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ヴァイス 自強化不可の白魔導士は一人で魔獣を倒したい  作者: 氷華青
第二章『ソロクエストへの道のりは長いです』
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第十九話『炎魔導士は超を超越するほど頑固です』

 手頃な草むら探しに出た俺とイグナ。シュールすぎる。

 そして今のとこ二人とも真っ白なのでヤバい奴らみたいになってる。片方ほんとにヤバいやつなんで安心してください。もちろんイグナです。

 というか「なんだ、外見だけじゃなくて中身もヤバいんだ〜」っていう安心聞いたことねぇな。


「あ! あれ良さそうじゃないですか?」


 イグナが指さす先には本当に草むらがあった。思いっきり疑ってたわけだけど。だって自分の服のサイズわかんないんだよ? 生粋のバカじゃん。


「ほ、ほんとに草むらあんじゃん」


「めちゃくちゃ疑ってましたね?! 草むらの方を向く時の表情からしてバレバレでしたよ?! 表情筋の一つひとつが確固たる意志を持って疑ってました!」


 何それ。割と壮大に疑うんだな俺。


「あっそ。いいとこ見つけたんだし、さっさと着替えたら?」


「急に辛辣っ! そんなに早く私の新しいローブ姿、見たいんですか?」


 こいつのポジティブ思考すごいな。

 さっきの言い方は申し訳なかったけど、ローブがなくて寒すぎるからそんなの考えてる余裕なかった。


「はいはい、見たい見たい」


「はーい! それじゃあ行ってき――ちょっとぉっ! 返事が適当すぎやしませんか?!」


 どうでもいいから早く。風邪ひくから。


「ローブなくて寒いから早くしてくださいお願いします」


 丁重にお願い。迫真のお願い。必死のお願い。


「あ、そうでしたね! 本当にすみません!」


 ようやく草むらの後ろに行ってくれたイグナ。


「着替えてる間退屈なので、一緒にゲームしてくれませんか?」


 はぇ? 着替えてる間くらい我慢しろよ。


「すぐ済むだろ」


「そんなこと言ってたらいつまで経ってもローブお返ししませんよ?」


「イグナさんやりましょう。今すぐ」


 これはゲームじゃない。凍死するかしないか、俺の命をかけた聖戦(ゲーム)だ。


 結局ゲームじゃねぇか。


「で、何やるの?」


 かじかむ指先を暖めながら訊く。いやぁローブないと本当厳し――よく考えたらローブと指先関係ないわ。

 他も寒いのでセーフ。何が。


 やべ、脳内セルフツッコミが止まりませんわ。お嬢様風。


「ふっふっふ、それはですね……『しりとり』です!」


「それはいくらなんでもベタすぎないか?!」


「否です。このしりとりは普通のしりとりじゃないんです!」


「その言い方もよくあるやつだな!」


 そう言うとイグナは頬を膨らます。実際見てないけどそんな気がする。


「なんだか私がベタすぎてつまらない人みたいに言いますね」


 いいや逆だよイグナ。俺は今、ツッコミポイントが適度に来てとっても楽しいんだ。


「そんなことはないと思う。それは置いといて、普通のしりとりじゃないところを三十字以内で述べよ」


「ガキですか?!」


 はいガキです。


「そして三十字とか余裕じゃないですか? えーっと、『感動するような一文で繋いでいくところ』です! はい出来た!」


 なるほど。


「十八文字はアウトっっっ! 『以内』って言われたら八割は必要なんだぜ?」


「はぁ?! そんなのありですか?! 『そして』とか『えーっと』とかから数えてオーバーさせようっていう魂胆なら抗議しようと思いましたが、今回はそういうルールをどこかで聞いたことがあった気もするしちゃんと『感動する』から数えてくれたので素直にアウトを認めます!」


 何この子、真面目? でも最初「はぁ?! そんなのありですか?!」から入ってる時点で認めたくなさ丸出し。


「認めるんだ?!」


「私の感情はポリシーには逆らえません!」


 だから最初真っ向から抗議が入ったのね。


「と、とりあえずゲームしない? てかもう着替え終わってない?」


 結構前フリ長引いたけど。


「まだですね。しりとりしたかったのでまだ白ローブ脱いですらいません」


 ニーヴェくん凍死案件。


「よっしゃ、じゃあ俺が氷漬けになる前に着替え終わってもらえるように頑張ってしりとりしよっか?」


「そうですね! それと氷漬けになっても私が炎魔法でかしますよ!」


「待ってくれ! それは凍死しないけど融けて死ぬか融けなくて凍死するかの死の二択を迫られるだけの悪魔の遊びだ!」


「そんなこともないと思いますけど……あ、それじゃあニーヴェさん初めてでわからないと思うので私が先攻でいきますね。『俺はどうなってもいい! 俺もろとも殺せ!』」


 なぜだろう、今俺の頭の中にクエスチョンマークが行列つくってるんだけど。

 (クエスチョンマーク)らが何を待ってるのかは置いといて。


「ごめんイグナの頭の中ではそれはそれは感動のドラマが繰り広げられてると思うんだ。でも俺の頭の中では再生されないんだ。な〜んでだ?」


「知りませんそんなの」


 ですよね。なんか「だ」ばっかり続くと「な〜んでだ?」って訊きたくなるのは人間の本性であると信じる。


 そしてさっきのセリフの発せられる状況が俺にはわからない。


「でもとりあえず、感動する言葉なんでセーフです」


 二文だからアウトだと思われるけどここで終わると死が近づくので我慢。


「『せ』だっけ?」


「そうですよ。まぁニーヴェさんに人を感動させるなんて死んでも無理そうですけどね」


 今まさに死にそうだから頭フル回転させて考えてるんだが。


「思いついた! 『世界を、いや、それを超えた先をも、俺は守りきる!』」


「……………………」


 ちょっと、しょうもなさすぎても黙るのは良くないでしょ。


「イグナ? これはアウト? それともセーフだったりするー?」


「ひっく、せ、セーフです……感動、ズズっ、しますね……」


 えぇぇぇ。涙腺のオートロックぶち壊れてんのか? それとも想像力死ぬほど豊かか? どっちでもいいけどこんなに泣かれると……悪い気はしない。


「『る』ですね。ズズっ、考えます」


 もしかして風邪ひいてるだけとか? 姿が見えてないから明らかな涙声だけで判断したけど――涙声なら泣いてるか。




 そして十分ほど熟考した後。あの、そろそろ本気で寒いんでさっさと降参してもらっても?


「あ、思いつきました! 『ルーキーだって、世界を変えられるんだ!』」


 ねぇ、これ「名言っぽい小並発言しりとり」になってない? まぁ提案した本人がこれでいいならいっか。


「ほーい、『だ』ね」


 だっる。これ答えにしてもいいかも? そんなことしたら一生ローブ返ってこないだろうけど。


「あ」


 なんでパッと思いつくかな。こんなどうでもいい遊びにガチになってるようでなんかやだな。


「『大丈夫だよ、僕がついてる』」


 ちなみにこの時の一人称は気分だよ。なんだか「僕」って言いたい気分だったんだよ。


 そんなことより草むらから泣き声しか聞こえないんだが。


「うぇぇぇん、次は……『る』?! また『る』ですかぁ?!」


 涙も吹き飛ぶ驚きをありがとう。これで俺の十分ほど前に一瞬で考えた作戦も報われる。


 そう、しりとりの正攻法、「る攻め」だよ。


「あっれれ〜? なんでかなぁ? 意識してないのに『る』が勝手に終わりに引っ付いてくるぅ〜」


「そんなことしたって私は負けませんから! えーっと、『る』、『る』…………」




 さらに二十分後。ローブ……返して…………


 葉っぱの擦れ合う音。続いて足音。


 寒くて眠りかけていた俺がはっと目を覚まして前を見ると、黒いローブに包まれたイグナが。


「着替え、終わりました」


「あ、そうなの? じゃあフュールたち探そう。しりとりはイグナの負」


「けてません。ドローです。だって着替えが終わるまで、どちらも降伏もアウトもしてませんから」


 なんだこいつ。俺の「る攻め」に遭って総計三十分も考えた末に、どうせすぐに終わってた着替えを伸ばしに伸ばした挙句何も出てこなくて結局草むらから出てきたっていう感じだろどうせ。


 そしてすっごく気になること発表。


「いやローブパッツパツだな!」


「あ! そう言えばちょっと苦しい気がしてました!」


 そっか、一個上はちょいブカで、これが逆に小さいんだから――イグナ、サイズに合ったのないんだ。そんな人いるんだ。な〜んでだ。

 また自称人間の本性が。


 とりあえず誰かこいつに合うローブを見つけてあげてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここにしりとりを持ってくるその胆力には脱帽ですね。 主人公が紳士で好感触。ややもすれば無味無臭の無感症主人公になってしまいますが、相手が少女とあっては仕方ありませんね。ああなります。 [気…
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