〓相入れる者たち-2〓
レルエナでの生活は想像以上に僕を満足させてくれた。レルエナでの僕の役割は本来であれば軍部の魔導部隊少将といったところだろうと思っていた。完全に政治から身を切れるとは思っていなかった。
けれど蓋を開ければどうだ?
僕は完全な自由を手に入れることができた!
僕のレルエナでの役割。
それは暗部・無月の一員。
コード・霜月
無月は少数精鋭の実力集団。軍隊の中でも上位の存在。言うならば第二皇子の親衛隊だろう。けれどもその役目は皇子のお守りではない。皇子もこの無月のメンバーコード・睦月なのだ。なので役目は国のお守りだ。レルエナの発展のため邪魔なものを消し去る。
密命もまぁ果たしやすい。
(母様には悪いけどあんまりやる気ない。)
無月では2人1組として行動する。
例外的に葉月だけは諜報を担っているので、たくさんの部下を従えている。
通常パートナーは仕事毎に組み合わされる。
けど、僕らはどうも違うようだ…
次の仕事の指示があり、シュアトル皇子の部屋へ行くと、弥生が先にいた。僕が部屋に入るなり、驚いて目を丸くする弥生に僕も驚いた。
「あ」
僕が声を漏らした瞬間に弥生はシュアトル皇子の方を見て怒鳴りつける。もはやこのハゲは立場というものを理解していない…。
「なぜ!!またこいつと一緒なんですか?!!」
呆れ混じりの冷めた視線を送ると、弥生が燃えるような闘志で睨みつける。
僕のパートナーは野心剥き出し種族ザルアのハゲ。
コード・弥生
ザルアの同盟国・ポリアンからやってきたやり手だ。
まぁ僕と同じ感じでスパイだろう。
確かにこいつの実力はすごい。文句無しだ。
実力は。
問題なのは…
「俺はこんなやる気のないやつと組むのはもう嫌なんです!!」
シュアトルは最後まで静かに弥生の言い分を聞く。
「お前の言い分もわかるが、この組み合わせは俺が決めたことだ。今回の仕事を効率よくこなす最良のペアーだと判断している。お前が嫌であろうと関係ない。わかったか?」
冷静な判断でピシャリと跳ね除けられる弥生の主張。
「けど!!」
弥生は引き下がらない。追い打ちでシュアトルの隣にいた如月が口を開く
「弥生。あなたはムキになり、状況判断が鈍る傾向が強い。それを霜月が抑えているんです。これは理解しているでしょ?」
如月のこの言葉に思い当たる節ありの弥生は言葉を飲む。
まぁ、実際に如月の言う通り、このハゲは夢中になりやすくやりすぎるところがある。これ以上やると面倒になると僕が判断したところを無理やり止めに入っている。
「確かにそうかもしれませんが!こいつはそれ以外何もしません!!」
「僕が出る前に君がやるんじゃないか…」
というのは嘘であるがまぁ本当だ。
僕は僕のペースがある。僕がやろうとする前にハゲが動くんだ。
弥生は怒り爆発寸前。
まぁ僕もチクられたことに不機嫌。
このやり取りを見てシュアトル皇子は困った様子
「弥生。霜月…お前たちペアーがなんなのかもう少し考えてくれ…。」
それでも今回の仕事は結局このハゲと組むはめになった。皇子の部屋から出て別室へ向かい作戦会議が始まる。如月から仕事内容の説明。
仕事内容はレルエナ南方領・アデンドにある古代遺跡・ルノアードーナ神殿の調査。強い魔力反応が出た様子でその正体を探り、持ち帰りが可能であれば持ち帰るというもの。
出立は明朝。
「ちゃんと仕事しろよ」
捨て台詞をはき、弥生が先に部屋を出た。
「はぁ〜。やってらんないよ…」
「あなたもあなたよ…弥生を追い詰めるのはよくないわ」
「追い詰めてなんかいませんよ。僕は僕のやりたいようにやってるだけ…」
「それが追い込んでいるというの。そんな横柄な態度ばかり取ると、情報は渡さないわよ」
「あー。怖…これだから…」
次のセリフを言おうとした途端。体が動かなくなった。
「その言葉は言わない約束でしょ?」
冷たい金縛りがふっととける
本当にこの人は怖い。
「わかりましたよ…」
「ならいいの。」




