ノック -1
サマーティーの家を離れた体は列車の中。
キシュ達と一緒の旅では乗ることのなかった列車。家を出て数時間した後、通信機を通してミンキュから帝国の検問がなくなった事が伝えられたのだ。はじめてのことだらけで戸惑ったもののなんとか列車に乗り込むことができた。
チケットを持って用意された部屋に向かうと2人用のこじんまりとした部屋があった。2つの椅子が向かい合っていて足を伸ばすと膝から下あたりでぶつかるだろう広さだった。右側の大きな窓には小さな机。
コロッツィオは進行方向の椅子に座り、駅で買ったお菓子と飲み物を机にそそくさと展開した。フウゼツといえば、おどおどとコロッツィオの後に続いて向かいの席にちょこんと座った。
コロッツィオは足を伸ばしカバンに入れていた魔導書をパラパラと開ける。
フウゼツは足は引っ込めて下を見ていた。
沈黙。
列車の汽笛と同時にコロッツィオの我慢の限界が訪れる。
「もーー!!なんなのよあんた!」
「え?え??」
突然のコロッツィオの大きな声に驚く。自分が何か悪いことをしたのかもわからず、小さな声ですみませんと謝るも、それがまたコロッツィオを逆なでする。
「なんであんたはすぐそうやって謝るの?!しかも声も小さくて何言ってるかわかんない!!一緒に旅するんだよ?!出会ったばっかだよ?!もっと話そうとか思わないわけ?!」
コロッツィオがこれほど怒るのも無理はなかった。列車に乗るまでの間コロッツィオはフウゼツに何度も会話をふっかけるも…
はい。そうですね。すみません。
あ。いいです。すみません。
すみません。すみません。すみません。
ばっかりだったのだ。
「え…えっと…すみません…」
またしても出てくるすみませんに怒るのも馬鹿らしくなったコロッツィオはもういい!!
と投げやりの言葉を投げかけ魔導書を読むのに集中することにした。
フウゼツはしんみりして床を見続ける。
ーもっとちゃんと話したいのに…
怒った後に少し後悔をするも、どう切り替えれば良いのかわからず、時間だけが無駄に過ぎていった。始発の列車は夕方あたりに目的地へ着く予定だ。途中、レルエナ帝国で乗り継ぎをする必要があった。
朝5時に出発して11時にレルエナに到着した。次の列車は13時発なので2時間も時間があった。フウゼツの格好はあまり見られない格好で目立つかと思いきや、そこは多国籍国家レルエナで、あまり目立つことはなかった。
駅構内はさすが首都だけあってとても広いモールとなっていた。コロッツィオもフウゼツもあまりにもきらびやかな駅に驚きを隠せないでいた。駅構内の本屋を見つけた。コロッツィオはフウゼツに御構い無しに魔導書を物色。手持ち金で買える範囲で本を買った。そのせいでカフェでランチをするお金がなくなり、テイクアウトできるやすい露店のサンドウィッチを買って食べることとなった。駅構内のベンチで買ったばかりの本を片手にサンドウィッチをほおぼるコロッツィオをポカーンと眺めるフウゼツ。
「何?」
「え…あ…あの…」
「用がないなら見ないで。」
「あ…す…すみません。」
少し寂しそうにサンドウィッチを頬張るフウゼツ。コロッツィオはまたしてもやってしまった…と後悔。
そうこうしていると時間がやってきたので、次の列車に乗り込む。
今度の列車は2人がけの席が向かい合っている。はじめの列車よりもかなりの広さがあった。お互い足がぶつからないよう斜めに座る。
本を読み過ぎて少し疲れたのかコロッツィオの瞼はだんだんとしたへ下がっていく。気がつくと窓一面真っ赤になっていた。
「あ。もう着くんだ…」
「後1時間もすれば着くだろう。」
「そっか…?!!」
寝ぼけてフウゼツと会話をしていたが、会話をしている事実に驚き眼が覚める。よく見ると、フウゼツの前髪の下から覗く瞳が明るい緑色に変わっていた。
「あなたは…」
「いまこの子は寝ているよ。」
突然賢いモードに入ったので驚いて何も言えなくなる。しかし冷静に考えて気づく。
ーこの子
違和感しかない。どういうことなんだろう。
「この子って…?」
「ん?私はこの子を依代としているチェズだよ。」
「はい?」
戸惑うのも無理がない。チェズとは四神の1人だ。すなわち今から戦おうとしているアベドと同格の神様となる。
「え?あなた四神??」
「まぁそうなるね。」
「え?それじゃあなたがいれば別にアベド倒せるんじゃないの?」
「言ってくれるね。私ではアベドは倒せなかった。」
「え?」
「昔やりあってわかったんだ。私の力はアベドの力を増幅させるって。」
不思議そうな顔をするコロッツィオを見て笑うチェズ。
「アベドは炎の力を使う。そして私は風だ。言ってる意味わかるだろ?」
風に炎…
たしかに戦う相手としては相性が悪いのは理解できる。
「わかってくれたようで良かった。ところで…」
申し訳なさそうなチェズの瞳。
何を言われるのか想像ができないコロッツィオ。
「えっと…コロッツィオ。この子を許してやってほしい。」
「??どういうこと?」
「この子は生まれてこのかた、ヒトと接したことがないんだよ…。それで話し方がわからないんだ。」
「え…」
全然理解できなかった。ヒトと話さずにここまで成長できるとは思えなかった。
「ラファノ大陸について君はどれくらい知ってる?」
「…閉鎖的な大陸?」
考えてみる。
けれども全くわからなかった。父親からはそうとしか教えられなかった。
「まぁ大体がそうだね。ラファノ大陸は閉鎖的だ。それに人種間の隔たりも強い。」
そうしてチェズは淡々とラファノ大陸について教えてくれた。
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