彼女の目的-1
「アベドはただ、王の復活だけを望み行動している。王はこの星にいるヒトを全て排除することを命じ眠りについた。」
「…お前一体なんのこと言ってるんだ…王?誰だよそれ?」
聞き慣れない単語。
的を得ない言葉。
その全てがサマーティーを苛立たせる。
サマーティーだけではない。
その場にいたほとんどがさっぱり話についていくことができないでいた。
イザナとグビドを除いては。
信じられない気持ちで仕方のないイザナの口が開く。
「ヘーベルゼの神々の頂点に立つ双子神の片割れの女神…?」
その言葉にマリーとコロッツィオが顔を合わせる。
お互い信じられないように眉間にシワが1つ。
恐る恐るコロッツィオの口が開く。
「もしかして…ベルゼノン神話…??」
小さくイザナの首が縦に動く。
「待てよおい…。ベルゼノン神話は暁の時代に消えた神話だろ?…あれが本当だったってのか?」
「あれは大体が事実。」
グビドは信じられないでいた。
小さな頃に聞いたおとぎ話が真実だとは到底信じることができない。それを当たり前のように肯定するフウゼツの言葉など全く信用できないでいた。けれどもイザナの反応だけは違う。深く考え込み唇を噛むその姿は焦っている時に見せるものだ。
おとぎ話を真実だと信用させるのに充分だった。
「ベルゼノン神話って…4神が自身に似せて〜私たちを作ったってやつ〜?」
「ええ。そうよ。」
イザナの返答に困惑するコロッツィオとマリー。
「けど…ベルゼノン神話って戦いが終わって平和が訪れたはずじゃないの?」
「私たちソーサーに伝わるベルゼノン神話は違う…。最後はこうよ…《これは束の間の安らぎ。必ずまた戦いは始まるであろう》」
神話…戦い。
ふとサマーティーの頭によぎる狂人の行動。
「…《鍛えよ。許すな。母なるアベドの言葉を忘れるな》…」
「あの戦いはもう起きないだろう…けれどそれ以上のことが起きるか起きないか…」
「どういうことだ?」
ジョージがすぐさま突っ込む
「時が経ち過ぎている。これに関してはどう転ぶか私でもわからない。ただ言えるのはもう回りくどいやり方はしないということだ。やるのなら王は本気になられるはず…。アベドをマクリア・メソンへ行かせてはならない。」
「マクリア・メソン???」
「現在のトグル海の海底に沈ん施設だ。アベド1人ではあそこへは行けない。トゥルナの力かエンテの力が必要になる。」
「どうして〜??アベドは神さまなのに行けないの〜??」
「アベドの専門外だからだ。トゥルナの水の力か、エンテの技術力なしではアベドはセントラルへは行けない。」
訳がわからないままチェズは話す。それはなにも質問するなという威圧に近い。
「アベドはエンテの力を借りて動くはずだ。」
「それじゃ!その前にアベドを倒しちゃえば!!」
「まぁ。そうなるが、この状態では無理だ…」
コロッツィオの淡い願いはチェズの一言で一気に現実に引き戻された。
この状態どう見ても最悪だ…
「アベドより先にエンテを呼び覚まし、そのあとで打つ。それが最善策だろう。」
「そんな簡単に言っているが、そのエンテの場所お前わかっているのか?」
ジョージの鋭いツッコミ。
チェズは申し訳なさそう。
「わからない。」
ため息がジョージから溢れる。
「探しようがないじゃないか…」
「恵の…森?」
ぼそりとコロッツィオの声が漏れる。
みんなが注目する。
「ソリティアの聖地…?けどコロッツィオ〜…あそこには立ち寄れないはずだよ〜?」
マリーが不安げに答える。
「どう言うことだ?」
ジョージの問いかけにコロッツィオが答える。
「恵の森は結界で守られてるの。結界は二つの鍵を合わせない限り解かれることはない…鍵の1つは父さんが持ってる…けれどもう一つは…」
その先がわからないで行き詰まると、次に口を開けたのはイザナだ。
「ザルアよ。もう一つはザルアが持っています。父上がお渡しになっていた…。」
「…ザルアと一言で言うのは楽だが、場所がわからない…」
「楽だろ…」
たくさんのヒントが飛び交っていても結局具体的ではなかった。不安だけが場を包むそんな重たい空気を断ち切るグビドの軽い言葉。
みんなは言葉の意味がわからなかった。
確かにザルアは他の民族とは違い各国に散らばってはいない。オーランソの北東にある土地に複数の国を作り暮らしている。それに閉鎖的で情報が開示されることもそうないのだ。特定など容易いとは到底思えなかった。
けれどもグビドは全てを知っているかのようにスラスラとさもみてきたかのように語る。
「ザルア諸国はいつも戦いが絶えなかった。その戦いの目的は鍵だ。あいつらは鍵の所有権をかけいつも戦っていた…今はどうだ?大国ポリアンが出来てから国同士の戦いは止まったよな?意味わかるか?」
「…それじゃもう一つはポリアンに?…けど所詮ただの鍵だけで戦いは起こらないんじゃ?」
サマーティーの疑問は最もだ、たかが結界を守るだけの鍵に価値などないと誰もが思う。その問いにはコロッツィオが答えてくれた。
「鍵からは恵の力を引き出すことができるの。覚えてる?私たちの村があった森。あれはねぇさんの力と私の力で作ったって言ったけど、魔力のほとんどは鍵の力を借りてたの。」
「巨大な魔力が手に入るなら、喉から手が出るほど欲しいな…」
「ってことはポリアンが鍵を所有してるってことか…」
そう言いながら、サマーティーはマリーを見つめる。なんのことやらわからないマリー。
「な…なに〜??」
「村を襲った鳥覚えてるか?」
「へ?…う…うん〜。」
「見間違いかと思ってたけど、あの鳥の首輪にポリアンの国印があった…」
驚きを隠せないマリー。
「この先のことを決めよう。…けどその前に…ひとまず家に帰っていいか?親父家に連れて帰らないと…」




