感じだな。今のは『炎を凍らせる』魔法じゃなくて、『魔力の動きを止める』魔法だな」
「凄いね! ルヴィちゃんの魔法を凍らせたのって今のだよね!」
「それに、今のはモンスターにも効きそうですね。モンスターは魔力が多いので、行動の阻害、もしくは停止が出来るかもしれません」
「マジ? それはいい事を聞いた。ありがとうリル」
リルは物知りだなぁ。素晴らしい!
「やっぱり絶対そうです!!!」
「どうしたフー、ようやく思考の沼から出れたか?」
「はい! ルナさんが作った魔法、とんでもねぇやつですよ!」
とんでもねぇ、とな?
「具体的には?」
「あれは『空間魔法』の1種です。まず、空間に干渉できる魔法は、人間に使えるのは2つのみ。なにか分かりますか?」
「『空間魔法』と『自然魔法』か?」
「そうです。そしてルナさんは自然魔法をお持ちですよね?」
「そっすね。アルカナさんが、植物と鉱物と空間に作用するとか言ってましたなぁ」
「......まぁ、言ってしまえばその通りです。自然にあるもの全てに干渉できますから」
とんでもねぇな。自然魔法さん。マジリスペクトっす!
「そして今の魔法、自然魔法の権能をフルに使えているんですよ」
「ん? どゆこと?」
それならサーチとかだって、フルに使ってるだろう?
「自然魔法の権能を細かく分けると、先程仰られた『植物、鉱物、空間』に分けられるのですが、今の魔法は『空間』における全ての事象に干渉しているんですよ」
「それが魔力という事か?」
「そうです! 大正解です!」
とどのつまり、『有機物』『無機物』『魔力』に干渉するという事ですかね? えぇ。
違ったら知らん。
「それで『完璧に作った魔法』って出たわけか」
「まぁそうですね。空間の干渉においては、完璧と言えるでしょう」
なら1つ、ここで気になったことを......
「なら、転移魔法は作れるのか?」
「無理です。そればっかりは自然魔法の範疇外です。転移は空間魔法の特権ですね」
「なるほど。ありがとう」
「いえいえ」
空間魔法に出来て、自然魔法に出来ないこともある。
逆に、自然魔法に出来て空間魔法に出来ないこともある。
ん? これ前にもやったな。
「にしても、魔法は本当に勉強だよな」
「だね〜」
俺は椅子に座り、またリルを膝の上に乗せる。
「リルもお勉強しないとな?」
「は〜い」
「リルちゃんが魔法を使えたら、凄く強くなるね!」
「圧倒的INTの差があるもんな」
「そういう意味じゃな〜い!」
「知ってるよ」
俺が言ったのはリルの攻撃力。
ソルが言ったのはリルの手札の増加。
意味は違っても話は通じる。面白いね、日本語って。
「って、何してたんだっけ。忘れた」
「......え〜と、確か『試合開始後の行動』的な話じゃなかった?」
「せや、思い出した」
そうだそうだ。水蒸気爆発の話だった。
「フー、クロノスクラビスなら水蒸気爆発も防げるか?」
「魔法で作った水なら余裕で防げますよ!」
「ありがとう。なら初っ端はドーンといこう」
っていうか、クロノスクラビス君って魔法以外にも『魔力』に干渉できるの強いな。
『お待たせしました! 総合部門に出場する皆さん、準備が整いました!! お手元のウィンドウより、転移をお願いします!』
「武術大会最後の部門にして、1番勝たないといけない試合。やるしかねぇよなぁ?」
今までのような縛りの無い、完全に俺だけの実力で戦うんだ。やる気マックスで行くぞ!
「頑張ってね! お家がかかってるよ!」
「父様なら出来ます!」
「適当に頑張ってくださいね〜」
「おい、1人めっちゃ軽い奴がいるぞ。しかもお前、一緒に出るんだぞ?」
「そ、そういえばそうでした!!」
全く......ポンコツ部分がどんどん出てくるな、フーは。
『これで準備できました!』
フーが布都御魂剣になり、俺の腰に装備される。
「......よし、それじゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
「行ってら〜です!」
リルさん!?
「い、行ってきます」
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『総合部門』予選会場に転移します。
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リルの『行ってら』発言はあったが、無事に会場に転移した。
「凄いな。見覚えしかないぞ、この草原」
『そうですね〜』
転移した先は草原だった。それも、『インフィル草原』だ。
「最後の予選は始まりの草原ってか? ふはは!」
何言ってんだろ、自分。
『それでは皆さん、まずルールを説明させていただきます。
1つ、『全てのスキルが使用可能』という事です。
2つ、『ポーション系統のアイテムの使用不可』です。これは今までと同じですね。
3つ、『全ての装備効果の使用可能』という事です。
4つ、『テイムモンスターの使用不可』という事です。
テイムモンスターと一緒に戦えない、という事ですので、よろしくお願いします』
再確認、大事だもんね。(1敗)
『では皆さん、準備はいいですか?』
「っし、やるぞ。フー」
『もちろんです。ルナさん達のお家のため、私も頑張りましょう』
うんうん。それでOKだ。
『これより! 総合部門、予選を開始します! カウントダウン入りますね! 3!』
魔法の準備をしないとな。
『2!』
水蒸気爆発で、何人倒せるだろうか。
『1!』
『始め!!!』
他のプレイヤーが見えるようになった。
「さぁ、楽しもうか」
クロノスクラビス君の原理の7割くらいの解説でしたね。
あの魔法、実はとんでもなく上手く作られてるんですよ。.....完璧に作られたと言えるほどに。
ほぼ全ての魔法を消せるクロノスクラビスくんですが、もちろん弱点はあります。そう、例えば、『同系統』の魔法、とかですね。
ではでは次回!『頭を回せ(物理)』です!お楽しみに!