休息-1
「っつ…」
冷たい地面。
口の中の異物が気持ち悪い。
サマーティーはどうにかしてこの異物を吐き出そうと咳をした。
あちこちが痛い。
自分は何をしていた?
記憶を遡る。
地面が突如割れ、吸い込まれた。
-あぁ、あの2人に攻撃されたんだ…!
思い出したと同時にサマーティーは急いで体を持ち上げようとしたが、激痛が彼を襲う。
血で染まった砂利が口から出てきた。
ゆっくりと体を持ち上げ、周囲を見渡す。
そこには傷ついたみんながいた。
サマーティーはポケットというポケットを探し、やっとの事で欠片になっている体力回復剤を見つけた。少し残して飲み込み一呼吸つく。少しは動ける。立ち上がり、痛みに耐え、さっきまで意識のあったキシュとジョージを起こして、マリーとコロッツィオを回復させなければ。すぐそばにいたキシュに声をかけ、肩を叩く。持っていた水を口に含み勢いよく吹きかける。それでも反応がない。儚い吐息。キシュもまた行動不能状態に陥っている。
ジョージは?サマーティーはヨタヨタとジョージの元へ移動する。彼は大丈夫だ。ジョージはキシュよりも行きが荒かった。呼びかけ、肩を揺らすと閉じた瞳が開く。
「っ…」
サマーティーは残していた少量の回復剤をジョージの口へと運ぶ。運ばれた回復剤を飲み込み、少しの感覚を開け、瞳を閉じ、ジョージは深呼吸し、目を開けた。
「どれだけ俺らは気を失ってたんだ?」
「ちょっと待って。」
ジョージは辺りを見回す。外はまだ暗い。
それほど時間は経っていないはずだ。
「1時間…」
サマーティーは時計の針を読む。
「そんなにも…。キシュは?」
「だめだ。キシュも行動不能状態だ。早く回復処置をしないと…。」
「そうか…。それじゃ三人担いで行くしかないな…。行けるのか?」
「…正直キツイかな?」
「…そりゃそうか…。」
ボロボロの姿に、2人は情けなく笑う。
「お前、回復魔法使えるか?」
「残念ながら、回復系の魔法センスゼロ。」
「そうか。…ちょっと待っとけ。」
ジョージがコロッツィオのほうへと向かい、あの指輪を抜き、自分の人差し指にはめた。
魔力が供給されるのがわかる。
「俺も回復魔法のセンスはないほうだ。」
ジョージは白魔法とも黒魔法とも言えない不思議な言葉を唱え終え、大地に右手をつけた。大地から淡いオレンジ光が浮き上がり、2人を包む。優しい温かい光。心地よい風が気持ちいい。思わずサマーティーは目を閉じる。その感覚はすぐに終わってしまった。
「これって…」
「俺はマキナの血が強いが純血じゃない。少なからずルラの血も流れている。初めてか?マキニアの魔法を見るの?」
「いや。何度かあるけど…」
「なんだよ。それじゃ珍しくないだろ?」
「そうなんだけど、ジョージが魔法を使うのが意外で…」
「はは!まぁ滅多に使わないさ。そんな柄じゃないだろ?」
ジョージの滅多に見ることのない笑顔に胸がキューンとなるサマーティー。
「ジョージ。あんたモテるだろ?」
「こんな時に何言ってるんだ?」
冷たい返事と冷めた視線。
すぐに普段のジョージがかえってきた
「そんなことより行けるか?」
「あぁ。大丈夫。すぐそこに村があるから行こう。」
2人は三人を担ぎ村へと向かうことにした。ジョージが近くにいる、キシュを運ぼうとすると、サマーティーが素早くキシュを担ぐ。
「キシュは俺が運ぶ!」
ニヤニヤするジョージ。
「素早いな。そんなに元気ならあと1人は運べるよな?」
サマーティーは自分の軽率な行動に少し後悔した。
でも…やっぱりキシュは譲れないとも確信した。
あんなの見せられたら余計だ…
忘れられた王の墓の通路。
夢中で写真を撮っていたけど、ちゃんと見ていた。
ジョージとキシュが楽しそうに会話しているのを…。あんなに優しく笑うキシュは見たことない。それなのにジョージには見せてた…
それが恋に発展しないなんて言えない…
サマーティーはキシュとマリーを。ジョージがコロッツィオを担ぎ出口へと向かおうとしたときだ。一筋の光が空から二人の足元へと注がれる。突然の現象に驚き、後方へと移動する。
「くそっ!追手か?!」
「んなまさか!!」
2人は担いでいたメンバーを地面に急いでおろし、戦闘体勢をとる。光の筋はだんだんと大きくなり、ピークに達すると消え、そこには傷ついてボロボロになった少女が横たわっていた。
「…?」
思いもよらない状況についていけない。二人は恐る恐る、少女に近づき攻撃してこないかどうか様子を見た、目と目を合わせ、頷く。サマーティーは意を決し、少女の腕をとる。ジョージはまだ体勢を崩さない。
弱々しく流れる脈を感じ取る。頬を軽く叩く。反応がない。
「意識なさそうだな」
ジョージは構えていた槍を下ろし、サマーティーに近づく。
「…。どうする?」
2人はため息をついた。
「何かわかんないけど、この子も連れて行こう…。1人も2人も変わらないだろうし…」
「あぁ。しかしこの人数…宿が取れるか?」
「そこらへんは気にしなくていいさ。俺んち部屋だけは無駄に多いんだ。」
「ん?俺んち?」
「ん?」
なんだか話がかみ合わない。
「サマーティーの家?どういうことだ??」
「あれ?いってなかった?つぎの町は俺の故郷なんだ。」
ジョージは少し驚きため息一つ。
「お前、そんなこと言ってないぞ。まぁ、何も問題はないが」
「あはは。悪い悪い!」
サマーティーはキシュとマリー。
ジョージはコロッツィオと未知らぬ少女を担ぐ。少女の体を持ち上げたとき、少女が負った無数の傷と火傷に驚きを隠せなかった。一体何をすればこんなことになるのかわからない。剥がれた皮膚に浅い切り傷。考えただけでも肝が冷える。
この傷を与えた化け物には出会いたくないと思った。




