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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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休息-4


何かが近づいているのがわかる。

注がれる殺意。

怒りが自分を探している。


逃げるんだ。

隠れるんだ。


息を切らして走り続ける。

怖い。


殺される。


目がさめると、見知らぬ天井。暗い部屋。ここはどこだろう?起き上がろうとするが、体が痛む。右腕に違和感。何か管が見える。痛む腕をゆっくりと動かすと点滴を打たれているのがわかった。腕から天井へと視線を戻し、考える。


何が起きた?


回らない頭を動かし、目を閉じて思い出そうと試みる。確か、あの2人と戦って勝ったはずだったのに、最後に強烈な魔法が襲ったんだ…。でも誰かが助けてくれて…


記憶はここで止まっている。一体誰が助けてくれたのだろうか?わからないことが多い。



扉が開いて、誰かが入ってきた。

カーテンが勢いよく開かれ、眩しい光が部屋いっぱい広がる。突然の光に耐えられず目を閉じる。


「目…覚めたんだな。よかった」


にっこり笑うサマーティーがいた。


「…ここは?」

「おれんちだよ。大丈夫みんないる。意識が戻ったのはキシュが一番だ。」

「え?ってことは…みんな…」

「いや。まだ意識戻らないのはマリーとコロッツィオで、ジョージは大丈夫。」

「そっか…どれぐらい気を失ってたのあたし?」


ボンヤリと天井を眺めて問いかける。


「1日かな。」

「そっか…」


気まずそうなサマーティーの表情が見える。なんとなく嫌な予感がするけど問いかける。


「あれは?」

「え?」

「父さんの依頼の…」


少しの間があく。だいたいわかった。


「奪われちゃったのね…」

「ごめん…。キシュのポケットとか、鞄の中探してもどこにもなかった…」

「さぁ…これからどうしようかしら…」

「レルエナ…行くか?」

「…行かない。ひとまず父さんへの報告が先だわ。ねぇ、私の鞄取ってくれる?」


サマーティは机の上に置かれたキシュの鞄をとると、何を出せばいいのかキシュに問いかける。シュガーケースを支持された。タバコを吸わないキシュがなぜこんなモノを持ってるのか疑問に感じたが、すぐに訳はわかった。キシュはシュガーケースの中にある、タバコを一本取るように支持し、そして折るように支持した。意味がわからない。

半信半疑でサマーティは言われた通りタバコを折る。ポキっとあるまじき感触でタバコが折れる。折れたさきから、白い煙が出てきた。


「父さん失敗した。今負傷して動けない…。どうすればいいの?」


キシュが喋るのをやめて間が空くと煙は鳥の形へと変貌して、空へと飛んで行く。サマーティは摩訶不思議な光景に目を丸くしている。


「何あれ?」

「わかんない。父さんとの緊急時のやり取りはあれって決まってるの。私も初めて使った。」


届いているのか。

それにこれから何が起こるのかはキシュにもわからない。とりあえず、連絡後は待機するように言われていた。


「これからどうするんだろう?」

「さぁ…わかんない。とりあえず今は待機よ…。何もできない。」


扉を叩く乾いた音が響く。


「入るぞ。」


ジョージが背の高い女性と入ってきた。


「意識が戻ったのね。でも油断は禁物よ。あなただいぶと疲弊してるんだから。」


女性は持っていたカバンから包帯を取り出し、手際よく刺さっていた点滴を外し、包帯を巻く。


「はい。完了。安静にしててね。」


女性は片付けをして部屋を出る。


「マリーとコロッツィオはまだ意識が戻ってない。あとあの子の容態は今から見に行く。」


2人にそう伝えると、急いでジョージが女性の後を追った。


「あの子?」

「あぁ。そっか、キシュは知らなかったよな。あの後、どこからか傷だらけの女の子が現れて、仕方なく運んだんだよ。」

「何者?」

「さぁ…意識が戻らないから聞きようがない…。雰囲気からするとパソナだな…」

「そっか…」


キシュの部屋の斜め前。このフロアの一番端の部屋へジョージが女性を案内する。


「ありがとう。え…っと…」

「ジョージだ。ドクター。」

「オッケー。ジョージ。悪いけどここで待っていてくれる?」

「?」

「彼女の傷はあなた達と違うの…。火傷がひどくて服を脱がさないといけないの。わかるかしら?」

「あぁ。わかった。俺はここで待っておくよ。」

「悪いわね。」


そっと唇を頬にあわす。

不意を疲れ、目を丸くするがすぐに冷静さを戻すところがジョージらしい。


「何してるんだ…」

「お礼よお礼。それと、あたし名前はミリョウっていうの。」

「わかったドクター。」


そう言ってすぐさま指で唇を拭う。

興味ないというアピール。

笑うミリョウ。無視するジョージ。


少し狭い部屋。それでも豪華さは変わらない。

窓際のベッドへ向かうと、少女が眠っている。ミリョウは少女の頬を強めに叩いた。


「う…」


少女は頬に感じる痛みがなんなのか確かめるため、目を開けようとする。


「卯月。卯月。目を覚ましなさい。卯月!」


聞きなれたその声に安堵を覚える。

自分が帝国の医療棟にいると錯覚して、目を開ける。


「ドクター…。如月は?」

「知らないわよんっなこと。」


意図しない適当な返答に驚きと怒りが沸き立つ。胸グラをつかむため、体を持ち上げようとするも飛び出してきた細く白い腕に遮られる。


「それよりあんた此処がどこかわかってんの?」


ミリョウの言葉は不安を植え付ける。

腕の力がゆるまったのを確認して、体を持ち上げようとする。激痛が走り、思わず声が出る。


「静かにしなさい。」

「ここは??」


ミンキュは見える範囲で周囲を確認する。

確かにここは医療棟ではない。


「ベルゾナッドの民家よ…。」

「?!民家?なんであたしが??」

「それはこっちのセリフよ。」


ミリョウは溜息をこぼしながら、ベッドのそばに椅子を引き寄せ座ると、膝にカバンを乗せ、包帯と薬を取り出し、ミンキュの手当てをし始める。


「なんなのよこの傷…。火傷だらけじゃない…。その上、その傷を抉るように切りつけられてる…。趣味悪すぎ…」

「…ドクター。なぜあなたがここにいる?あなたは我が帝国の生物学・薬学の権威だ。」

「それはこっちのセリフよ。」


沈黙がつづく。

お互いの眼差しは一向に離れない。

折れたのはミリョウだった。


「流石、暗部無月のトップね。話さなければなにも応えてはくれないわけかっ…まぁ。いいわ。たいしたことないし。」

「…」

「お暇を出されたのよ」

「?」

「…そっか。まだ公にはなってないのよね。今、医療棟ではある計画が進められてるの。…」

「なんなの?」

「ヒトの理性を奪い、ただの殺戮マシーンに変貌させる生体兵器開発の計画。」

「!!なにそれ?!そんなこと国王様がお許しになるはずないだろう!」

「えぇ。そうよ。この計画は何年も前にシュナが立案したわ。もちろん当時は相手にもされず即却下。けれどここ最近で計画が持ち出されたの…。それであたしは計画のサブリーダー。もちろん断ったわ。…そしたらこのざま。」

「帝国から解雇になったの??」

「まぁ、そんなもんね…。あたしにとってはありがたい話だけどね。シュナなんかと仕事したくないもの。あいつ…自分の種族以外は下等生物だと思ってるのよ?イカれてるを通り越してるわよ。」

「そうだったんだ…。それで今は町医者?」

「そんなとこね。各地を転々としてやろうかなって。まだ目をつけられてるわけでもないし。」

「…そうだね、きっと皐月の部下があんたを監視するよ。まぁ…今はそれどころではないかもしれないけど…」

「そうなの?ありがたいわね。」


今、無月の諜報部皐月の配下の者たちは、最優先に宝珠保持者の身元調査に駆り立てられている。それにクロノアと狂信者達の問題もある。害の無さそうな研究者1人は後回しにされているだろう。


「…けど、何年も前の案がなんで今頃…?どうせろくに資金をまわしてもらえず、おじゃんになるんじゃ…」

「そう思うでしょう?当初は人道に反するってことで相手にされなかったのに、あの女が来てから光があたったのよ。資金は申請すればするだけ得られる。やりたい放題できる…。あれだけは完成させてはいけないのよ…。とにかく止めなくちゃいけない…」

「!!」

「…ここからが本題よ。あの女について知ってること全部教えなさい。」

「なんでそうなる??」

「あの女、何者なの?今あいつはシュナと一緒に研究室にこもって何かやってる…。しかもあの女の知識は驚異的。あたしなんか遥か到底追いつけないほどの知識量。あの女のせいで研究はかなりのスピードで進んでる…」


ミリョウの発言は信じ難い。

魔力・体力・高戦術をもち更に学術も優れてる…こんなハイスペックなヒトは本当にいるのか?


「…知ってどうするの?」


ニコリと笑みを浮かべるミリョウは迷いなく答える。


「あの女を止めるのよ…。」


その真っ直ぐすぎる返答に呆れを通り越して、笑いが溢れる。


「あなた一人で何ができるの?何もできないよ。」

「そこをどうにかするために、あんたに聴いてるのよ。止めるだけの情報を今かき集めてる。あの女に対する情報もあればピースは完成よ。情報を蒔けば、あとは勝手にことが進む。」

「…そっか…。ドクターその心意気は認めるよ。けど、あなたは民衆に知らせることなんてできない…あの女の力は強すぎる。」


反論しようとミリョウが口を開けたが、それはミンキュの怯えた表情に止められた。


「あの女はオールランダー…。魔力は如月と並び、攻撃力は文月と同等…。そして厄介なことに頭もキレる。今はティアトル様を手玉にとってる。」

「…絶望的ね…。まっ諦めないけどね…」


強い眼差しは全く揺るがなかった。ミンキュは止めることができないのを悟った。


「さて…。あたしの話はお終い。次はあんたよ。」



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