自然の脅威〜ルナ風味〜
無我の境地
「はいやらかした〜」
控え室に来てすぐに、俺はやらかした事を自覚した。
「試合......終わらせるのが早すぎた......」
そう、最初の魔法だけで終わらせてしまったので、とてつもなく『暇』なんだ。
「くっ......ソル達の反応が見たい......この虚無感たっぷりの時間を消したいぞ」
でも、どうする事もできない。
なんで観戦席じゃなくてこっちに飛ばされるんだろうか。
「......よし、MP増やすか!」
暇だからMPを増やそう!
これからの役に立つし、丁度いい!
増やし方は至って単純。MPを0にして、そこから自然回復で満タンにすると、1パーセントの確率で最大MPが1増える仕組みだ。
俺の場合、ブリーシンガメンがあるので通常の数倍から数十倍の効率で回復できる。
だから、魔力切れの辛さに耐えられれば、確率次第で短時間でMPを増やせるという訳だな。
「このドM仕様、いつか修繕されるといいな......」
それから俺は、拍手をしまくった。
今の状態は、拍手をすればするほどバカスカとMPが使われるからな。サンダーチャージ万歳!
それに、使わない魔法はそのまんま破棄するか、チャージの場合は時間経過で自然消滅するので放置で問題ない。
そして20分後――
「......これだけやって2しか増えないのかよ......」
とんでもないスピードでMPを消費して、これまたとんでもないスピードでMPを回復してたが、20分で2しか増えなかった。
「うん。普通に待機していよう。凄く、凄く無駄な事をした気がする」
でも、この世に無駄な事は無いと言うし、多分どこかで役に立つだろう。MP2だけ.....
「あ〜あ、これが1回で10増えてたらなぁ......」
まぁ、魔力切れを我慢するだけでステータスが伸びるんだから、流石に贅沢は言えないか。
『では! 魔法部門、予選2回戦目を始めますので、控え室にいらっしゃる方は転移してください!』
「無」
無ですよ無。この時を無心で待ってました。
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『魔法部門』2次予選会場へ転移します。
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「う〜ん、雪原」
転移した先は、一面の銀世界だった。
「よい、よいぞ! これならイグニスアロー君で暖を取れるだろう」
暖を取る(数千度)
そして、1回戦目と同じ説明がされて――
『魔法部門、予選2回戦目、試合開始です!!』
他のプレイヤーが見えるようになった。
「今回は普通に戦おう」
気配隠蔽もサンダーもゴリ押しもしない。ただただ魔法で倒していこう。
ビュンッ! ヒュヒュヒュン!!!
「あっぶな」
氷属性魔法の『アイスニードル』が4本、どこからともなく俺目掛けて飛んできた。
そこそこゆっくりだったので、見てから避けれた。
もしこの魔法の使用者のスキルレベルが高かったら、もしかしたら死んでたかもな。
「自然の脅威をプレゼントしてあげよう。『イグニスアロー』『アウラ』『サーチ』」
今回はあのゴーレム蒸発事件ほどでは無い温度で飛ばす。
そして『サーチ』を使うことで、広範囲に魔法の発動を検知、プレイヤーの位置情報を入手して、効率的にイグニスアローをぶつけていく。
ビュン!
「また来た。ほれ、殺れ」
アイスニードルの発動者に向けて、イグニスアローを飛ばす。
「「「あぢぃぃぃ!!!」」」
「巻き添えは予想外だな。ラッキー」
1人に向けて飛ばしたが、道中にいたプレイヤーもガッツリ巻き込んで倒したようだ。
「ブリーシンガメン、神アイテムだな。サーチが無限に使える」
毎秒10MP消費する『サーチ』と、毎秒10MP回復する『ブリーシンガメン』この2つの相性良すぎだろ。
まぁ、他の魔法を使うと、MPの消費量の方が勝るけどな。
「『イグニスアロー』『アウラ』」
火力アップしたイグニスアロー君で、バスバスと敵を倒していく。
この2つを1セットとした時、消費するMPって23なんだよな。アウラが15、イグニスアロー君が8だから。
「おぉぉぉ!!!『ファイヤーボール』!!」
ブォン!
「熱いな。ってか今の声、マサキか?」
どこからか飛んできた火の玉を避けた。サーチが無かったら当たっていたかもしれないスピードだった。
「まぁいいや。『イグニスアロー』『アウラ』殺れ」
ヒュン!
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
遠くの方で、サーチの反応が消え、マサキの叫び声が聞こえた。
「ごめんマサキ。あっさり倒しちゃった」
何せサーチ君が便利すぎて、魔法は基本的に避けれるんだよな。
今の状態で避けれないのって、上級魔法クラスか?
「めんどいな。『イグニスアロー』を10本、『アウラ』」
俺は一度にイグニスアロー君を10本出し、アウラで一斉に火力を上げる。
「う〜んと、ここの塊に飛ばすか」
サーチ君を見る限り、8人ぐらいが固まっている反応かあった。
だからそこにイグニスアロー君をプレゼントしよう。
「ほれ、自然の脅威のフルコースだ。『蔦よ』」
イグニスアロー君を飛ばす前に、蔦ちゃんで8人を拘束する。
「おっほ、大分MP食うな」
距離がそこそこあるので、蔦ちゃんが食べるMPが多くなってしまった。
「よし、拘束完了。いけ、イグニスアロー」
サーチで拘束したのを確認してから、イグニスアロー君を飛ばした。
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8人side
「真白! アイスウォールいける!?」
「無理! あっちの火が邪魔! 翠はどうなの!?」
「ウィンドボムならいけます!」
「やって! 茜はファイアボムと、ファイアアローで迎撃して!」
「分かったっす! 蒼ちゃんも一緒に、頼むっすよ!」
「もちろん!」
真白達のギルド、『カラーズ』の4人が戦っていた。
「クラウド! お前なんで火属性なわけ!?」
「掲示板だとこれが人気なんだよぉぉ!!『ファイアアロー』! クソっ! 迎撃された!」
「レイン、クラウド落ち着け! レインはウォーターウォールで、クラウドはファイアウォールで壁を作れ!」
「「了解サニー!」」
「あれぇ、僕は?」
「サンダーは雷撃ってろ!」
「もうMPない、ごめん」
「「「アホォ!!」」」
カラーズと敵対していたのは、レイン率いる『天候』ギルドだった。
「次で決めるよ! 茜、いい?」
「オッケーっす! ってわぁ!!」
「「「なにこれ!!」」」
カラーズの4人が、蔦により拘束された。
「レイン! チャンスだ! やるぞ!」
「おう! っておい!」
「「「なんだこれ!?」」」
天候ギルドの4人も、蔦により拘束された。
「おいおいおい、この魔法ってよ......」
「だよな。俺、この前の処刑配信見てたわ」
「「「「これ、ルナだよなぁ」」」」
「ねぇ真白、私さ、この蔦に見覚えがあるんだけど」
「私もある。配信見てたし......」
「そうっすよねぇ、これ、明らかに......」
「「「「ルナさんの魔法だ......」」」」
誰の魔法か悟った8人に、イグニスアローが刺さっていく。
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ルナside
「よし、オールキル。完璧だな」
8人を一気に倒せた。作戦通りに行って満足だ!
「ちょっと休憩するか。『アクアスフィア』『サーキュレーション』」
俺はアクアスフィアを出し、大きな水の球体を作る。そしてサーキュレーションによって、空気のある空間を作る。
「ほい、ザブザブぽちゃん、と」
雪原の真ん中で水を出し、その中に躊躇なく入る。
「サーチ、解除」
休憩だ。MPを全快させよう。アクアスフィアに入ることで敵の魔法を防ぎ、サーキュレーションのお陰で呼吸もできる。完璧な空間だ。
「お、もう全快か。ブリーシンガメン、流石だな」
全回復に30秒もいらない。超快適!
「ほい、アクアスフィア解除。『サーチ』」
全快状態でサーチを使う。
「お、後3人殺れば本戦か。『イグニスアロー』『アウラ』やっちまえ〜」
イグニスアロー君を3本出し、アウラで火力を上げてから3人に飛ばす。
「......よし!」
サーチから3人の反応が消え、残りの反応は俺含めて4人になった。
『試合終了です!! 本戦出場者は、『ルナ』さん、『イリス』さん、『ルヴィ』さん、『阿吽のコキュートス』さんです!!』
「おいおいマジかよ、コキュートス君の出る部門、全部被ってんじゃん」
剣術、刀術、魔法。出れる3部門全て被っていた。それも、コキュートス君すべての本戦に残ってるし、本当はめちゃくちゃ強いんじゃ?
「まぁいいや。俺は全力で楽しむだけだ」
本戦では、なんの魔法を使おうかな?
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名前:ルナ Lv79
所持金:805,240L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E) 魔法士
HP:1,880<1,000>
MP:2,380→2,382<1,500>
STR:2,800(200SP)
INT: 800
VIT: 1,300(50SP)
DEX: 2,300(150SP)
AGI: 1,000(20SP)
LUC:400
CRT:50(限界値)
以下省略
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掲示板の有名人は、ルナ君に狩られてしまいました。