探り合い-1
「ヤダヤダ〜。やめてよ…。そんな棒切れでなにができるって……のっ!!」
素早く腰にかけてあった斧が振り下ろされる。
「?」
危ない。
レルエナ暗部とわかって行動したがやはり早い。
「っおっかしーなー?軽く動けないように狙ったのに…かわされちゃった?」
「あんまりお兄さんのことなめないでね〜。」
「はぁ?ちょー手加減してやったっつーの。あんまり調子のんじゃないっつーの。」
「文月…民間人だ。殺すなよ?」
「っさいなー。神無月。わかってるっつーの!」
振り下ろされる斧を木刀で受け止める。甲高い音が響く。斧に対して木刀。分が悪すぎる。それでもまだいける。体を低くし足を狙う。一瞬、時がスローモーションになったようだ。目と目があう。彼女は笑って何かを言っているようだ。
「ばーか」
軽々と攻撃をかわされ、その足で体を蹴り上げられる。華奢な体からどこにそんな力があるのか不思議に思えるほどその一発は重かった。
「だっさー。これで終わりじゃないよね?」
「プロテクト」
空からの一撃はすんでのところで神無月の防御魔法によって止められる。
「ちょっと…私の見せ場取らないでよ。」
「お前完全に気がついていなかったのバレバレだぞ。」
ジョージがサマーティーの前へ移動する。
「サンキュー」
「ばかかお前?もうちょっとうまくやり過ごせただろ?武器も持たずに交戦するか普通?」
背負っていた剣をサマーティに渡し、ジョージは腰を左へ右へ。
「しかし…こんな重い剣使ってるのか?もうちょといいやつに変えろよ。」
「俺こんくらいじゃないとダメなんだよ。軽すぎると感覚狂うんだ。」
「その慣れを治せっと言ってるんだ。」
「ははっ。きびしっ!」
神無月は喉を鳴らし、できるだけ声を貼るよう努めた
「抵抗はやめろ!私達は穏便にことを勧めたい!」
ジョージはサマーティを見る。
「あいつら多分レルエナの暗部だ。」
「レルエナ??」
「きっとあの子もそうだ…そうしか考えれない。」
「…。」
「絶対渡せないな。」
「その通り」
二人はうなづく。
そしてサマーティの声が響く。
「わけのわからんやつに、怪我人を渡せるかよ!」
文月は笑顔になる、ここに裏切り者がいることを確信した。二人に攻撃をしかける。神無月は文月の行動を止めなかった。遠目で戦いを眺め考えていた。
ーミンキュはここにいる。怪我をしているのか。しかし、なぜ出てこない??意識があれば出てくるはずだ…。それともやはりあの女の話は本当だったというのか…?
そもそもミンキュが自分たちを裏切ったとは神無月には考えられなかった。そしてボスであるシュアトルも同じ考えだ。しかし、それに意を唱えることができない状態に成り、今自分はここにいる。今の自分たちは最悪な状態へと転がっているとしか思えなかった。
文月との任務。
邪魔だ。この女は他人になど興味がない。
神無月は次の手を考える。
その間もサマーティ達の戦いは繰り広げられる。文月は戦いをただただ楽しんでいるようだ。それもそうだ、彼女は今では珍しい純潔マキナの遊牧民の血筋だ。彼女の武器である斧がそれを証明している。大陸中央部の森林地域に分布しているマキナは森から森へと遊牧して生活していた。斧の扱いに長け、戦闘力も高い。しかし、それは太古の昔の話。暁の時代。
そう神話の時代に彼らは皆パソナ大帝国に取り込まれたと聞く。純潔のマキナなどもうこの世にはいないはず…。しかし彼女は色濃く先祖の血が流れている。
窓辺から彼らの戦いを見ていたゼルベルダはそう思った。横にいるメグも冷静に彼女を見ている。ゼルベルダはメグの方に目をやる。メグはそれに応えるよう、ミンキュの部屋へと入っていった。
「あの子が何者かハッキリさせようか…」
ふと目が覚める。甲高い金属音が耳に入る。
「あれ…?」
体の痛みがないことに驚きを隠せない。
「傷が癒えてる??なんで??」
「気がついた?」
驚き声の方に目をやる。呆気にとられるミンキュを尻目にメグは微笑んでいる。
「外を見て。」
ミンキュはベッドを降り、壁伝いに窓の方へ移動し外を見た。
またしても驚いた。窓には仲間がいるではないか!!ミンキュはメグの事を忘れ、窓を開け降り立った。
「あら。そっちだったの…。」
メグはゼルベルダのいる廊下へ戻っていった。
「あの子、助けに来てもらえたって感じだったわ。」
「お。そっちだったのか。…余計な事したかな?」
「まぁいいんじゃないかしら?あなたが出ればどうにかなるんじゃないのかしら?」
「簡単に言うな…。あまり目立ちたくはないんだ。」
呆れた顔と笑い顔。
いつもの日常がそこには流れている。
窓の外は非日常。
ミンキュの姿を見たサマーティー・ジョージは驚きを隠せない。
「な…?!??」
「??なぜ動ける?」
その姿を確認した、文月・神無月ら安堵しているようだ。
「なんであんたらが?」
「あんたの回収に決まってんじゃん。なんでどっか行くわけ?」
「あたしの回収?」
考える。今仲間が戦っているのは自分たちが長い事追っていた奴ら。そいつらの身元が判明して、処分しに来たという事ではない…?
ではなぜ戦っている?
「イサラ様が死んだ。」
神無月の声が空を切る。
「え?」
文月は神無月の行動を理解できず笑った。
何を言っているんだろう?殺したのは目の前にいる裏切り者。そんなの分かり切ってる。
「ってか。あんたよくでてきたじゃん。やっぱりあれ?関係ない人は巻き込まない主義〜って奴?あたしらを裏切っといてわけわかんないっつーの。」
イサラが死んだ?死んだ…。
わかっていた。
わかっていたけど気持ちが抑えきれない。
悲しみ・後悔いろんな感情が頭を渦巻く。しかしそんな気持ちに今は垂れない。文月の言葉がそれを意味する。
「…それであたしが裏切り者って…?なんでそうなる?」
鋭い瞳は文月を睨みつける。
その問いには神無月が答えてくれた。
「あの女の証言だ。」
「ついこの間やってきた奴の言葉を信じるの?!」
3人の会話についていくことができない、サマーティーたちはただ彼女らの会話を聞いた。ものすごい気迫。息を呑むことさえ許されなさそう。
神無月はミンキュを見つめる。
「そうだ。ティアトル様のフィアンセのお言葉だ。意味はわかるな…。」
絶望が全てを包む。
あの女…とうとう動いたのか…。もはや手が届かない…。シュアトル様ですら届かないところへ…。後悔が溢れる。あの時…あの時殺せたなら…。
「あんた持ってんでしょ?早く返しなさいよ。すぐ返してくれれば、同僚のよしみで命まではとらないからさ。」
「…何のこと?」
「とぼけてんじゃないわよー。あの赤い石っころよ。あんたが持ってることくらいわかってるっつーの。」
意識を辿り思い出す。あの石が自分のポケットに入ってることを、右ポケットに手を入れる。そして、確信する。イサラが自分を逃したこと。そしてその先がこいつらのところだったことを。
うつむくミンキュは小さくイサラに別れと感謝の言葉を囁き、全てを捨てる覚悟を決める。
その瞳は強くきらめく。神無月はその決意を理解できた。
「この石は死んでも渡さない…!」
そして小さく呟く
「それがあたしの生きてる意味…だよね?」
文月はその返答を待ち望んでいたようだ。
「やっぱ〜?そうこなくちゃ面白くないっつーの!!!」
走り込み、間合いを詰める文月に対し構えを取るミンキュ。
「?!」
ミンキュの前に二つの大きな背中。
驚くミンキュ。走り込みを止める文月。
「守ってやるよ。」
ニヤリと笑うサマーティ。




