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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第一章『ソロクエストに必要な物は勢いです』
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第三話『光剣士は泥棒猫です』

 オッサンめっちゃ怒ってるだろうなぁ。ガチでキレてんだろなぁ。ほんとに申し訳ない。でも()()()()()()()()()()()()


「アズは聞き込みどうだったの?」


 俺はもう話したから次はアズの番。


「普通に教えてくれたわよ。ものすごく優しい女魔導士さんだったわ」


 さすが可憐な女性は物分りがいい。どっかのオッサンとはまるで違う。


「へぇ。どんな情報?」


 邪悪な魔獣スケイオに関する情報。オッサンから詳細に聞けたとはいえ、たった一人の情報を鵜呑みにする訳にはいかない。


「スケイオって目が悪いんだって」


 まず一つ。ふむふむ目が悪いのか。なら鼻が利くんだろう。さて次は?


「――」


 あれ終わり? アズさん終わりですか?


「一応訊くけど他は?」


「ほんとに申し訳ないけどそれだけだよ」


 まぁしょうがないか。タダで情報を得られたのは大きい。それがどんなにちっぽけな情報であれ。


「アズありがと。これで少しだけ勝てる希望が見えた気がしないでもない」


 出来れば逃げ出したいけど必死に我慢。


「いやぁそれほどでもぉ。私もお金持ってて良かったなぁ」


 ――えっ? え、ゑ?


「ごめんどういうことか正直よくわかってないんだけど詳細に教えやがれください」


 ダメだもう血管がプッチンしそう。この先の展開が容易に読めすぎて怖い。


「そんなの情報を十万ゴールドで買ったに決まってるじゃん」


 予想通りの返答どうもありがとう。「普通に」破格の金と少量の情報を交換したわけだ。これならオッサンの方が百倍マシだ。質も量も違いすぎる。


「アズお前、ぼったくられ倒したな!」


 この叱責だけで済んだことを幸運に思え。幸い金はまだ足りる。ただし何人もから情報もらったら俺たちは路頭に迷うことになるのでそれだけは避けたい。いやそもそも提供者の二人ともに大規模クエストクリア一回分くらいの報酬を渡してる俺たちも俺たちだけど。


「ぼったくられてないよ! ちゃんといい情報じゃん! 私の月給の一割だしいいじゃん!」


 ()()()()()()()()()()()


「あのなぁ――」


「――あのごめんなさい。話しかけるタイミング見計らってたんだけど全然見つからなくて待ちきれなくて話しかけたんだ。ニーヴェくんって口悪い白魔導士で有名なあのニーヴェくん?」


 出たな乱入者。俺とアズの超不毛な争いに終止符を打ちに来たか。――大歓迎です。


「ちょーぜつ嫌な肩書きだけどまぁ間違いじゃないしいいや。そう、俺がニーヴェ。絶賛ソロクエスト挑戦中の俺に何か用?」


 だいぶキツい言い方だけどこれで協力依頼は折れてもらおう。もうさっさと協力依頼って決めつけてるけどどうせそうだ。そうじゃなきゃこんな美少女が俺に話しかけてくるはずがない。アズじゃあるまいし。


「ソロクエスト挑戦中?! 白魔導士が?! あでも自強化できるんだ。楽勝だね! 頑張って!」


 驚いた反動で美少女の長い金髪が揺らめく。この人俺のことあんま知らないのね。


「んとね。俺自強化できない人なの。だから死にに行くようなもんよ」


「そうなの?! そんなのダメだよ! 死んじゃダメ!」


 感情の起伏激しいなこの人。


「わかったわかった。死なないから。で、俺に何か用があるんだろ?」


 死なないとは言いきれない。てか魔獣と対面した時点で死ぬ可能性はゼロじゃないんだからね? それだけ危ないんだから。だから遠くから味方を見守る戦い方が一番安全。


「あ! そうそう! えっとね。率直に言うと……ニーヴェくんにクエスト協力してほ――」


「――却下」


 出た出た。すぐ俺に助けを求める。俺は誰にだってホイホイついてく白魔導士じゃないんだよ。今は特に。さぁもうそろそろ折れてくれ。


「てかさ、君何者? まずそこから知っとかないと契約なんてできないよ? 既に交渉は一刹那で決裂したけど」


「あ、ごめん。そうだよね。名乗ったらまだ交渉できるよね?

コホン。私の名はクリュー。光属性の剣士よ。暗黒の龍、闇の魔王、邪悪な瘴気……王国を襲った三大闇脅威の征伐には全て参加し、その全てで最高勲章を頂いたんだ」


 暗黒の龍――そういえばあの時は龍を飛翔させないように王国の黒魔導士を総動員して飛翔抑止魔法をかけ続けて、王国の剣士の半数を討伐に向かわせたにも拘らず、ほとんどが戦死しちゃったんだっけ。それで俺が嫌々出て、どっか適当に光属性持ちの剣士選んで最大レベルの魔力上昇魔法かけて一撃で仕留めてもらったんだよな。


 闇の魔王――「魔王」を()()()()はいっぱいいたけど、その中でも王国が「魔王」って認めてるのがこいつだけ。他の自称魔王は光魔導士や騎士達だけで――といっても大量動員やエリート動員で力ずくだけど――倒せていたんだが。こいつだけはなかなか上手くいかなかったらしく王様が俺に土下座までして助けを求めて来た。その時はさすがに気持ち悪くて追い払ったんだけど。後日自分の失態に気づいて謝りに行ったなぁ。

 そうそう、話がズレた。それで俺は闇の魔王と相対して――っていうかどっかの剣士を矢面に立たせて隅で魔法かけただけだけど――一撃で仕留めてもらったんだよな。


 邪悪な瘴気――急に現れて街五つくらい飲み込んで、それを吸った住民が気分悪くなって診療所に押しかけたって聞いて騎士も魔導士も慌てて駆けつけたんだ。どっかの光属性持ちの騎士が光魔法当てると少しずつ消えるってのを発見して、それで俺がそいつに魔法かけて光属性の魔法で一撃で仕留めてもらったんだよな。


 ね、聞けば聞くほど俺って王国に貢献してるっしょ?! 直接ダメージ与えてないから勲章なんてもらったことないけど。だから目の前のこいつに訊いてやろう。


「てか最高勲章ってどうやったらもらえるの?」


 クリューはその質問を聞いて、


「ふっふっふ、よくぞ訊いてくれたね。暗黒の龍の時は龍にとどめの一撃を与えたから。闇の魔王の時も魔王にとどめの一撃を与えたから。邪悪な瘴気の時は最後の魔法で大半の瘴気を消したから」


 と得意げに答える。


 その得意満面を見て腹が立ってきた。だってさ。()()()()()()()()()()()()()()()


「どう? 少しは契約してくれる気になった?」


 いやさらに契約したくなくなった。なるほど俺の長年の宿敵は龍でも魔王でもなくこいつだったか。今ここで消しておかないとソロクエストといえど手柄を横取りされる可能性がある。と、クリアする可能性の少なさを棚に上げて言っておこう。


『ダメだよそんなの。危険な思想は捨てなよ。君はいっつもそうだ!』


 ん、お前は。天使ニーヴェ! 俺の心の中に登場しては度々俺の人生をいい方向に導きやがってほんといつも感謝してます。


『いいのかニーヴェ? こいつは消しておいた方がいいと思うぜ? はっきり言ってソロクエストの邪魔だ』


 そして出たな悪魔ニーヴェ。俺の真っ白い心の中のどこに住居を構えているのか全く想像がつかない俺の中の本心を代弁してくれる同志! え、真っ白い心だよ? 何か文句でも?


 てか天使。俺がいつも危険な思想持ってるだと? ぶん殴ってやろうか。あ、危険な思想出ちゃった。


 天使と悪魔がいると話が長引くからとりあえず決定。クリューに一人でスケイオを討伐してもらう。

 スケイオを倒すことが出来たら、本当に実力を持ってるってことで俺はチーム組んでも白魔導士しなくてもクリューだけで勝てるから他の職業の訓練をしながらクエストクリアを目指せる。そしていずれはソロクエストに……!

 倒すことが出来なかったら、ソロクエストの邪魔が消えてどっちでもハッピーエンド。「なんてクソ野郎だ」と思った人、世界ってそんなものじゃないですか?


 っていう問いかけはやめにして。話を進めよう。


「ちなみに、ソロクエストとかやったことある?」


 今絶賛挑戦中だろうけど。そんな面白くない解答はさすがに――


「今絶賛挑戦中なんだけど?」


 そう来るのか。こいつ面白くないやつだ。


「えっと……他には?」


 こんなことをわざわざ言わなきゃいけないのがなんとも言えないくらいに面倒くさい。


「他? 他は……あんまり成果出せてないかなぁ、なんて。強いパーティに入ってもなんだか雑魚扱いされるし。一人で行っても追い返されちゃうし」


 了解、そんな地の底くらい弱いのね。ならばこっちには打つ手がある。だいぶ自信のある一手! 受けてみよっ!


「スケイオを一人で倒せたら、俺がチーム組んであげてもいいけど? それも無期限契約で」


 アズは驚いた顔をしているが、クリューの顔からは喜びしか感じられない。あの、緊張は? ひょっとして今まで爪を隠していた鷹ですか?


「そんなことでいいんだ? 知らないよ? 明日には契約させてあげるんだから!」


 なんかちょっと怖くなってきた。頑張ってスケイオ! 食べない程度にクリューを失墜させてくれ!

 彼女が急にスタスタ走っていったので、俺はアズに目配せしてついて行った。

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