本戦出場者決定と、大切な意識
在り方
『ではでは! ちょっと色々ありましたが、刀術部門第2ブロックを始めます! アリアさん、今回のブロックで気になるプレイヤーはいますか?』
『そうですね......さっきのを見ると、もう何とも言えないんですよね......』
『あ〜......まぁ、気持ちは分かります。あ、僕が注目しているプレイヤーは、『茜』さんですね! 茜さんはギルド『カラーズ』の一員で、カラーズ唯一の刀使いなんですよ!』
「「へぇ〜」」
「どれほどの実力なんでしょうね」
「「さぁ?」」
一応茜さんとは会った......というか、見たことがある。確かフォレストウルフ戦の時に、魔法を使ってた人だな。
「あの人、刀も使えたんだな」
「そうだね。まぁ、刀を使えても扱えてなかったら意味が無いけどね」
刺す角度、斬る角度、抜く角度。それに手入れの仕方も知っていないと、すぐにダメになるからな。
『――では、試合開始です!』
「へぇ、普通の試合ってこんな感じなんだな」
一斉にプレイヤーが戦い始めた。
我先にと斬りに行く者。
そのプレイヤーを追いかける者。
打ち合いが終わったところの漁夫の利を狙う物。
そして、的確に狙うプレイヤーを選んで斬って行く者。
「茜さん、上手いな」
「だね。上手く狙ってる。けどあれじゃあ結託された瞬間に終わるね」
「あぁ」
茜さんは闘技場の壁を背後に、弱っているプレイヤーから狙っているようだ。
「あ〜、あれはどちらかと言うと大人数での戦いに慣れてない感じかな。時々、自分の立ち位置を見失ってる」
「確かに、言われてみれば......ってかルナ君はどうしてあの状況で動けたの? 普通なら99対1って、速攻で負けるよね?」
「どうしてって言われてもな......昨日別ゲーで96対4で勝利したし、それよりも前から大人数との戦いに慣れてるからだな」
「「96対4......」」
「数の暴力って、恐ろしいからな。経験と技術で何とかやるしかない。まぁ、それでも時々負けるけど」
俺だって......俺達だって、負けないわけじゃない。
ただ、負けにくいだけだ。
ニヒルのメンバーとの連携は、無言でも出来るほど練習を重ねたし、AIM力を鍛えるために何百、何千時間と練習した。
それだけの経験と、鍛え上げた技術で勝ちを握り取っているだけだ。
そしてここでも出てくるな。『向上心』という物が。
「もうそろそろ終わるな。茜さんが勝つだろう」
「そうだね。残ってる人もそこまで強くなさそうだし」
「あの人が父様の次の対戦相手ですか?」
「その1人だな。まだあの人と当たるかは分からない」
そして第2ブロックの予選が終わった。
『刀術部門第2ブロックの予選通過者は、『茜』さんです! おめでとうございます!』
『おめでとうございます』
『あ、ありがとうございます!』
『では茜さん、本戦への抱負はありますか?』
『そうっすね......ルナさんに勝ちたいっす』
『『おぉ!』』
『これは期待大ですね! 頑張ってください!』
『はい! 精一杯頑張るっす!』
「打倒ルナ君とは、大きく出たね」
「そうか? 普通に負ける可能性はあるぞ?......負けるつもりなんて毛頭ないが」
対戦する事になったら2秒で斬ってやる。
「戦闘って甘えたら負けだもんね」
「あぁ。余裕と甘えを履き違える奴は多いからな。そういう奴は予選で落ちるだろ」
「だね〜」
「そうですね。でも父様、時々甘えてますよね?」
うっ! なんで気づいてんだ?
「ば......バレてる?」
「はい。手を抜く......と言うよりは、ぶっつけ本番で何かをする事がありますよね? 安全確実を取らず、危険不安定を取る。違いますか?」
「......はい。仰る通りです」
魔力刃とか特にそうだもんな。ってかなんで俺がリルに怒られてんだ?
「まぁまぁ。リルちゃん、お説教はそこまでにしよう? ルナ君も理解してるはずだよ?」
「......はい。母様がそう言うなら......」
えぇ!? なんでそんなに怒りたそうにしてるんだ?
「父様、これだけは言わせてください」
「は、はい」
「絶対に、負けないでください」
「......あぁ。全力でやるよ」
「......はぁ。違いますね」
なんでリルにこんな事言われてんだか。俺の意識が低すぎたのかな?
......いや、ちゃんと勝ちに行ってるはずだ。常に上を目指す、向上心は忘れていない。なら何故リルに言われた?
レベルが足りない? 武器が足りない? スキルレベルが足りない? 練習が足りない? 何だ? 何かが足りない、もしくはズレている。
何だ?
あぁ、大事な事を思い出した。ゲームをやる上で、1番大事なことを忘れていたかもしれない。
「訂正しよう。『楽しんでくる』」
「正解です。そうじゃないと、楽しんでいる父様じゃないと、私は嫌いになりますよ?」
「ははっ、それは嫌だなぁ。リルに嫌われたら泣くぞ?......それと、ありがとう」
「んふふ〜いいんですよ。上に立つことに拘ると、横も下も後ろも見えない。父様なら分かるでしょう?」
分かる。
ランキングという数字に拘り、ゲームを楽しめなくなって辞めていった人をFSで沢山見た。
奇抜なプレイングをする人も、独自の練習方を編み出した人も、全ては『ランキングのため』であって、上に登れなかった時に辞めていった。
やはり、ゲームは楽しめないとダメだ。
楽しくないゲームなんて、それはゲームではない。
楽しんで楽しんで、もうどうしようもないくらいに遊びまくった結果、俺はFSのランキングに載ったからな。
「......なんでリルが知っているんだ? それと、ソルは今リルが言ったこと、分かるか?」
「う〜ん、少しだけ?」
「だよな。リル、どこで知ったんだ?」
「ふふふ〜! その答えは私を抱っこすれば分かります」
なんじゃそりゃ。まぁ、いいけど。
「よっこいせ、と。うんうん、今日もモフモフだな」
「はい。父様と母様がお手入れしてくれていますから。それと、先程の答えですが、簡単です。
父様にテイムされた時、父様の事を知ったのです。それで父様が過去に何をしていたか、少しわかるんです」
え? 何それ。俺の記憶みたの?......いや、VRヘッドセットのログを見たのか。
テイムって、かなり恐ろしいことなんだな。
「そうか、教えてくれてありがとう」
「はい!」
「ルナ君、リルちゃん。お話は終わった? 最後の予選が始まってるよ? それも終盤戦」
「「えっ」」
やべぇ、また話すのに夢中になってた。今日はこれ多いな!
「さ、3試合目は誰が勝った?」
「阿吽のコキュートスって人。青い髪のゴリラみたいな体の人だね」
「知らない人だな。それと名前のセンスや見た目については何も触れないようにする」
阿吽の呼吸をもじったのかな? その人は。
「でねでね、最後の試合なんだけど、多分黒の巣ってプレイヤーが勝つと思うんだよね」
「あぁ、黒の巣君。彼、刀術部門に出てたんだな」
「うん。ほら、次の戦いで決着着くよ」
ソルがパネルを操作し、黒の巣君の少し上からの俯瞰視点にカメラを持っていく。
「うわぁ、こりゃひでぇ」
「うん。彼、刀を片手剣と同じと思ってるのかな?」
刀で叩き切るって、やばすぎだろ。打撃を狙うなら峰打ちや、柄で鳩尾を殴ったりするべきだ。
「「あ、勝った」」
「この人は本戦で負けそうですね」
「......まぁ、言っちゃなんだが、そうだな。黒の巣君は剣術メインでやるべきだったな」
なぜ彼は刀術に手を出したのか。
......いや、分かるぞ? カッコイイもんな、刀。その気持ちだったらとても共感できる。
だが、それだけで勝てるほど刀は甘くない。
彼の勝率はかなり低いだろうな。
『ではこれより、本戦のトーナメント表を発表します!』
「「「おぉ〜」」」
遂に来たか。4人の本戦出場者による戦いが。
『今回は本戦出場者が4人ですので、2組に分けられます! まず、1組目を紹介しましょう!』
さぁ、誰と当たるのかな?
『1組目! プレイヤー名、『ルナ』対『阿吽のコキュートス』!』
「やべぇ、誰か知らん人だ」
「ゴリラだね。一瞬でぶった斬ってね!」
「お、おう」
『続いて2組目! プレイヤー名、『茜』対『黒の巣』!』
「これは茜さんの勝利だろうな」
「うん。これで黒の巣君が勝てたら、ステータスによるゴリ押しだと思うよ」
「父様と母様の意見に同意ですね」
『ではまず、1組目の本戦を始めましょう! ルナさんと阿吽のコキュートスさん、転移をお願いします!』
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本選会場(控え室)に転移します。
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「強制じゃん」
ちょっと待って、が出来なかった。
「ルナ君、楽しんでね!」
「そうですよ! 父様、遊んじゃってください!」
「あぁ。行ってきます」
「「行ってらっしゃい!」」
そして魔法陣が出て、俺は転移した。
刀術部門の本戦出場者が決定しましたね!
ルナ君、阿吽のコキュートス。茜さんと黒の巣君。
黒の巣君だけ扱いが可哀想ですが、まぁしょうがないのです。
次回、『刀術部門、本線開始』お楽しみに!
あ、流れで適当な予k(ry