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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第四章『ソロクエストの次は王様のパシリです』
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第三十七話『言葉は作るだけではダメです』

 あのね、クリュー捜したりアズ捜したりイグナ捜したりって、俺、美少女捜してばっかりなのよ。

 ほんとこれじゃただの変態じゃないの。


「くそっ、もうすぐ日が落ちる! なんでどっか行くかなぁ……?」


「なんだか前もこんなことあったよね。クリューちゃん捜してる時だったっけ?」


「そうそう、俺が何回も吐きそうになったやつ……うぷッ」


 やばい、帰宅途中の住民たちの群れに遭遇中のニーヴェ氏、例のごとく嘔吐しそう。


「ちょっとちょっと! ここで吐いちゃまずいよ?!」


「わ、わかってる。わかってる、けど……ッ!」


 アズは倒れそうな俺の体を支えながら、辺りを見回す。


「あ、あそこに服屋さんあるよ! とりあえず行ってみよう! そんなに混雑もしてないと思うし!」


 半ば引きずられながら俺はアズと共に服屋へ。


「いらっしゃいませー」


 優しそうな三十代くらいの茶髪の女性が営業スマイルを振りまいて言う。


「あ、あの……ここに体に張り付いてんのかってくらい小さいローブを着た女の子は……うぷッ、来ませんでした?」


「ちょっとちょっと、何があったかは知りませんがここで吐かないでくださいよ? それとそんな女の子は見てないですねぇ、申し訳ありませんが」


 まあそうよな。逆にここに入ってたらすごい奇跡だわ。この街にどれだけ服屋があると。


「ごめんくださー……い……って、えぇっ?! ニーヴェさん!」


「なんで先に行ったお前が後から来るんだよ?! 吐き気吹っ飛んだわ!」


「なに二人で驚き合ってるの……?」


 アズは俺たちのバカさに引いているが、まあとりあえず会えたのは万々歳だ。


「ってかお前が一番バカだろっ!」


「なんですかその話の繋がらないツッコミは?!」


 また俺の中で思考と会話が混ざったということさ。


「とりあえず、この子の着てるローブより一回り大きいサイズのものってありますか?」


 あ、バカが喋った。もう三人ともバカだし、アズって呼ぶか。うん、それがいいよ。振り出しに戻ってるけどそれでいいんだよ。


「もちろん! 色は黒でよろしいでしょうか?」


「はい! 黒でお願いします!」


 そして待つこと一分。


「お待たせしました!」


「ううん、全然! 今来たとこ!」


「ニーヴェ、それ待ち合わせの時に言うやつね?」


 そうだったわ。「『ありがとう』と『どういたしまして』の関係」と「『お待たせ』と『今来たとこ』の関係」は同じじゃなかったわ。


「それでは着替えるので少々お待ちください!」


 今回はアズもいるし、審査員のファッションセンスの平均点は高いはず。まあどうせサイズ見るだけなんだけどね!


「あ、ちなみにニーヴェさんも一緒に更衣室は――痛った! アズさんにならわかりますが、なんでニーヴェさんに殴られたんですか私?!」


「俺は清廉潔白だからそんなことしないんだよっ!」


 ちくしょう俺を侮りやがって。そんな誘惑に俺がホイホイ負けると思うか? ()()()()()(ここ大事)。


「ふーん、そうですか。なんというか、その……滑稽ですね」


 やめろそんなゴミクズを見るような目でゴミクズを見るな。あと後頭部のたんこぶが面白すぎてバカみたいになってるぞ。


「まあまあイグナちゃん、早くそのキツいローブから解放されたいでしょ?」


「それもそうですね! では行ってきます!」



 イグナが試着室の扉を閉めてから五分。



「お待たせしました!」


「ううん、全然! 今来たとくぉい! 俺! 学習しろっ!!」


 危ない、「『ありがとう』と『どういたしまして』の関係」を使えない時に使うところだった。長いから今度使う時は「ありどいたまの関係」って言うわ。


 なんかアリと卵使った料理みたい。知らんけど。


「うわあ、すごい! ピッタリだよ、イグナちゃん!」


「ほんまやん! やっとイグナ完全体を見れて俺は感動してるぜ!」


「イグナ完全体って何だか怪物っぽいですね。まあありがとうございます! ようやく私の真の力が発揮できますよ……ふふふふふ……」


 はいはい、どうせ大したことないのやめような。変にハードル上げてるだけだから。


「ちなみにどれくらいの力が出せるの?」


 アズちゃんそれ訊いちゃいますか。完全にスルーの流れでしょ。スルー完全体っていよいよソレっぽいな。


「えっとですね……今目指してるところにいる敵くらいなら余裕で倒せます」


「じゃあお前さっさと行けよ! てかなんであの時ダボダボローブであんなパーティでくすぶってたんだよ?! 最強クラスの魔導士じゃねぇのお前?!」


「いやぁ、それほどでもぉ〜。まあそれもニーヴェさんの力を借りればですけどねぇ」


 俺の褒め言葉返せコノヤロウ。そういう魔導士のこと全部ひっくるめて「平凡な魔導士」って言うんだからね?


「へぇ〜、すごいね! やっぱりイグナちゃんって強かったんだ!」


 騙されんなバカアズ。つうかこの言葉の罠にホイホイ引っかかる方がおかしいんだよ。お前は餌に惹かれて罠にかかっちゃうバカアズか。比喩下手か俺。


「は、はい、そうですよ! とりあえず今日はここに泊まるので宿屋を探しましょう! ……アズさんにバレる前に寝て今日の出来事を忘れさせちゃいましょう」


 ダメ元で置いた罠に獲物がかかって逆に驚いてやがる! それとアズのことを寝たら一日の出来事忘れるくらいバカだと思っちゃいけねぇぜ。こいつは五歩歩くだけでなんでも忘れられるんだからなぁ、ヒャッヒャッヒャア!


 あれ、なんで今までアズを連れてきてたんだろ。もしかして今までのこと全部忘れてるかもしれないんだよこいつ。


「そうだな! もう夕焼けも消えそうだから早めに行こう! ちなみにアズよ! 俺が山で倒したクソつよ魔獣の名前って覚えてるか?」


 忘却マシーンは首を傾げる。


「……………………えーっとぉ、エリュなんとか、だった気がするんだけど……なんだっけなぁ……」


「そうそう! エリュなんとか! そっからトロンとしたらもう正解! 早くトロンってしよ!」


 空を見ると、もう星がいくつか出てきている。そりゃあアズさんの長考が長考しすぎてね! 同義反復お疲れ様です。




「う――――ん…………あっ!」


「思いついたか?! 考え始めて十八分でついに?!」


「ワシボクチンだ!」


「やめろその名前を呼ぶんじゃないっ! あいつが俺の中で腹立つ魔獣ランキング第一位だから!」


 でも一応山で倒してるから合ってるのよね。


「もう、お二人が遅いから部屋取って来ましたよ!」


 おお、俺らのバカみたいな会話にうんざりしてちゃんと動いてくれたイグナに最高級の敬意を。


「なんでこんなところでひざまずいてるんですか? なんというか、その……」


「「滑稽ですね」」


 もう次に言うことが予想出来てハモっちゃったわ!


「そのセリフお前のキャラに死ぬほどミスマッチだから明日には忘れてろよ!」


「寝たら忘れるので大丈夫です!」


 イグナはローブのおかけでサイズの目立たなくなった胸を叩いて言う。


 それよりさ……。


――今日の出来事を忘れさせちゃいましょう!


 このセリフって自分がそうだから他人もそうだろうと思って言ったわけ?! 何それ、信じらんないんですけど! もうほんとこのパーティ、バカばっかだよ!


「……まあいいや。もうほんと寝よ。寝たらクソバカパーティがめちゃ天才パーティに変わってたらいいなぁ……うへ、うへへ……」


 まあないんですけど。いやぁ今日は「バカ」って言葉をいっぱい使ったね。気になる人は何回か数えてみよう。うーん、十一回くらいかな?


 てか「ありどいたまの関係」ってマジでいつ使うの。

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