魔境と化した部門
次回予告.....お前、生きてたのか?
「ルナ君!」
「父様!」
「ただいま。勝ったぞ」
ソル達のいる観戦席に飛ばされた。
「優勝おめでとう! お金とスキルと称号とあと、特別賞だっけ? それが貰えるんだね!」
「ありがとう。特別賞だけが今のところ分からないんだよな」
確か優勝賞品は、1000万Lと『武神』のスキル書、それと称号と特別賞か。
「おめでとうございます! 父様。楽しめましたか?」
「ありがとうリル。楽しめ......たかな? 一応」
これからが『楽しみ』だ。今回はそこそこ、って感じだな。
『あれ? 私は降臨しなくてもいいんですか?』
「ん? 出たい?」
『出たいです出たいです出たいです』
「わ、分かったから!」
連呼しないで、怖いよ。
「やった〜! あ、改めて優勝おめでとうございます!」
「ありがとう。まぁ、今回は殆どフーの力だったからなぁ」
「そうでしょうそうでしょう。私は強いんです」
フーがそう言うと、リルが耳をピコピコと動かしながら言う。
「へぇ、ならスライムには負けませんよね?」
「うっ......も、もち......ろん......です」
「「ダメじゃん」」
「ダメですね」
まだレベル1だからな。武器状態は強くても、人になった瞬間、豆腐レベルで弱くなる。
「ささ、次の部門のチェックしようぜ」
「そうだね! 何になるかな?」
「私の予想では『闘術』ですかね」
ほぉ、リルは闘術が見たいのかな? まぁ、普段から殴って倒してるもんな。
「私は......そうですね、魔法部門だと思いますね」
「俺は剣術かな。ルーレットの項目数とレイジさんの回す勢い的に、剣術か槍術だろう」
『どんな部門がいいかな〜』ではなく、『この部門が当たるかな?』という予想にしてみた。
「「よく見てますね〜」」
「ほんとにね! 私はそうだなぁ、『糸術』かな?」
「おぉ、糸。俺、まだ糸で戦ったことないな」
「私も無いかな。でも掲示板を見る限りじゃ結構人気だよ。何でも半永久的に使えるトラップが作れるだとか......」
「ほう?」
トラップとな? それも糸で?
FSでワイヤートラップを使いまくっていたせいでめちゃくちゃ興味が湧いた。
「やべぇ、糸術になんねぇかな。めっちゃ気になる」
「そんなに?」
「珍しいですね。父様がそんなに興味を示されるとは」
「リルは分かるだろ? 俺があの世界でどれだけ糸を使ったか」
「......まぁ、少しは」
なんかアレだな。俺の言い方的に『異世界に来たけど唯一前の世界での自分を知っている人』みたいになったな、リル。
「どんな事をしてたの?」
「ふっふっふ、秘密だな。俺がソルに怒られそうだから」
「ん〜? 何をしてたのかな〜?」
な〜んか、ランカーである事は隠したいんだよな。カズキさんの時みたいに、変に有名になってるっぽいし。
「まぁまぁ母様、大丈夫ですよ。やましい事ではありませんから。強いて言うなら、人を沢山殺していた、という事です」
「言い方ァ! その言い方はダメだろリル!!」
「ル、ルナ君......本当?」
「別ゲーだ。前に言ったろ? FPSゲーの話。あっちでワイヤーを使いまくってたんだ。だから糸術に興味を持った」
「へぇ〜そうなんだ。何て名前のゲームだったの?」
「FS、正式名称『ファイアーシュート』だ」
「あ、名前は聞いた事あるね、それ。確か日本のチームが、公式大会で優勝したんでしょ?」
むむっ!? これはカズキさん現象の匂い! 隠し通せ!
「そうらしいな。特に誰が勝ったか知らんけど」
「う〜ん、何だっけ......チーム名が特徴的だったんだよね」
ヒィ!! どうか思いとどまってくれ!!
「『二ビル』だっけ?」
「『ニヒル』だ。空想上の惑星にするな」
やっちまったぁぁ! あまりに惜しい間違いをしたから修正してしまったぁ!!
「おぉ、両方共よく知ってるね!」
「そ、そうかな?」
不味い不味い不味い! 話題を、なにか話題を変えないと!
「あ、ルーレット始まるぞ」
「ん? ほんとだ」
「......ほっ」
『父様、どうして必死になってるのですか?』
ビックリした。話題を変えれて安心しているところに、リルから念話が来た。
『バレたくないんだよ、俺の事が。せめてアイツらが来るまでは秘密にしていたい』
『どうしてですか?』
『怖がられたくないから』
これは、経験者にしか分からない。ランキングで上にいる人って、本当に恐ろしく感じるものなんだ。
俺からしたら、1位から5位までの人は、本当に化け物に見える。
思考が違う。動きが違う。強さが違う。
全てが違って見えるんだ。
そして自分と人の違いが大きく、はっきり分かるほど、どんどん怖く感じる。
自分は正しいのか? 自分は動けてるのか? 自分は弱いのか?
全てに疑問を抱くように、恐怖を感じる。
そしてそれは、他人から見た自分でも同じだ。
数字上の差は、今言った1位から5位までに、1つ数字を足しただけだ。
それでも、7位から下の人には恐れられるんだ。
『アイツはやばい』『アイツはおかしい』と。
今ではすっかり慣れたもんだが、昔は本当に怖かった。人に怖がられるのが怖かった。人に嫌われるのが怖かった。
『そう......なんですね。でも、母様なら大丈夫ですよ? きっと、『凄いね!』って言ってくれますよ』
『まぁ、だろうな。けど俺はビビりだからな。ニヒルが揃うまでは、ネタバラシはしない』
『分かりました』
ソルの事を信用していないわけじゃないけど、怖いんだ。
いつか、この気持ちも全て伝えたいな。
「お、マジで剣術になったな」
「「「おぉ〜」」」
『では剣術部門にエントリーした皆さん! お手元のウィンドウより入場してください!』
「じゃあ、行ってくるよ」
「忙しいね。もっとゆっくりしていたかったな〜」
「だな。でもこれが終わったら、魔法と総合までお休みだ。ゆっくりできるさ」
「うん!」
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『剣術部門』のどの予選会場に転移しますか?
『第1ブロック』〜『第89ブロック』
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「やっば!!!」
「どうしたの? ルナ君」
「皆、コレ見てみろ」
そう言ってウィンドウを皆の前に出した。
「「「うわぁ......」」」
「約8900人......これは魔境だぞ?」
これ、予選に勝ってもそこからの本戦が辛すぎるだろ。
「......ステラ、頑張ろうな」
「確か、太陽光か月光があれば耐久値の問題は大丈夫だもんね」
「あぁ。ただ『癒しの光』が封じられたら長期戦には出来ない」
きっと、魔剣の『生命力吸収』系統も使用不可だろうな。
「......はぁ、やるしかないな。願わくば、月が出てる事を祈って」
ステラの『癒しの光』は太陽光によるHPと状態異常回復効果は使えなくても、月光による『鼓舞の光』による全ステータス1.1倍は欲しい。
「じゃあ......適当に、第2ブロックでいっかな」
「ページ捲るのが面倒なだけじゃ?」
「そうとも言う」
1か2、11か89ブロックが選ぶのが簡単だからな。だって、一回の動作で選べるもん。
「じゃあ、行ってきます」
「「「行ってらっしゃい!」」」
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『剣術部門』予選会場、第2ブロックに転移します。
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「さぁ、楽しもう」
転移した先は広い草原だった。
『剣術部門の予選会場ですが、特設エリアの草原になります! そして、あまりにも人が多いので、全ブロック同時に始めます!』
まぁ、最初からそうすれば良かったよね。別々にやってたら無駄に時間かかるし。
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2分後に試合が開始されます。
試合形式はバトルロイヤルです。
第2ブロックの参加人数は100人です。
最後に生き残った1人が、本戦へ出場出来ます。
ルール
・『剣術』及びその進化先以外のスキルの使用不可
・『その他』スキルの使用不可
・『ポーション系統』のアイテムの使用不可
・装備効果によるHP回復、状態異常回復の効果の使用不可
以上となります。是非楽しんでください。
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「はぁ......おもっくそ太陽光出てるのに......」
『癒しの光』は完全に封印されちゃった。つらい。
「まぁいいや。全力で楽しもう。剣術なら面白い人もいるだろうし」
刀術はそもそも刀は持ってる人が少なかったからな。剣ならほぼ全員が持ってる武器だし、魔剣や聖剣持ちもいるだろう。きっと。
『ではこれより、剣術部門の予選試合を開始します!!』
予選が始まり、他のプレイヤーが見えるようになった。
そして草原にいる99人のプレイヤーは頷き合い、こちらに振り向く。
「......あ、同じパターン? 面倒くさ!!」
どうやらまた99対1になるようだ。
「......はぁ、何の罰ゲームだよ、これ。まぁいいけどさ。ステラ、魔剣、来い」
俺はステラともう1つ、『新たな魔剣』を顕現させた。
新たな魔剣.....何なんでしょうね?ジュエルゴーレム戦の時に可哀想な目にあった、『魔剣:ヨクキレール』の仲間なんでしょうかね?
では次回!『魔境の先』お楽しみに!