魔法戦とは、ゴリ押しの連続である
お昼寝と
宣言すれば
許される
起きた時間は
夜中の零時
ゆずきゃんでぃ
「いや、おかしい。おかしいでしょ今の! ねぇ、カズキさん、今のなんで当たってるんですか?」
新しい魔法、クロノスクラビスの実験を終えて観戦していると、ルヴィさんの魔法が変だった。
「今のファイアボール、通り過ぎてから後ろに戻ってませんでした!?」
「戻ってたな。コキュートス氏も大ダメージを受けて負けたな」
「なんなんですかね? あの魔法。俺も使ってみたいです」
「それは.....頑張れ。この場ではヒントをやれん」
おや? この言い方は――
「ん?......ってことは知ってるんですか?」
「いや、知らない」
「えぇ!?」
今の、どう見ても知ってるフラグだろ。
「まぁ、これでルヴィ氏と当たることになったんだ。頑張れ」
「まぁ、頑張ります」
ルヴィさんは基本、炎系統の魔法を使うからな。クロノスクラビスが輝くだろう......見えないけど。
「じゃあ3位決定戦が終わるまで作戦考えてるんで、終わったら言ってください」
「分かった」
なんか、こき使ってる気がしてきて申し訳ないな。
今度、お菓子とか作って持っていこうかな。
とりあえず今は脳内作戦会議だ。
まず、ルヴィさんの特徴を挙げていこう。
炎系統の魔法を使う。
......それだけ。
「終わった......」
事前情報が全然無い。多分、基本的な属性は全部使えると仮定した方がいいだろうな。
うん、それだけしかない。後は魔法とその時その時の心理戦に持ち込もう。
そうと決まればやる事は簡単。ロマンを求めて戦うしかないだろう。
って訳で俺は、『指パッチン』でクロノスクラビスが発動するように、行動詠唱に設定した。
指パッチン......フィンガースナップとも言うが、アレで魔法を消すのって凄くロマンがあると思うんだ。
『パチン!(魔法が消える)』
『な、なにぃ!? もう一度!』
『パチン!(また魔法が消える)』
みたいなね。アレ、1度やってみたかったんだよなぁ。
もっと簡単な動作......いや、これはロマンだ。ロマンの塊なんだ。もはやマロンなんだよ。
他の動作にしたら、負けなんだよ!......知らんけど。
とりあえず、決勝戦は俺が1番楽しんでやる!
『試合終了!! 3位決定戦の勝者は、『イリス』さんです!!! これにより、魔法部門の3位が決定しました!!!!』
「暇ですね」
「今試合終わったとこだぞ?」
あ、言葉の選択をミスったせいで、カズキさんが困惑してる。
「そういう事ではなくて、決勝戦の後、総合部門があるでしょう? それまで待つのが暇ですね、と」
「え......魔法部門の決勝戦、そんなに気にしてないのか?」
「え? いや、めちゃくちゃ気にしてますよ。ウチのやつに『マナ効率化は取った方がいい』って言われてますし、優勝をモギモギしたいです」
でも
「でもほら......暇と言うか、寂しいんですよね......ソル達と一緒に居られないのが。控え室より、あっちに送られた方が嬉しかったです」
「そ、そうか。それなら総合部門では観戦席の方に送るぞ?」
「いいんですか!? 是非お願いします!!」
神か? この人は。俺は感謝の気持ちでいっぱいだぞ。
「にしてもルナ氏、変わったなぁ」
「そうですか? 自分としては、そんなに変わってないと思いますけど」
「いや、変わってる。だってよ、俺達の知ってるルナ氏ってのは、もっと心の柱が太かったぞ?」
「心の柱......ですか。ちょっとよく分かんないですね。考えます」
何だろう。カズキさんが『太かった』って言ったということは、今は『細い』もしくは『脆い』ということだろう。
何か最近の変化はあったか?......ソルと付き合ったくらい? それか? それなのか?
今まで、自分100パーセントで考えていたことを、ソルの......陽菜の事も考えるようになった。それが俺の変化か?
「分かった......気がします。でも俺は、上に行きますよ。これからどんなに俺が変わっても変わらなくても、これが俺ですから」
「おう! それと出番だ。行ってくれ」
「はい!」
合図が来たので、控え室を出て通路を歩く。
「変化......か」
人生の分岐点なんて、どこにあるか分からない。
だが、確実に『分かる』分岐点は存在する。ハッキリとした2つの道。自分の意思によって選ばれる道だ。しかも、その分岐点は間違った方が存在するとも限らない。
俺は......これからどういう人間になっていくのだろう。これからどういう選択をしていくのだろう。
「陽菜がいないと、もう無理なのかもしれんな」
自分の中の陽菜の存在感が大きすぎる。それこそ、自分より優先してしまうくらいには。
「陽菜に変えられた人生だ。陽菜の為に使いたいとも思ってるしな」
あの時に出会ったことで、全てが変わった。良い方向に。
なら、陽菜にも恩返しがしたい。
「とりあえず、ここは頑張ろう」
今は魔法部門だ。それも決勝戦だ。リアルの事を考えて、『はい負けました』なんてできるわけが無い。
『入場しますのは、これまで全戦全勝、どんな部門でも無敗を誇る『ルナ』さんです!!』
『おおおぉぉぉぉ!!!』
俺は会場に入る。もう、この石の会場に上がるのも慣れてしまったな。
『対するは、圧倒的な火力、圧倒的な速度、圧倒的な精度から繰り出される魔法は誰にも避けられない!! そんな魔法を使う、『ルヴィ』さんだぁぁ!!!』
『おおおぉぉぉぉ!!!』
「よろしく、ルヴィさん」
「よろしくお願いします。ルナさん」
ルヴィさんも、やっぱり杖を持っているな。自分と同じような長さの杖を持って、邪魔にならないのかな?
『これより魔法部門本戦、決勝戦を始めます!! 両者、構え!』
ルヴィさんは杖を構える。
対して俺は、何も構えない。いや、構えが無いだけだが。
『始め!』
「『サーチ』」
「『フレイムボール』!」
俺はサーチを発動させ、ルヴィさんの魔法の位置を確認する。
来た、真正面からだ。これ、サーチ君で見ると面白いことが分かる。
このフレイムボールは『魔力の糸で操られてる』んだ。
「おもろいな〜それ」
「?」
まぁ、いいさ。その糸ごと、全部停止させてやる。
パチン!
俺の目の前にフレイムボールが来た時、俺は指パッチンをした。
パキッ! パリン!
炎の玉だった魔法は、綺麗に凍りつき、そのまま床に落ちて砕け散る。
「んなっ!」
あ〜、満足。超気持ちいいな、これ。ロマンに溢れている。
「ふ、『フレイムアロー』!」
ルヴィさんがフレイムアローという炎の矢の魔法を使った。それも、杖を振りながら詠唱したせいか2本出現していた。
そしてフレイムアローは俺に向かって飛んでくるが――
パチン!
パキパキッ! パリン!!
見事に凍り、砕け散る。
「なんですかそれ! なんでもありですか!?」
「おもろいやろ? さっき作ってん......あっ、う゛っう゛ん。面白いだろ? さっき作ったんだよ」
危ない危ない。関西弁がこんにちはしてたぞ。
「お、面白いって......ルナさん、魔法消してるじゃないですか!」
「違うよ。消してはない。そんな事が出来るならとっくにやってるさ」
結果的には消えてるが、この魔法の本質は『停止』だ。そこを履き違えると、後々大きなミスを生んでしまう。
「じゃあ、それは何なんですか!」
「言ったじゃん。さっき作った魔法って。ワールドアナウンス流れたでしょ?」
「えっ......ほ、本当に?」
「何を疑ってるかは知らないけど、『完璧に作った魔法』ってのは、これだね」
「そんな簡単に切り札を!?」
「ん?......ははっ」
上手いな、ルヴィさん。『演技』か。
この人、俺と喋りながら魔法を使ってる。今、上空70メートル程のところに魔力反応があったぞ。
サーチ君を侮ってはいけないな。
「じゃあルヴィさん、見ててな?」
「はい?」
俺は人差し指を上に向け、唱える。
「......まさか!」
「『クロノスクラビス』」
数秒後、上にあった『何か』が落ちてくる。
「『アウラ』」
パリン!
良かった。アウラのお陰で『凍った何か』の爆散は防げた。
「お〜お〜ルヴィさん。これ、『龍魔法』じゃないか?」
「......し、知ってるんですね」
「もちろん」
ルヴィさんも持っているって事は、ワイバーンを倒したんだろう。
そういやマサキがワイバーン製のアーマーを付けてたっけ。もしかしてあの超低確率ガチャに勝ったのか?
凄いな。
「でも『ファイアブレス』か。そりゃ凍るわな」
龍魔法のファイアブレスって、実はイグニスアロー君を超巨大にした物と、そこまで温度は変わらない。
だからクロノスクラビスで凍るんだよな。
「じゃあ、俺からも攻撃しようかな」
「ッ!『ファイアウォール』!!」
ルヴィさん、焦っちゃいけんよ。
「『サンダーチャージ』」
俺の目の前にバチバチと音を立てる、雷の魔法陣が出てくる。
「......『アイスニードル』!」
パチン!
パリン!
炎の壁から出てきた氷の針は、クロノスクラビス君によって撃墜される。
「『サンダーチャージ』」
2つ目の魔法陣が出てくる。1つ目と合わさり、望遠鏡みたいな感じだな。
っと、ここでサーチを解除する。MP回復タイムだな。
「ルヴィさんは雷属性の魔法は使わないのかい?」
「使いません......と言うより、使えません。あの魔法の原理が全然理解できないので」
「そうか。原理、教えようか?」
「えっ!? い、良いんですか!?」
「いいよ、ただし条件がある」
「なんですか?」
ごめんね。ルヴィさん。
「俺に勝ったら、教えるよ。『サンダー』」
バリバリバリ!!! バチーン!!!
「『イグニスアロー』『アウラ』『サーキュレーション』」
イグニスアロー君を10本出し、アウラで強化。さらにサーキュレーションで空気の通り道を作り、さらに温度を上げる。
「行け」
超強化イグニスアロー君をルヴィさんに向けて飛ばす。
「『イグニスアロー』『ファイアボム』『ウォーターボム』『ウィンドボム』」
全ボム系魔法とイグニスアロー君をさらに飛ばす。
ドッバァァァン!!!
「『サーチ』」
サーチ君でルヴィさんの反応を確認する。......まだ生きてた。
「まだ行くぞ。『イグニスアロー』『アウラ』『サンダー』『ファイアボム』『アウラ』」
強化イグニスアロー君が飛び、サンダーが直撃、さらに強化されたファイアボムも当たった。
「......ふ、『ファイアウォール』」
パチン!
パキッ!! パァン!!
「きゃあ!!」
おぉ、ファイアウォールも行けるんだな。クロノスクラビス君、君有能だね? うちで働かない?
「ラスト。『イグニスアロー』『アウラ』」
イグニスアロー君がアウラで強化され、ルヴィさんに向かって飛び――
『し、試合終了!!!! 優勝は、『ルナ』さんです!!!! ま、まさかの3部門優勝だぁぁぁ!!!』
『オオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!』
今までで1番大きな歓声だった。
「っかぁ!! 楽しかったぁぁ!!! やっぱりゴリ押しもたまには良いな!!」
魔法戦とは、ゴリ押しである。
『ではルナさん! 優勝インタビューに行きますね!』
「はい!」
そしてレイジさんが目の前に転移してきて......
「ではまず。あの魔法を消していたのはなんですか?」
「あれはワールドアナウンスにあったはずの魔法です。......あれ、流れてましたよね?」
「はい。バッチリ」
「ならそれです。暇だったんで、作ってみました」
するとレイジさんが『ポカーン』とした。
「え......え? 暇だったから?」
「はい。『こんな魔法はどうかな〜』って感じで作ってみたら、とんでもない音を立てて魔法陣が完成しましてね。多分、後でカズキさんの方から映像が来ると思いますよ」
「そ......そうですか」
「では、次の質問は?」
「あ、そうでした。では、ルナさんが出られた3部門全て優勝した訳ですが、今のお気持ちは?」
っぶね! ここで『そうですねぇ――』と言う、『そうですねぇ』デッキを使うとこだった。
「今の気持ちは、そうですねぇ」
使っちゃった。てへ
「『マナ効率化』が楽しみ、ということですかね! アレ、とんでもない効果ですし」
「っ!? ルナさん、何処でスキルの詳細を?」
「え? うちの子からですけど」
マナ効率化 情報元 誰 検索
もしかして:フー?
もしかして無くても:フー
......脳内茶番をやってる場合じゃなかった。
「......あっ付喪神!!」
「そうですよ」
「なるほど。それなら納得です。今のを分からない方に向けて言うと、付喪神と言うのは、物に宿る神の事です。
一定数の神から注目を集め、その神の中から『付喪神になりたい』と思わせる事で、自身の使っている『物』に宿ります」
俺、びっくりしたんだけど。
フーの『付喪神になりてぇ〜』ってマジだったんだな。
「そうすると当然、この世界の知識量が全然違います。ルナさんは、その付喪神の方からお聞きしたんですね」
「いぇす。その通りです」
いぐざくとりー
「ルナさん、ありがとうございました。それだは皆さん! 10分後に行われる『総合部門』まで、少々お待ちください!!」
ほっ。これでようやくソルに会える。
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イベント会場(控え室)に転移します。
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「ただいま、ソル。リル、フー」
「「「おかえりなさい!!!」」」
うん。俺、今の生活が1番好きだ。幸せに溢れている。
これからの俺、もっともっと幸せになれるように、ソルを、陽菜を幸せに出来るように頑張れよ。
ロマン構成、大好きです。某狩りゲーでもやりましたし、某スティーブのサンドボックスゲームでもmodを入れまくってロマンを追求したりしました。
では次回!『かき氷食べたい』です!お楽しみに!
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