待つ者・進む者-2
ベルゾナッドの祠までの道のりは遠い。
ベルゾナクは山々に囲まれた位置にある。祠は街を囲む山の山間部にある。道は無いに等しく険しい道のりとなる。登山用のマグールを使えば2時間で到着できる。イザナの魔法を使えば一瞬で着くだろうが、何が起こるかわからない。2人はマグールにまたがり祠へ向かった。
揺れ動くマグール。それをうまく操るゼルベルダ。
イザナのマグールはイザナをいたわり、揺れを極力抑えているように見えた。
1時間ぶっ通しで移動したところに、ちょうどマーグルの餌になる果樹が育っている良い休憩場を見つけ、そこで小休憩をとることにした。
マグールに水を与えた後、2人も水を口に含めた。
「ある程度の事は聞きましたが…レルエナがシャザンヌを目覚めさせたの?到底信じられないのだけど…」
「あなたと同じソーサーがいたようだ…」
「ソーサーが???」
「イサラというらしい。」
「イサラですって??!その子はつい最近死んでいるはずよ?」
「レルエナ第二皇子に助けられたそうだ…。」
「巫女の言い分と違うわね…」
「その子のことは知っているのか?」
「知ってるもくそも、少し遠い親族よ。次の巫女候補だったのよ。…まさかイサラがレルエナに…」
少しばかり考えこむが、すぐに次の質問が口から飛び出る。
「それで…今あの子は?」
「さぁ?そこまでは聞いていない…。戻ったら小さなパソナの子に聞くといい。」
「…そうね。そうするわ。」
少しの間が空きぼそりとイザナが呟く。
「けれどよかった…。キシュとシャザンヌが鉢合わせにならなくて…」
「あぁ…けど時間の問題だぞ。キシュの封印は弱まっている…。」
「そのようね…。それもきっとシャザンヌの封印が解けてしまったからでしょう…。私たちができることはとにかくあの子を守ることだけ…」
「あぁ。」
ゼルベルダはマーグルたちの腹が満たされたことを確認した。
「さぁ行こう。早く終わらせてしまおう」
2人はマグールにまたがり駆け出す。
帝国ではシャザンヌがシュアトルに連絡を入れる。
背筋に悪寒が走る。
言葉では言い表せない恐怖がキシュを襲う。
頭は今までとは比べ物にならないほど割れそうに痛む。あまりの痛みと感情に頭を抱えうずくまるしかなかった。
鼓動が早まる。
みんなが何か言ってる。
聞こえない。
サマーティーの指の感触も感じない。
いけない…。ダメだダメだダメだ。
ゼルベルダとイザナが危険だ。
なんで??
わからない…!!行かなくては!行かなくては!!
「え?」
キシュの消え入りそうな声にサマーティーが反応する。耳を口元に近づける。
「…いく…行かなきゃ…」
荒い息が混じったその言葉に驚く
「こんな状態で行けるはずない!今は親父達にまかせよう!な…
「離して!!!!!!」
全力で払われるサマーティーの手。そして今までに聞いたこともないような怒声。
少しの間、沈黙が続く。
コロッツィオが心配して肩にてを当てようとしたとき
キシュの手のひらがそれを拒む。
「いらない」
深呼吸をして、息を整える。
頭はまだ痛い。ゆっくりと顔をあげる。
「…キシュ…」
暑くないのに額に汗がでている。
眉間によるしわ。
明らかにおかしい。
「行かなきゃ…行かないと…」
ゆっくりと引きずりにながら足を動かす。
「キシュ!!」
キシュの手首を掴む。
どれだけ払いのけようとしても、払えない。
サマーティーの顔からはいつもの笑顔は消え、怒りに覆われていた。
けれどもそんなこと知ったこっちゃない。
キシュはまた叫んだ。
離せ!ダメだ!その繰り返し。
「離してあげなさい…」
静かにそして力強い声が響いた。振り向いた先にはメグがいた。
「母さん!!」
ゆっくり歩き、メグはキシュに飲み物を飲むよう促す。渡されたグラスの液体を飲む。苦味があったが、すぐに頭痛が引いていく。
「落ち着いた?」
「…はい…」
「あなたがそう感じたのなら行きなさい…。きっともうどうすることもできない」
「母さん…」
サマーティーは心配そうにメグに目をやる。
メグは仕方がないのと目で語る。
「みんなはここで待ってて。私一人で行く。」
「なに水臭いこと言ってんの!!私も行くわ!」
コロッツィオはキシュの首に腕を回して笑ってる。
「私も〜〜!!!」
そして同時にマリーが抱きつく。
キシュは嬉しかった。けれども断らなければいけない。
「ダメ…。死ぬかもしれない…危険な目には合わせれない!」
「なーに言ってんだ!」
両手を大きなサマーティーの手が包む
「それなら尚更、俺らがいてないとダメじゃねーか。キシュを危険な目には合わせない。」
「サマーティー…」
「そうだよ!そうだよ!!」
「私がいなきゃ誰があんたの傷治すのよ〜?」
マリーとコロッツィオも同調する。
「俺も行く。」
意外な声に驚く。
ジョージは少し照れているように見えた。
「グビドに早く話がしたいからな…」
「みんなが行くならあたしも行くわ。何かサポートできるかもしれないし」
「みんな…」
呆れと感謝の気持ちが半々。
なんとも言えない気持ちだった。けれどもやっぱりみんなが居てくれると安心する自分がいる。キシュはそんな風に感じる自分に驚く。今までそんな感情は薄っぺらくて役に立たないものだと思っていた。
けれど…けれど
こんなにも暖かく、気持ちが安定する。
これが『仲間』なんだ。
キシュ達はそれぞれ旅の支度をする。
キシュの側にイースがアリナと共にやってきた。
「キシュさんこれを」
イースの首にかけていた美しい透明の宝石があしらわれたネックレスを外し、キシュに手渡す。
「あなたをきっと守ってくれます。」
「ありがとう。ちゃんと返すわ。」
キシュの決意はしっかり受け取ったと言わんばかりにイースは微笑み返す
「えぇ。待っています。」
支度ができ玄関ホールに集合する。扉を開き、これから待ち起こる恐怖へ立ち向かう。
けれども決して気後れしない。
絶対戻る。
「それじゃ行ってきます!」




