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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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探り合い-4


「失礼します。」


部屋に入ってきたのは、神無月だ。

ペアーをくませていた文月の姿がない。


「文月はどうした?」

「少し眠ってもらっています。」

「…卯月のこと…何かわかったか?」


シュアトルは席を立ち、奥の部屋へと神無月を連れ出す。そこは油の匂いが染み付いた小汚いラボが広がっていて皇子の部屋とは思えない。シュアトルは第二皇子といえど、第二夫人の子供。その時点で王位継承権は無いに等しい。このレルエナ帝国の次期王は、第一夫人の子供であるティアトル。


無月のリーダー。そして、メカニッシャンとしての顔を持つ。よくシュアトルはラボで、武器などの製作をしている。彼の作る武器はどれも性能が良く、軍部に採用される。


控えめで有能な皇子。それがシュアトル。


みんなは彼こそが次期国王になることを望む。

ティアトルはナルシストで周りの空気を読まないそぶりを見せている。とても我儘で手がつけられない。


シュアトルが製作用テーブルに腰掛け、その横に霜月がたった。


「はい。卯月と接触できました。シュアトル様の考え通り、イサラ様を殺害したのは卯月ではありません。彼女からは動揺などを感じませんでした…」

「…イサラを殺したのは確実にシャザンヌだろう。…概ね、2人が持ち帰った石を奪うつもりだったんだろう…。」

「…私もそうかと思います…。イサラ様は卯月と石を守るため、逃したと思われます。」

「卯月はどうだった?」

「まぁ…卯月自体は変わりないように思えました…」


なんともはっきりしない返答を神無月からされるのはとても珍しい。


「どうした?なんでも話せ。」

「いえ…。卯月はどうやら民間人に助けられたようなのですが…」

「その者達が普通ではないということか?どういうことだ?」

「まず、一緒に居た者たちですが、1人はドラグーンの者でした。私が把握している限り、あれは国防軍の者です。」

「国防軍??…他には?」

「フィルディアの男と、その家族たちです。ただ、その家族…がおかしいのです…」

「?フィルディアの家族?よくあることだろう??」

「はい…。そうなんです…。ちゃんと我らも把握できている者たちで、ローグンヘルム家の者たちです…」

「ローグンヘルム?あそこはベルゾナッド一帯を管理している領主で確か、息子は我が国の考古学者じゃなかったか?」

「はい。サマーティー・ローグンヘルムは飛び級も飛び級で王立大学に編入主席卒し、8年前に突如やめた考古学者です。そのサマーティーが卯月とドラグーンの者たちと共に戦っていました…。」


頭が混乱する。

考古学者とドラグーンの兵士。

どこに接点がある?考えれば考えるほど絡まる。


「…訳がわからん…」

「えぇ…ただ、私が驚いたのは両親の方です…。」

「両親??」

「はい…。彼らどう考えても一般人とは思えませんでした…気を殺し、私たちの闘いを観察していたような…いや…どちらかというと品定めをしているような感じでした。」

「なぜ彼らがそのようなことを?」

「もうしわけありません…私にもそれはわかりませんでした…。」



ローグンヘルム家は代々ベルゾナッドを守る保守派貴族の家。先代の領主の遠縁の親類が家督を継いでいる。特に際立ったものもなく、中の下である家。

シュアトルも特に気にしたことがなかった。

けどそんな彼らを怪しいと神無月は言う。

如月の次に魔力が強い神無月。彼が言うことには重みがある。


ー怪しい奴がまた増えた。


前々から石を奪い持っていた連中。

奴らはドラグーンで消息を絶っている…。だからこそ、ドラグーンから他国へ繋がる場所に無月のメンバーを配置させた。


ローグンヘルム家。

そこの息子がドラグーンの軍の者と共にミンキュといた…。両親は何かを企んでいる可能性がある。


ドラグーン…。ミンキュ…。


なぜミンキュをそこに逃がした…イサラ…。


ドラグーン


ローグンヘルム家とドラグーン?

つながりを感じない…


…怪しい一行はたしか、霜月と弥生とやりあった報告を受けた…。イサラとミンキュの最後の任務は?

霜月と弥生のサポートだったはずだ…。


「クーゼ…」

「はい。」


長い沈黙が破られる


「弥生と霜月はたしか、例の一向と、やりあったな…たしか場所はベルゾナッド領・ハシュベル渓谷…」

「……!」

「そうか…。イサラは例の一向にミンキュを預けたのか…。」


シュアトルは重い溜息と共にイサラを思った。


ー本当によくできたやつだ…。


たしかに今一番安全な場所かもしれない。


しかし問題は解決したわけではない。結局、宝珠はミンキュが持っている事に変わりはない。石をどうにかこちらのものにすれば、ミンキュの命はどうでもいいはずだ…。


ーさてどうすべきか…


シュアトルが悩んでいた時、通信音が響いた。シュアトルは腕につけている装置ノボタンを押し、首にかけていたイヤホンを耳に当てる。


「なんだ?」


機械音が答える


「シャザンヌ様がお部屋に来るようとのことです。」


溜息が溢れる。心配そうな神無月。


「どうされましたか?」

「シャザンヌからの呼び出しだ…」


神無月の顔が曇る


「珍しいですね…。」

「あぁ。ずっと研究所にこもって居たのにな。」


神無月の顔が歪む。

着々と進む生物兵器の研究はシャザンヌが参加したことで驚異的なスピードで成果が出ている。

罪人達や貧民を買い、人道から外れた実験を毎日繰り返している。

誰も何も言わない。


それもそのはず。今のレルエナの軍事力は弱い。何が何でも強者の地位は守る必要があった。

シュアトルの父、現国王が守りたいものは国民の前に国のメンツなのだろう。シュアトルに嫌気がさす。


実験には2つの課題があった。

1つは能力の引き出し。

1つは思考のコントロール。


思考のコントロールは以前から研究されており、ある程度クリアされていたが、能力を引き出す研究が困難極まりなかった。一時的な能力引き上げはできてもそれは兵器にはならない。ヒトを超えた新しい物を作る必要があったのだ。ミリョウ無き医療・研究部隊にそれほどのことができるはずがないのをシュアトルは理解していた。全てはシャザンヌ1人で進めているといっても過言ではなかったのだ。


「あの女が来てからというもの…悪いことばかり続きますね…。」

「あぁ…だが、あまり言うな…。もはや俺ですらどうこうできなくなってしまったんだから…」


シュアトルは神無月と共に部屋を出る。そして、2人は背を向けそれぞれの場所へと向かった。



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