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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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北の大地-2


大きな門が開かれる。

目の前に広がるのは星々の光が輝く暗い夜空と辺り一面に広がる白銀の世界。

さっきまで居た場所が常春だとすればここは永遠に続く冬のようだ。

用意された服を着込まなければ、寒くて死んでしまっただろう。神殿はそう遠くはない。

用意された馬車に乗り込み向かう。


馬車の中は暖かく、心地いい。

薄暗い中気をつけて座り込む。4人乗り込んでも少し余裕があるくらいだ。グビドの肩にもたれて眠るキシュ。そんなキシュに何もしてやれないサマーティーはただ俯くことしかできなかった。


- 自分は何ができるんだろうか…


『過去にとらわれてはいけない。』


メグの言葉が頭によぎる。


そう言われても困る。

自分にとってシャザンヌは特別だった。

初恋の人。

彼女ほど完璧な女はいない。

幼い頃に初めて出会い恋をした。

何度も父にねだって遊びに連れて行ってもらった。

でも突然死んだ。

亡骸もわからないほど焼けて死んでしまった。

そう聞いていた。


信じれるわけなかった。

生きていると信じていた。


彼女を胸に生きていた…。歳を重ねるごとに出会う女達に興味が湧かない…みんなシャザンヌよりもはるかに劣っている。体を重ねても愛など生まれなかった。それほどにも自分の中でシャザンヌは特別だった。


けれど…


見つめる先にいる眠るキシュ。


- そらそうだよな…


心で笑った。

キシュはシャザンヌの妹マリアンヌ。

似ていて当然だった。

キシュにシャザンヌを重ねていた。

最低すぎる。けれど認めざをえない…。


これが事実。


こんな自分が果たしてキシュを助けれるとも思えなかった…。むしろジョージの方が適任なんじゃないか…そんなことすら考えるようになった。

けれど時は残酷にも進んで行き、答えのない状態で目的地へ到着する。


氷結の神殿。


見上げてようやく見えるその先端は、はるか遠い。そんな氷山をくり抜き作られたその神殿の入り口には特に装飾もないただの穴であった。

中へ入っても同じことで、氷の壁と床が続いた。けれど、1つの扉をあけて景色は一変する。美しい彫刻が施された氷柱が並び立つ広い廊下。それに今までの寒さは一体どこへいったのかと思うほどに適温な空間。


憂鬱な気分も吹っ飛ぶほどの驚きがサマーティーに起こる。一人でソワソワしていたが、前を歩くイザナとグビドは冷静だ。

特にグビドの顔は緊張している。

そんなグビドを見ていると浮かれている自分が馬鹿らしかった。

そう思うとまた憂鬱な気持ちが襲ってくるのだ。


長い廊下を歩いた先に1つの扉。

イザナが杖を振り扉が開かれる。その先にはただ広い氷の空間が広がり、ポツリとたつ祭壇に祈る少女がいた。

少女は見た目10代で、全体的に白い。薄い青色の緩やかなうねりのある髪は耳のあたりで2つに束ねられている。不思議なことに束ねられた髪の先は美しくまっすぐだった。


少女は振り向いてお辞儀をする。


「お待ちしていました。イザナ様」

「イコワ様。話は通っているかしら?」

「はい。メーテ様も了承してくださっています。今すぐ始めれます。」


その言葉を聴き、イザナは深く一礼する


「ありがとうございます。では早速準備させていただきます。…あと確認したいことがあります。」

「それに関してはこの術が終わってからだとメーテ様はおっしゃっています。」

「…わかりました。」

「では…」


イコワは杖を持ち瞳を開けると地下へと続く扉が床から現れる。


するとグビドにキシュを床に下ろすよう促すイコワ。グビドは眠るキシュを床へ優しく下ろすとイコワの呪文とともにキシュは光の中へと消えてゆく。グビドの大きな手がサマーティーの肩に乗せられた。


「俺の役目はこれで終いだ…。後は頼むぞ」


切実な言葉に何も返事ができないでいた。

沈黙が辺りを包む。グビドはこれ以上何も言わなかった。罵声や喝を入れられるかと思っていたが、何も無いことの方が嫌だと実感した。

扉が開き、イザナとイコワが地下へ進む。

その後をサマーティーが追いかける。


氷の壁が広がる。


不思議な感覚だ。

両手を広げるとぴったりと壁にくっつく。けれどもそこに壁があるようには感じられない。氷だからだろうか?壁など無くはるか先まで続いているように感じられた。


不思議な空間にいるからなのだろうか、サマーティーを不安な気持ちが襲い出す。


「もう引き返せないわ…。」

「え…」


全てを見透かしているように前を歩くイザナが静かに伝える。その言葉に初めこそ驚いたものの、もうだめなのかと観念せざるをえなかった。


どれだけかの時間階段を降り、下に続くものがなくなった。そこで自分がようやく儀式の間に到着したことを悟る。


儀式の間といってもそんな形式的な何かがあるわけでもない。広く丸い氷の台とそれを囲うように小さな台座があるだけ。


広い台には大きな円陣が描かれており、キシュがいた。キシュは円陣の丁度中心の端あたりに頭があり天井に顔を向けている。そしてそこから斜めに置かれていた。


イコワはキシュの頭のそばにある小さな台座に座り込む。そしてイザナは、その横へ座り込んだ。

イザナがキシュの横に横たわれと言うので従った。キシュの頭に自分の頭をくっつけ、丁度円の中に二等辺三角形を作るように寝転んだ。

準備が整い、深い深呼吸をし、ずっと閉じられた瞳が開けられ、美しい水色の瞳がのぞいた。イコワが口を開ける。


「男よ…覚悟は良いか?お前の意識を一時的に女の中へ入れる。」

「…はい。」

「女の魂は全てを拒絶し、全てから逃げている。そんな中お前は女にとって外敵他ならない。」

「…」

「すなわち、お前を排除する動きが伴う。しかしその動きに傷をつけるな。」

「?それは…?」


イザナがイコワの代わりに説明する。


「キシュの心を傷つけると言うことよ…。サマーティー。あなたはあらゆる攻撃も防戦で応じなければいけないの。」

「はは…なかなかハードだ…」

「笑ってはいれない。もし、心からの攻撃を受ければお前の精神が傷つき最悪死に至る。」


本当に笑っていられなかった。命がけの行動。

やめたい気持ちがいっぱいだ。今すぐに立ち上がりたい気持ちでいっぱいだった。けれどなぜか体は何も動かない。


「…では始める。」


そしてイコワの呪文演唱が始まり、円陣が光り出す。遠のいて行く意識。次第に睡魔がサマーティーを襲った。







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