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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第四章『ソロクエストの次は王様のパシリです』
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第三十六話『同行者たちは厄介者です』

 思わぬ所で足止めを食らっている白魔導士。襲い来る魔獣も困難も、全てその一級の白魔法で突破してきた俺が、この山道で足を止めた理由。


 それは山登りに苦戦しているからか? 違う。


 あ、バカすぎて迷子になっちゃったか? 違う違う、もしそう思った人いたらぶん殴らせてもらうね。


「こいつ石像になってる時間長くねぇか?!」


 それはイグナという石像が石像しすぎてるからでした。置いていこうかな?


「おーい、イグナちゃん? 大丈夫?」


 大丈夫なら今頃人間に戻ってますよー。かれこれ一時間半よ? もうお陀仏してない方がおかしいだろ。


「アズ、どうする? 置いてく?」


「それはできないよ! イグナちゃんだって私たちの仲間だもん!」


 あの、百歩譲って「仲魔」な? え、それ気に入りすぎだって? いいじゃん、マイブームなんだから。

 てかこいつ仲間じゃないからね? ほんとに。ただの同行者なんだから。あくまでも俺は「一人で」戦う人になりたいんだから。


「うーん……でもさ、どうする? どうやったら石化解けるかわかる?」


 わかんないだろうな。だって魔法でもないんだぞ? 勝手にいち個人が図星指されて固まっただけなのよ?

──もしかして新手の魔法だったりして。


「思いつく作戦を試してみるよ。まずはビンタしてみる!」


「やめろそれはほんとに死ぬ! たった一握りの生存可能性を踏みにじることになる! 早まるなアズっ!」


 アズを獄に繋がせる訳にはいかない。だって俺も共犯者みたいにされちゃいそうだからね。


「うーん、じゃあ……あ! そうだ!」


 アズはイグナのカチカチの耳に顔を近づける。


「…………固まってるならニーヴェは私がもらうよ?」


 あ、何か言った。何言ったんだろ。めちゃくちゃ気になる。下ネ――これ以上考えるのはやめておこう。


「うわあああああそれはダメ! アズさんそれだけは許しませんっっっ!」


 石化、解けた。言葉で解決すんのかよ。


「お前な、固まるのはいいけど時間考えろ? 死んだかと思ったぞ!」


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」


 あ、スーパーニーヴェ平謝り・イグナエディション。それに免じて今回は許してやるか。そして二度とこいつの図星を指すのはやめとこう。


「実は三分くらい固まるつもりが、ここまで呼吸を止めてしまっていたんです……!」


 え、ほんとに息止めてたの? 化け物? アズちゃんと同類?


「なんかすごい失礼なこと思われてる気がするんだけど……」


「そぉんなことあるわけがないじゃなぁいですかぁアズさん! いやほんとほんと、ほんとだからその握り拳は開いて元のアズに戻って……って開いたら開いたでビンタの準備するのやめて!」


「息を止めていただけでなく気を失っていたみたいで、アズさんのあの一言がなければポックリでした!」


 ああもうダメ、手前に殺人未遂姫アズ、奥に謝りイグナちゃんのこの状況を捌ききれない!


 くっそう、こうなったら!

 アズのビンタを頭を下げてかわし、イグナの元へ。


「いや一時間半も生死の境を彷徨ってて戻って来れたの呆れを超えて尊敬だわ! それとそんな人を一発でこっちに引き戻せる『一言』って一体なんだったの?! やっぱり下ネ痛ってぇぇぇぇっ!」


 危ねぇアズがビンタしてくれなかったらみんなに引かれるところだった! 片頬イカれたけど! それとたぶんもう読者の皆様は冷めた目で俺のこと見てると思うけど!!

 うん、総合的に考えると、やっぱりアズは俺を救ってくれたわけじゃなかったかも!


「ニーヴェ? 今NGワード言おうとしてたでしょ?」


 アズはこちらを睨む。なんだとそんなのいつ決めた、なんて言ったらほっぺたのラストワン賞をアズにゲットされちゃうから俺も睨み返すだけ。


 ということで殺人姫と変態は激しいアイコンタクトの火花を散らす。


「尊敬だなんて……! いやぁ……それほどでもぉ〜」


 あんた今の状況わかってる?


「ま、いいや。いつものことだしね。イグナちゃんも戻ったんだし、歩こ!」


 ふぅ、何とかこの修羅場を乗り切ったか。「いつものこと」っていうのは俺がいつも変態っていうことだと思うけどここでそれについて言及すると認めてるみたいになるからやめとこう。


「あ、『いつも変態』なの認めるんだ」


 言及しとけば良かった。




 今回はナリアトとかソロップとかを通る道とはまた別の道を進む計画らしい。イグナの計画だから深く信用するのは避けたいけど。

 ん、疑う理由? ……こいつのローブ知ってる?


「さて、一つ目の拠点、フィルストに到着です!」


 フィルスト。衣服産業の盛んな街で、この街にいる人たちはほとんどがオシャレに着飾っている。日常生活に必要ないような、羽根とかクソデカスカートとかじゃなくて、目にうるさくない程度の高級感溢れる服ね。艶があったりシワひとつなかったり。


「よしイグナ、買い物行こうか!」


「なんですか急にデートですか?! 喜んでお受けし」


「待って、私ももちろん行くよ?!」


 なんかカオス。三人いると俺がショッピングに対してちょっとやる気出しただけでこんなになるんだね。やっぱ一人の方が楽かも。


 あ、そうそう。俺はこの街を経由するって知った時から、絶対にここでイグナのローブを買うって決めてたんだ。もうなんかさ、苦しそうだし。ボディラインとかそんなのじゃなくて、苦しそうだし。ね、ほら……ね?


「む……まあいいですけど。それでそれでニーヴェさん、何を買いに行くんですか?」


 ローブに決まってんだろ。


「そんなの私の帽子に決まってるじゃない」


「これっぽっちも決まってないからなっ! そんでお前、前にナリアトでウィッチハット買ったろ?! 一時間もせず外しただろ?!」


 ただの金貨の無駄じゃん。


「じゃあ……魔導書ですか?」


「そうそう魔導書ね、うんうん、俺も白魔法の魔導書欲しかったのよ。ちょうどあそこにお店あるね! よっしゃあこれで魔獣も一人で簡単に倒せるね! って違ぇよ!! なに俺に長めのノリツッコミさせてんだよ! あまりにノリすぎてもう少しでそのまま買いに行くとこだったわ!」


 しかも白魔法じゃ普通は何も倒せんからね? エリュトロンの時はほんとに運が良かったんだから。


「もう、じゃあ何を買いに行くのよ? そろそろ教えてよぉ」


「二人が要らないこと言って答えを引き伸ばしてたことは置いといて……コホン、ドゥルルルルルルルルルル、バーン! ローブを買いに行きます!」


 ドラムロール、一回やってみたかったのよ。さあ、存分に納得せよ二人とも!


「「…………はぇ?」」


 いやいや二人して首傾げんのやめて。イグナは気づいてないかもしれないけど、さすがにアズは傍から見てたら気づくよね? イグナのローブのサイズ、おかしいでしょ? だってこの物語の二大違和感のひとつよ? 「ギャプッ」と肩を並べるくらいのやつよ?


「…………え? あの……ローブ……イグナの……サイズ…………合ってない………………」


 なんかもう呆れすぎて声がだんだん小さくなってきちゃう。


「ああ、私のローブですね! 確かにサイズ合ってないです! 行きましょう!」


 サイズ合ってないの忘れてたの……?


「……?」


 アズ、答え明かしたのに首傾げ続けるのやめよう。もはやそれはただの救いようのないバカだ。


「アズ、ローブ。ロ、ウ、ブ。わかる?」


「イ、グ、ナ……?」


 何こいつ変換機能バグってるの? まあいいや、とりあえず連れていこう。イグナはもう走り始めてるしね。よーし、既に見えなくなったイグナ。片手はアズと繋いで歩きにくい。その状態でチェイスだ。ほんとこの二人は俺じゃ捌ききれん。

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