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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第四章『ソロクエストの次は王様のパシリです』
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第四十話『神をナメる者にはいつか天罰が下るのです』

 俺とイグナの武器を買うために武器屋を目指す俺たち。しかし空はもう暗い。


「なあ、とりあえず寝ないか? 寝てからでも遅くないって」


 そんな俺の提案など瞬時に跳ね返し、先頭を元気よく進むイグナは言う。


「いいえ、今行った方がいいです! なぜならもうすぐ閉店なんですから!」


 ん? 今なんつった、こいつ。


「ねえイグナちゃん、絶対先に宿探した方がいいって! 武器なんて選ぶ時間とかも考慮に入れたら余裕で三十分はかかるって!」


「そうそう! クリューのバカ長い武器選びに付き合わされた俺たちならわかる! 俺はすぐに決められるがイグナは怪しいかもしれないっ!! 俺はすぐに決めあだだだだっ! 関節キメないで! 死ぬっ!」


 急に先頭から最後尾まで移動して後ろから関節技キメてくるのやめて欲しいんだが。つうかなんで魔導士なのに接近戦しようとしてんだよアホか。


「あはは、私は力が弱いのでそんなことくらいでは人は殺せませんよ。ただ関節を本来曲がらない方向に曲げようとしただけですから」


「もげるわ! お前レウシスに俺の片肘下だけ渡すつもりか!」


 「これだけしか残りませんでした」ってか。


「ちなみに、今急がないと大損しますよ? 私もバカじゃないんです、閉店前の割引セールくらい知っています」


「そういうこと? イグナ賢っ。神様仏様イグナ様!」


「見直したよ、イグナちゃん!」


「神仏と私を並べるなんて私に失礼ですよ! あとアズさん、見直す前はどんな印象だったか詳細に説明してもらえませんかね?!」


 ごめん、断っっっ然神仏に失礼だったわ。


「と、とりあえず、行こっか! ほ、ほら、お店が閉まっちゃう!」


 アズ、誤魔化し下手か。




 若干喧嘩しそうな二人(アズとイグナ)を半ば引っ張りつつ、俺は武器屋に急いだ。


 そしてやっとの思いで到着。


「いらっしゃいませー。あと五分ほどで閉めちゃうので、購入される商品はお早めにお決めください」


 あと五分だと?! それはそれは半額ほどになるに違いねぇっ!


「イグナ、間に合わせろよ? 間に合わなきゃ俺らは何も買えずに追い出されるんだからな? 俺が二人を引っ張って歩いた道程が全部無駄になるんだからな?」


「わかってますよ。それと私のことはイグナ様と呼んでください。一応神仏と並んでるので」


「そろそろ天罰下るぞ? じゃあそういうことで!」


 ああ言った以上、イグナに遅れる訳にはいかない。


「うぉぉおおおおお! そういえば何買えばいいか全く知らないけどとりあえず何か買うぞぉぉおおお!」


 しまった、一番大事なこと忘れてた! おそらく俺の買うべきものはイグナが知っている! 俺は白魔導士としての装備なら十分に持っているけど、イグナが俺をどんな戦士にしたいのかによって他の武器を買わなければならない可能性が浮上する!


「イグナ!」


「はい、なんですか?」


 イグナの手には、新品の杖が握られていた。


 もう一度言おう。イグナの手には、「新品の杖」が握られていた。


「早すぎるだろぉぉおおおお?! てめぇどんな手を使った?! 過去に戻ったのか?! 『店長のおすすめ』というチートを使ったのか?!」


「お、落ち着いてください! これはすっごく前から購入を決めていた杖なんです! いくら私が神だからといって、過去に戻るなんていう奥の手は使いません! それと『店長のおすすめ』の何がチートなんですか?!」


 いいかげん自分を神仏と並べるのやめろ。天罰下らないまでもとりあえず飽きろ。


「何、前から決めてただと?! それは条件的に俺が不利じゃねぇかっ! 俺は何買えばいいかすら知らなかったんだぞ?! 先に教えといてもらえればこんなことにはなら」


「あ、とりあえずニーヴェさん用の剣も買っておきました。今度のものは以前の最低価格剣よりずっと高価なものですので丁重に扱ってくださいね?」


「マジですかありがとうございます神ですイグナ様、あなた様は正真正銘の神です」


「ニーヴェ、心変わり早すぎ……」


 アズに引かれてる気がするけどそんなこと気にしない! 確かにイグナは買うまでは競争相手だ。しかし!! 購入が終われば仲間っ! たぶん奢りだしマジで大感謝!


「うんうん。偉いですよニーヴェさん! ということで、神への貢ぎ物も兼ねて剣の代金をくださぼばっ! 何するんですか! 罰当てますよ?!」


 さっきまで一瞬神だと思ったやつを、立場を鮮やかに翻らせてブッ飛ばす。


「うるせぇ! 剣すらクソザコ白魔導士に奢れないくらいで神を名乗ってんじゃねぇ!」


「神の判断基準イカれてますね?!」


「お客さん、とりあえずもう店閉めていいっすか?」


「「「ほんとすみませんでした」」」




 アズもイグナに加勢したということでとりあえず代金はちゃんと払ったわけだが。


「いらっしゃいませ。男性の方一名、女性の方二名様ですね。お部屋の割り当てはどうされますか?」


「もちろん、男女別の二部屋で」


 場所は変わって宿屋。暖かみのある木の壁は、旅人を包み込んで癒すのに絶大な効果を発揮している。

 そんなまったりスペースの中、すかさず俺が言う。なんで俺なんだろうか。普通は女子陣営が言うだろ。あ、嫌がりすぎて咄嗟の声も出ないのか。


「了解致しました。それではこちらへどうぞ」


 ロビーから出てすぐにある階段を上ると、その先は短い廊下。カーペットも何もないものの、綺麗に清掃された木の床を見てこれから入る部屋への期待を膨らませる。


「女性の方はこちらをお使いください」


「「ありがとうございます!」」


 アズもイグナも、格安の代金からは想像もつかないここの待遇の良さに目を輝かせて、示された部屋に入る。


「わぁ! すごい!」

「ニーヴェさん! 後で枕投げしましょう!」


 どんだけ枕で溢れてんだその部屋は。入ってすぐ言うセリフじゃねぇだろ。まあ、アズは普通に感嘆してたし、サービスだけ良質ってわけでもなさそうだ。


「男性の方はこちらへ」


 ん? 待てよ? もしかして、すんごく低〜〜い確率だけど、ここって女尊男卑があったりする?


 ――さすがにないか。


 一瞬よぎった不安は杞憂だと判断し、ワクワクしながら通された部屋を見渡す。


 ロビーと同じく、心を落ち着かせるような木に囲まれた空間。

 真っ白く、ふかふかのベッド。今すぐ顔を埋めたい。

 壮大なとは言えないまでも、綺麗なセコンの街の夜景が望める窓。


 そして――


「にににににににニーヴェさん?! な、なぜあなたがここに?!」


――黒魔導士、リオン・シュヴァルツ。


「こっちのセリフじゃい! なんで相部屋なんだよコラァ!」


 係員さん行っちゃったから後で文句言いに行かないと。

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