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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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探り合い-3


戦いは突然終わる。呆然と立つ少女を残して。

先に動いたのはジョージ。


「…わかってるな。」


ミンキュは一呼吸おき振り向く。もう戻ることはできない。どうにでもなれ。半ばやけくそだった。


「お茶が用意できたわよ〜!」


メグの呑気な声が聞こえる。

間が抜けて一同顔を見合わせ笑みがこぼれる。


「ひとまず、家に入ろう。」


サマーティーが苦い笑顔で促す。3人を迎えるメグはキシュ達のいる部屋へと案内する。そこには意識の戻った3人とゼルベルダが迎えてくれた。マリーとコロッツィオは休養を取ったことで、もう元どおりだ。キシュはあまり無理はできないが少しは歩けるようにはなった。


「さっきの何?ものすごい音してたけど。」

「あれ〜??その子だれ〜??」


サマーティーとジョージの後ろにいる女の子を指差すマリー。ジョージがミンキュをこずる。


「っー。まぁ。3人が寝てる間に色々あったわけよ。」


サマーティーが呑気にティーカップをとり、みんなに勧める。皆がカップをうけとり、口に含める。


ぶっ!!!


思っていた味と違い、皆咳き込む。ハーブが効き過ぎて苦い。用意されているシュガーカップに手が伸びる。サマーティはみんなの反応に驚くが、逆にみんながサマーティの反応に驚いている。けれども体のダルさが取れてスッキリする。


「改めて…私はレルエナ帝国暗部のコード卯月です。気がついたらここに居た…。」

「本名は?まさか教え無いつもり?」


ミンキュは渋るが、キシュの言わんとしようことは理解できる。受け止めてもらうには隠し事は無しだ。嫌々名乗る。けどその声はみんなには届かない。


「え?」

「ミンキュ!ミンキュ・ラドルフです!!」


思っていた通りの可愛らしい名前に皆が和む。


「あたしも名乗ったんだから、あなた達も名前教えなさいよ!!!」


恥ずかしさのあまり素がでる。

いつもクールを装って居ても、この名前と容姿が邪魔をする。


「改めて…キシュよ。初めましてじゃないでしょ?ミンキュ。」


みんながギョッとする。


「え??あたしたち〜、ミンキュとは初めて…だよね??」


ミンキュはため息交じりで笑って肯定した。


「お面被ってたもんね。声聞いてやっと気付いたわよ。」


マリー・コロッツィオ・サマーティーも気がつく。

3人の驚きの声が響きあう。そして場の雰囲気はガラリと変わり明るくなる。


「まさか!ドビッシーの?!」

「そうだよ。あの時は見逃してくれてありがとう。」


苦虫を噛むようにコロッツィオに答える


「だから、俺の顔見て驚いたのか…」

「うん。想定外すぎて…。」

「そうだったのか…。あ!俺はサマーティー。よろしくな。」

「あたしはマリーだよ〜!!」

「あたしは妹のコロッツィオよ!」


ブンブンと勢いよく手が揺れる。

姉妹という言葉に驚く。


「マリーとコロッツィオは姉妹??でも…」

「まぁまぁ、色々と訳ありなのよ」


コロッツィオが笑って答えた。


「俺は初めましてだな。ジョージだ。」

「初めまして。貴方とは初めて会うけど、噂は届いてるよ。ドラグーンのエースさん」

「ところで、何でミンキュはここにいるんだ?しかもなんだったんだあの傷?」


ジョージがミンキュに尋ねる。その言葉にキシュ・コロッツィオ・マリーが眉をひそめる。


「傷?」

「ミンキュちゃんの傷はミリョウ先生の処置と我が家直伝の回復剤でスピード完治したのよ。」

「あ…ありがとうございます…。」


ミンキュは部屋にいたメグの言葉に驚いた。

昨日の痛みはわかっている。回復剤であそこまで回復するというのは到底ミンキュには理解できなかった。


「傷って…。!!もしかして、この間の戦い助けてくれたのミンキュ?!」

「え〜??ど〜ういうこと〜??」

「こないだの戦いでマリーとコロッツィオがぶっ倒れた後。あの二人どえらい魔法繰り出したんだよ…。俺らもう少しでその魔法に取り込まれそうになったんだけど、すんでのところで助けられたんだ…」


みんなは驚いた。まさか…そんなこと有り得ない。敵を普通助けるか?


「それと傷は別…。なんて説明すればいいのか…。身内でもめたってのが正解かな…」

「それとって…ことは…」

「あの時私たちを助けたてくれたのはやっぱりミンキュだったってことね。...ありがとう。」

「いや。そんな…。あたしにはドビッシーでの借りがあったから返しただけだよ…。そもそも今回の任務はあんた達の命とかどうでも良かった…あたし達はこれさえ手に入ればよかったんだ…」

「!」


ポケットからのびた小さな手の平には真っ赤な赤い石が輝いている。


「よかった…」


安堵のキシュに渡された石。


「なぜ君達レルエナはこの石を狙ったんだ?」


ゼルベルダがいつになく真剣な面持ちで質問する。

場の空気が一気に引き締まる。


「上からの命れ…」


その言葉を言い切る前に違和感を感じた。


違う。


シュアトル様じゃない。それにティアトル様、国王様でもない…。あの女が目覚めて、必要性が消えたはずだった。それなのにずっと命令されてる…。確信的に理解できる。


「あの女だ…」


そうだ。

あいつだ。

あの女確かにあの石を欲しがっていた…。

あの女以外に石を欲しがる理由が思いつかない。


「あの女?」


ゼルベルダは眉をひそめる。


「ウィザルド地区であたし達の仲間がみ…」

「ウィザルド?!」


ミンキュの言葉を遮るゼルベルダの声は鬼気迫り、場の空気をより一層重いものへと変える。


「ミンキュちゃん…。その女の子…普通の子…よね?」


藁にもすがるようなメグの質問。

ミンキュは何故か申し訳ない気持ちでいっぱいに答える。


「私は直接は知らなくて…でも強い封印をされてたって…」

「何故封印を解いた?!…いや!そもそも何故封印がパソナの君達に解けたんだ?!」


ゼルベルダが迫る。その視線は今までに感じたことの無い威圧だった。


「あ…あたし達『無月』は種族関係なくメンバーが集められてる。だから…」


「さっきの仲間の子はやはり…サーなのね…それでも…サーでもあの封印は解けないはずよ…」


メグが疑問を返す


「サー??確かにクーゼは私達の中でも高い魔力を誇ってる。でも封印を解いたのはクーゼじゃない…。イサラ…」

「イサラ?…待て待て待て…まさかレルエナはソーサーを…」


その言葉を聞いて皆が驚く。


「ソーサー??イサラは私が無月に入る前からいた。確か、イサラとクーゼが嵐で海に流されていたところを助けたって…聞いてます。」


重い溜息が溢れる


「その子は確実にソーサーだ…そしてクーゼと呼ばれる青年はその子に付き人のサーだ…。…ソーサーがいるなら納得だ…けどおかしいだろ?!危険だって感知できたはずだ!それなのに何故封印を解いた??!」

「もちろんイサラも反対しました。…けれど上からの命令です。ご存知かとは思いますがレルエナの影響力はここ数年弱まりつつある…最近は軍力回復をはかるためより強い力を求めていました。そもそも私たちがウィザルドにいたのもそれが理由です。」

「…確かに宝珠の封印は弱まっていて力が漏れていた…。君達が感知できたのも理解できる…。」

「封印状態でもあの女から発される強い魔力に上層部は魅了されました。…やらざるを得なかったんです…私たちの主人であるシュアトル様を守るには!!…それに、封印が解けたのは調査の段階だって聞いてる…」

「シュアトル皇子…確かにそうね…彼の立場を考えればそうかもしれないわね…。」

「そもそも封印も限界だった…ってことか…」


ーウィザルド???知ってる?なんで??


蚊帳の外だったキシュ達は一方的に繰り出される会話をただ聞いているだけだった。けれどもキシュだけは違う。胸の鼓動が早まっていた。知らないのに危険なのがわかる。


寒気がする。頭が痛い。吐き気が襲う


「うっ…」


口を抑えるキシュに驚く


「どうしたんだ?キシュ??まだ具合悪いのか?」


ゼルベルダはキシュの異変に気がつく。

突然のことすぎて忘れていた。

この話を続けるのは危険だった。

メグに目をやり合図を取ると、メグはスカートを捲り上げ、走っていく。


「…とにかく、今は緊急事態だ。お前たちもこんなだし、宝珠の封印は私達でいく。」


「え?」


突然の展開に驚くほどキシュとサマーティー


「どういうことだよ!親父!」

「今は説明している暇などない!とにかくお前たちはここでまってろ。俺たちでなんとかする。いいな!?」


嫌だと反論する暇もなく、ゼルベルダは部屋を出て行った。

その場に残った一同はなにがなにやらさっぱり状況が掴めなかった。


「サマーティーのお父さんとお母さん…何者なの?」


キシュがサマーティーに問いかけるが、サマーティーも困っている


「普通…なはずだけど…」


誰がどう考えても普通ではない。明らかにおかしい。けど今はそんなことを考えてるよりも各々どうしていくかの不安の方が強い。


「…とにかく俺たちは何にも動けない…ってこと…は確実かな?」

「え〜〜!それじゃあたしたちここでお別れ??」

「マリーとコロッツィオに関してはそうだろ…」

「ちょっと待て!俺の件はどうなるんだ…。グビドはここに来るのか?」


いつになく慌てるジョージ。

何かを思いついたかのようにミンキュへ質問する。


「唐突に聞くが、レルエナには精神深部へ攻撃できるような魔術者はいるのか?その…ソーサー??って奴はできたのか?!」


ジョージは少し困惑気味でミンキュに問いかけた。それもそのはずなのだ、さっきの会話で出てきたサーやソーサーはソリティア同様幻の種族。しかもソリティアと違って存在事態がおとぎ話の種族だったのだ。ミンキュにとっても知らない事だった。


「確かに、イサラにはできたと思う。けど、そんな自身の存在を明らかにするような魔法は絶対イサラは使わない。…でも何で??」

「ジョージの弟が、宝珠を奪うために操られてあたし達を襲ったの…。どうにか解放できたんだけど、その影響で精神深部を攻撃されて今昏睡状態なの…」


コロッツィオの説明に驚く。


「レルエナでないとなると、別の…」

「違う!」


ジョージの言葉を遮ってミンキュが答える


「違う…宝珠の存在は他国はしらないはず…あたしたちですら、あの石の価値を知ったの最近だもん…あの女…あの女が来てからわかった事だ…」

「…その女がビッツを助けるための鍵ってことなのか…」


ジョージが考え込む。

静まり返る場。ポツリとサマーティーの声が響く。


「しかし…ソーサー…サー本当に存在していたのか…。どうなってんだ…」


サマーティーは大量に出てくる知識を整理するのに必死だった。


「事実は常に隠蔽されてる。真実を知る者はほんの一握りだよ…」


気持ち悪さが残るがキシュがミンキュに問いかける。


「話は戻るんだけど…ミンキュはなんでここにいるの??」


みんながハッとした。

別の話で盛り上がって本質を忘れていた。


「あたしはさっきの話で出てきた女と戦った…。イサラと一緒に…。あの女に石…宝珠??を渡しちゃダメだって思って…とっさの行動だった…。あたしじゃ全然ダメだった…どんだけ戦っても全然歯が立たなくて…」


あの時を思い出すだけでも身の毛がよだつ。

それに悔しい気持ちが溢れる。


「戦って意識がなくなって…。気がついたらここにいた…。イサラは私を逃がして死んだ…。あの女に殺された…。」

「そんな…おかしくない??…敵同士でもないのに…」

「きっとあの女はあたし達のこと味方なんておもって無い。ただのコマとしか思って無いと思う。イサラは死んで、あたしはイサラを殺して宝珠を奪った裏切り者ってなってる…。」

「居場所ないな…。これからどうするんだ?」

「クーゼは大体本当のことわかってそうだった…。じゃなきゃあんな無駄な戦いし無いはず…!あの女はもう、シュアトル様が手が下せない立場になってしまった…。あたしが今できるのは外からシュアトル様を支え、あの女を帝国からどうにかして排除することだけ…。ありがたいことにサマーティーの御両親は何か知ってそうだし…。しばらくはここにいさせてもらいたいんだけど…」


「まぁ、俺は問題ないぜ。」

「ありがとう。」


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