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幸せの王子、恋をする  作者: 雪うさこ
第41代目部長
2/9

変な奴。


小針の通うあおい高等学校は、葱市内でも一番を競う進学高等学校だ。

進学校は男子校と女子校に分かれている。

男子は葱高等学校。

女子は葱女子高等学校。


どこをみても男、男、男……。

進学校であるため、もちろん勉学中心ではあるが、部活動も盛んな学校であった。

特に、文化系部活動はどの部も全国大会への常連だ。


小針が部長を務める音楽部(合唱部)も、例年全国大会への切符を手にしている有名高である。


そんな由緒ある部活の取り纏め役に自分が選ばれた時は本当に驚いたものだ。

歴代の先輩たちは、カリスマ的力を持つタイプが多く、どちらかといえば独裁的だった。

なのに、先代部長が指名したのは彼だったのだ。


当初、同級生や後輩たちからは、「小針では力不足」「白木のほうがいいのではないか」という声が散々上がった。

白木というのはトップテナーの3年生、白木まことである。

彼は185センチの長身で、すらっとした知的タイプ。

見た目だけではない。

部活には真面目に皆勤賞で顔を出すくせに、成績は上位。

教師陣からの信頼も厚く、同級生や後輩の勉強が遅れている子の指導も依頼されることがあるくらいだ。

冷静沈着で聡明。

そんな適任者がいるにもかかわらず、だ。

小針が指名された時の混乱と言ったらなかった。

もうすっかり自信のかけらもなくなりかけた小針だったが、最終的に支えてくれたのは、仲間だった。


『お前しかいないだろう?』


『お前が大変な部分はおれたちがカバーする。お前一人で抱えるなよ』


副部長の佐野や学生指揮長の大橋、それから。


『おれは向いていない。部長が務まるのはお前だけだ。小針』


白木にもそう言われた。

後から聞いた話だと、白木はそもそも勉学メインであるため、3年生になっても主要な役には就けないと顧問にお願いしていたとのことだった。

白木が出来ないから自分に回ってきたのだ。

そう理解していた小針は、やはりどこか卑屈になっている自分がいるということも自覚していた。


元々そうだ。

思い詰めると周りが見えなくなって、みんなから浮いてしまうのだ。

昔から「変なやつ」「変わっているよね」と囁かれてきた。

中学校まで窮屈で仕方がなかった。

みんなと足並みを揃えることがこんなに難しいなんて思ってもみなかったのだ。


だけど、葱高校は違っていた。

そういう変わった人たちの寄せ集めみたいな場所だった。

少しは楽になった。


だけど、それでも「少し」だ。

結局は、変なやつ扱いは依然として継続中。

みんな友達だし、いい人だってわかっているけど。

それでも、自分は変なやつだと見られているという感覚は拭い去ることができないのだった。


いつもありがとうございます。

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