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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第一章『ソロクエストに必要な物は勢いです』
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第四話『黒魔獣はただのカモです』

 スケイオに向かって一直線に邁進する自称最強光騎士クリュー。ヤバいめちゃくちゃ心配になってきた。


 彼女は知っているはずだ。スケイオは一筋縄ではいかない。この国中のどんな猛者もさでも追い返したり怪我をさせたり丸ごと平らげたりした極悪魔獣だ。最凶だ。


 対するクリューは()()最強騎士。いくら光属性という有利な魔法を使えたとしても、これまでの偉業の最低三つは俺の知らないところでの手助けのお陰であって。一瞬で食われてしまわないだろうか。


 勘違いしないで欲しいが、俺はクリューは食われてもらっていいと思っている。ただ俺は人が食われるのを見るのが苦手というだけだ。


 そうこう考えているうちにスケイオの前に。改めて見るとほんとに気持ち悪い。


「さぁスケイオ、その気色悪い顔を上げなさい」


 クリューも口悪いな。俺と気が合いそう。一応念を押すけどパーティ組むとは一言も言ってない。


 クリューの酷い口ぶりがそのバカでかい耳に入ったのかどうかはわからないが、スケイオは目を覚まして頭を上げる。


 と同時にスケイオに群がっていた虫の大群から、急な動きに驚いた一団がこちらに押し寄せる。ぎゃあ気持ち悪い。クリュー、スケイオよりこっちを追い払ってぇ。


「グォォォォ!」


 突然のスケイオの咆哮。耳は崩壊寸前に追い込まれたけど虫はどこかへ行ったので感謝しよ――いやダメだわ。耳の方が大事でしょ。


 頭を上げただけだと思っていたが、その四つの脚はしっかり地面を掴み、()()()()()()()凛々しいシルエットが完成する。え、近くからならどうかって? 気持ち悪いに決まってるでしょ。虫は群がるわ血なまぐさいわでせっかくのシルエットが台無し。


「さぁ行くわよスケイオっ!」


 クリューは駆け出し、跳び上がる。なんて隙の多い動きなんだ。ニーヴェくん感動しちゃう。

 持つロングソードに閃光がほとばしり、スケイオは目を瞑る。しかし俺とアズは瞑目することは無い。何故って? だって光が弱いから。スケイオは光に弱いけど俺たちはそんなことないし。


 こんなので勝てたらみんな苦労しないっしょ。そんな俺の思考は届くはずがなく、クリューはそのまま真っ縦にスケイオの脳天目掛けて剣を振り下ろす。

 瞑目していたスケイオだったが、クリューの剣がもうすぐ当たるという所で目を開けた。あの野郎やっぱりフェイクだったか。頭良いじゃねぇか。


 スケイオの口が開く。


 あぁクリューが食われる。


 スケイオの双眸がギラつきを増す。


 あぁクリューが食われる。


 スケイオの鼻息がご馳走を前に荒れる。


 あぁクリューが食われる。


「あ〜もう! せっかくのソロクエストだったのに!」


 そう叫んでイラつきをどこかに逃がしながら早口で魔法を詠唱する。

 途端に()()()()()()()のロングソードはとてつもない光を放ち、今度こそスケイオの目は潰れる。


 先に瞑目していた俺はすぐに目を慣らし、舌が攣りそうになりながらも次の魔法を詠唱。弱々しい剣がスケイオのおツムを殴る前に切れ味を補強。

 その後スケイオさんは脳天から尾にかけて真っ二つになりました。ごめん切れ味だけじゃなくて当たり判定も操作しました。めでたしめでたし。


「ふぅ。これで一安しっ」


 舌が攣った。


「え、これ私がやったの?!」


 クリューさん? この期に及んで圧倒的勘違いを続けるのは良くないと思うなぁ。そろそろどっかの魔獣に食わせるぞコラ。言葉にしたいけど一身上おれのしたの都合上できないのが残念。


「ちょっと。いい加減認めなさいよ。やったのはあなたじゃなくてニーヴェなのよ?」


 おぉアズ。ありがとう。情報収集では大失敗を犯してくれたけど今はやるじゃん。

 しかしクリューはポケっとした態度で言う。


「え、ニーヴェくんはそこにいただけでしょ?」


 いや確かにそうなんだがっ! そうだけど違うっ! 断じて違うっ! 誰がアンタの命を助けてやったと?!


「ニーヴェ、言ってやりなさいよ。美少女だからって遠慮する必要はないわよ。あ、でもニーヴェは遠慮なんてしないか」


 合ってます。さすがはアズさん。それなら俺のジェスチャーもわかってくれるよね?


「――何やってるのニーヴェ?」


 え。


 舌が攣ったことを知らせる身振り手振りが伝わらないとは。不覚。


「あ、スケイオ倒したんだから早く王城まで凱旋しよう。てことでニーヴェくんは晴れて私のパーティに加わることになったね! これからよろしく!」


 満開の笑顔の美少女。てめぇ俺が詠唱中に噛んだらどうなってたと思ってるんだ。俺の舌がどれだけ頑張って回ってくれたと思ってるんだ。こんな扱いあんまりだ。


 出来うる限りのめつけをクリューに向けるも当人は気づかない様子で歩いていく。仕方なく後ろをとぼとぼ俯いて歩く。


 アズは心配そうについてくる。あれ? もう話せそうだな。舌が復活したかも。


「ねぇニーヴェ。ほんとにこのままでいいの? ソロクエストは? 言いたいこと言った方がいいよ」


「あ、あ、あ。らりるれろ」


 よっしゃ来たぁぁぁぁあ! 今までの牛歩はどこへやら、ダッシュでクリューの元に向かう。


「クリューっ! 待ってくれ! さっきのは俺が魔法を使ったから勝てただけなんだ! 決して君の実力じゃないんだ! だからチーム結成だけは勘弁して!」


 我ながらなんて自己主張の強いやつだ。しかしそれが俺だ。魔法が自己主張皆無な分性格でそれをカバーしていく。


 ゆっくりと振り向くクリュー。綺麗な金色のロングヘアが舞う。そして失意の大船団を顔という海に浮かべまくりながら言う。


「え、嘘でしょ……そんな……暗黒の龍を倒した私がスケイオ討伐ごときに君の力を借りちゃうなんて……!」


 その暗黒の龍を倒した時も俺の力を借りてたなんて思ってもみないだろうな。


「もぉー手伝ってくれなくても良かったのにぃ!」


 そしたら死んでたけどそれでもいいかな?


「そんなに私とパーティ組みたかったかぁ。そっかそっかぁ」


 テメェそれ以上続けたら何らかの方法で人生終わらせるぞ。横のアズがすごい目で見てるからほんとにやめてくれ。

 というかアズ以外にも街の人達の視線が。ヤバいやつらを見てるみたいな視線が痛い。三人の中で唯一まともな俺がクリューを止めないと。異論は認めないけど何か?


「違うんだって。考え直してくれ! 今のは命が危なかったから助けたってだけで! さっきのは無効にしてもう一度違うクエストでやってみてくれ――」


 ――よっ! あれ? 最後発音できてない気がするんだけど気のせいかな? ちょっと前まで感じてた舌が固定されてる感じをまた感じることができてるのはあくむかな? 


 えっとこれはつまり……?


 また攣りやがったなこの味覚と発音とその他もろもろを司る結構重要な器官野郎!


 ということで俺とアズはクリューに半ば連行される形で王都に行くことになりましたとさ。

 全くめでたくないから何とかしてクリューの魔手を免れようと心に誓う俺であった。

こんにちは、氷華青です!

今回四話を投稿できたこと、全て読者の皆様のおかげです! 本当にありがとうございます! これからも拙作を応援していただければそれ以上の嬉しさはありません!


さて、スケイオ倒されちゃいましたね。次回は舌が攣った二ーヴェ君がクリューから逃れるために奮闘するという相変わらず意味不明な展開をしていきたいと思います(笑)


それではこの辺りで。

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