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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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気づき-3


新鮮な空気が頬を当たる。静かな夜。

城の入り口には葉月が待ち構えていた。


「お疲れ様。」


緊張が走る。


2人は弥生と霜月の応援として向かったことになっている。しかし2人の行動は応援とは言い難い。ただ静観し、敵を助けたのだから。ミンキュとイサラを緊張が襲う。


「弥生も霜月も回復は済ませてる。けど限界を超えた行動で、まだ意識が戻らないわ。」

「わかった。とにかく医療棟へ運べばいいわね?」


葉月が右手をあげると、部下たちがどこからともなく現れ、2人を受け取った。


「あなたたちはシュアトル様の元へ行きなさいよ。お部屋で待たれているわ。」

「わかったわ。」


何事もなかったように葉月はミンキュ達に背を向け城へ戻っていく、安堵を胸に抱いたその時、葉月が立ち止まり、くるりと体を半身こちらへ向けた。


「今回の件は黙っていてあげる。あなたたちがやったことが、後々どう出るかわからないけど。」


ニヤッと不敵な笑みを浮かべまた、背を向け歩きだす。ミンキュとイサラは静かに葉月に礼をした。


「本当、いい子と友達になったわねミンキュ。ヒヤヒヤしたわ…」

「シュネは敵に回したくないよ。ホント。」


2人は急いでシュアトルの元へ向かった。シュアトルは最上階の離れの自室にいる。ここからはエレベーターを乗り継いで、離れへ通じる長い廊下を渡らなければいけない。この王宮の中、何も急ぐ必要はない。談話をしながらゆっくりと向かう。


「ところでこの石がそんなに大事なの?私にはただの赤い石っころにしかみえないけど…」


光にかざしてみるも、なんの価値も感じられない。

不思議そうに見つめるミンキュ。


「そうね。普通の種族ならそう見えるわね。けど…これは相当な魔力を秘めてるわ。…けど、今はとにかく力を漏らさないように必死に隠しているよう…」


ミンキュは持っている宝珠をイサラが全く見ようとしないことに気がつく。


「イサラ?なんで宝珠見ないの?」


イサラは苦笑する。


「ばかげてるんだけど…。怖いの。」

「怖い??イサラが???そんなことってあるの??」

「あるわよ。私をなんだと思ってるのよ…」

「だってーこの世界で唯一の魔力持ちじゃん!」


二つの笑い声。

最上階へ向かうためのエレベーターの扉を開けるため、ミンキュが駆け足になる。

そんなミンキュの背中を見るイサラの表情は少し重い。


「…私の魔力なんて…ごまんといる…」



2人は最上階へと到着した。

国王一家が過ごしているフロアー。

離れにあるシュアトルの部屋へ続く長い廊下へ差しかかろうとした時だ。

恐ろしい何か…殺気を超えた何かが襲いかかる感覚に2人は囚われ、後ろを振り向いた。

身の毛が逆立ち、脂汗が湧き出す。



シャザンヌがいた。



完全に2人の間合いに入っている。

もっと前に気づけたはずなのに。

なぜそこにいるのかわからなかった。

どこから来た?


2人は考える。

奥には国王の部屋しかないはず。ティアトルの部屋は反対の離れにある。

2人の感情が恐怖から怒りに変わり、戦闘体勢へと向かわせる。


「何をやっているの?暗部のお二人さん。」


優しい感情のない声は続く。


「ねぇその手にあるもの私に見せて。」


ヒールの高い音が近づく。

静かに後ずさりする。


意を決して叫ぶ。


「これはお前が手にするものではない!され!」

「何をキィキィ言ってるの?見せてよ。」

「これはシュアトル様へお渡しするものよ。今の段階であなたが触れれるものではないのよ。」


ため息と笑みがこぼれる。


「融通のきかない奴らね。」


シャザンヌは2人を指差すと瞬く間に炎が襲う。

イサラのとっさの防御魔法で防ぐことができた。

ミンキュはあまりの早さに何が起こったのか戸惑う。


「さすが、神も恐れる魔力…か…けれど…」


シャザンヌは笑っていた。


「ふふ…これよこれ。やっと戻った…。」


ミンキュとイサラはシャザンヌが何を言っているのかわからなかった。


戻った?


どういことだろう。

隙だらけのはずなのに手が出せない。


「早く私の元へ渡しなさい。」


シャザンヌが2人に近づく。

ミンキュは覚悟した。


なぜだかわからなかったが、今ここでこの石をシャザンヌに渡してはいけない、命をかけて守らなくてはいけないと思った。


勝手に体が動く。


手に持っていた宝珠をポケットにいれる。

そして両の足はシャザンヌの方へ動く。


ミンキュの行動に驚くイサラも覚悟をした。

速度魔法・防御魔法・強化魔法。

あらゆる補助魔法を唱え、サポートする。


ミンキュの拳はシャザンヌを捉える。

力の限り殴り、蹴り上げる。


「キィキィ煩いぞ猿が。」


ミンキュは自分の体が火傷を負っていることに気がついた。立ち込める火の粉。だんだんと視界が開ける。そこには炎で体を守っているほぼ無傷のシャザンヌが立っている。


「そんな…」


絶望が2人の口から漏れた。

しかし、その意味合いはミンキュとイサラでは違った。イサラの顔はこわばり、この世の終わりを悟ったようであった。

震える体を必死で抑え込む。


「まさか…そんなはず…そんなはずないわ…。ありえない…。そんな…」


イサラは自分の考えが誤りであることを確かめるため、今できる最大の氷結魔法を唱える。シャザンヌの周りを冷気が覆い、空気中の水蒸気が氷へと変貌して行き砕け、勢いよくシャザンヌを襲う。攻撃は効いている。シャザンヌの体は傷だらけになっている。それでも致命傷は与えれていない。

イサラは待った。シャザンヌが発する言葉を。


「欠陥品。なかなかやるじゃないの…」


シャザンヌの発した言葉はイサラの不確定事項を確定させる。それも最悪な方向へと。


「…逃げて…」


シャザンヌに攻撃されるミンキュを見つめ、言葉が漏れた。


「お前が持っているな。()()()を返してもらうわよ。」


焼けたボロボロの服。気を失っているミンキュの体に触れようとしたその時。姿が消えた。


時が止まり、緊張の糸が張り詰める。


その糸はシャザンヌがイサラのほうへと顔を向けたその時に切れた。


高揚した笑顔。


死んだ魚の目はイサラを捉える。


あぁ…ここで死ぬのか。

イサラは思った。

そして誇りげに笑みを浮かべる。自分の判断はこれから起こる未来への転機だと確信している。


「来なさいよ。欠陥品の力見せてあげるわ。」


怒り狂うシャザンヌの狂気に臆した。

それでも自分は立ち向かうのだ。この命消えるまで





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