探り合い-5
長い廊下を抜け、妃達の住まう塔へ向かう。
シャザンヌは今この最上階で生活している。部屋につき、ノックをすると部屋に入るよう促される。
扉を開けるとそこには生活するのに必要最低限のものしか置かれていない殺風景が広がっている。シュアトルは少し驚く。今まで、この塔に住む住人達の部屋はきらびやかでとても優しい光と、香りで包まれていたから。
しかし、彼女の部屋からはなにも感じなかった。
部屋の片隅にある窓辺に腰を下ろし、外を眺めるシャザンヌの背中。
「およびでしょうか義理姉上?」
近くに来るように指示され、シュアトルはシャザンヌの近くへと歩み寄る。窓の外は橙が広がり、風がそよぐ。
「実験がようやく落ち着いたから石を取りに行こうと思うの。」
「?!何を仰っているのですか…?」
唐突すぎて頭が追いつかない。
シャザンヌは体をシュアトルの方へ向ける。
ようやく見えたその瞳は死んでいる。
「石の持ち逃げもあったのだし、貴方達を信用できない。それにここの生活も飽きてきたし
「しかし…義理姉上に何かあって…」
シャザンヌは言葉を遮り吹き出して笑った。
顔を歪め死んだ魚の笑い声は狂気に満ちている。
固まるシュアトルは悪寒に支配される。
ゆっくりと近づくシャザンヌの足音。
差し出された人差し指がシュアトルの顎を持ち上げる。言葉が出ない。
「体も鈍ってきちゃってちょっと動かしたいの。それに私に何かある訳ない。」
にっと口角が浮いに上がる。すっと指は顎から離れる。獲物を逃さないその眼差し。
「でも移動が面倒なの。あなた船たくさん持ってるでしょ?だから連れてって欲しいの。」
シュアトルはチャンスを感じ、行くと即答した。
この女の力は検査の最後しか見れていなかった。
「話は早いわね。貴方の持つ船で、ベルゾナドへはどれくらいかかる?」
「ベルゾナッド??」
「宝珠は今ベルゾナド山に向かっている。」
笑うシャザンヌ。
なぜそこまで言い切れるのか理解ができない。
「…なぜわかるのです?」
「これも私の力なの。これ以上の質問は無しよ。それで、どれくらいかかるの?」
「…およそ3時間くらい…小型のものであれば2時間と少しで着くかと。」
「そう。じゃ小型のもので向かいましょう。2時間後に迎えに来てくれる?あぁそう…来るのは貴方1人よ。私は大勢は好かないの。」
「わかりました。」
シュアトルはシャザンヌの部屋をでて、初めて息ができた感覚になった。あそこはまるで水の中だ。息がつまる。言いようのない威圧感。あの女はいったい何者なんだ?
…どこか王家のものだろうか?なんだ?あの絶対的な力……まるで……
足取りは遅い。よたよたと頭を抱えて歩く。
シュアトルはふと立ち止まった。そこは肖像画の間。
歴代のレルエナ帝国の帝王と妻の絵が飾られている。なにを思ったのか、ふと歩き出す。奥へ行けば行くほど古い肖像画達。そして一番奥に飾られている1つの絵の前で立ち止まる。そう。遥か昔にいたという暁の女帝。レルナ。昔話でしかしらないが、実在した女帝。なぜかシャザンヌとかぶった。まじまじとシュアトルは絵を見ていると、ふと思った。紫の瞳…シャザンヌと同じ瞳。違いは生きてるか死んでるか…絵の中の女帝は死んでいるのに生きているようだ。
ーそれがどうしたというのだ。
鼻で笑い、シュアトルは小型機の整備へ向かう。
考えなければ行けないことがありすぎる。
なぜここまで複雑になった?
元凶はなんだった?
俺たちの目的はクロノアの反旗を潰すことだ…
そのために力を欲した。
そうだ。それであの女を見つけた…。
シュアトルの心に迷いが渦巻く。
クロノアには現在の軍力では勝てないのは明白。
だからこそあの女を使い、クロノアを叩くのだ。
あの女を利用して。
利用できるのか?あれを??
瞳をつむ利思い浮かべる家族の顔。
そして仲間達の顔。
ー俺には守れるんだろうか?
危険な道を歩ませている無月達…
彼らを巻き込ませていいのか不安になってきた…
これ以上巻き込ませたくはない…。
死んでしまった如月。
そして居場所をなくした卯月。
葉月に任せていた医療棟の研究の監視…そろそろ身を引かせた方がいいのかもしれない。
霜月・弥生に関しては未だに病棟から帰ってきていない…。
ここらが潮時なのかもしれない…




