抜け道-3
予想していた通り、最下層は敵の強さも半端ない。消耗する体力。精神。何よりも暗い湿気の中当て所なく進むのにみんなのモチベーションは下がる。
「あれ…?」
行き止まりの壁に焦るサマーティ。
「どうした?」
「この道であってるはずなのに、道がない…」
「道間違えてんじゃないの?」
「いや。間違えてない。ここ以外に道はない…」
「え〜…それじゃ〜地図が間違えてるの〜??」
「…」
黙り込むサマーティ。溢れるため息。
一か八かかけたのに。ここまで来たのに外れた…
重たい空気。
「…ごめん…」
「謝ることない。選んだのは俺たちだ。お前1人の責任じゃない。」
「そ〜だよ!落ち込まないで〜!」
皆んながサマーティを元気付けてる間、キシュは行き止まりの壁を触ってみた。壁画が気になったのだ。たくさんの人の上に立つ三つ目の奇妙なマーク。
サマーティが気がつく。
「どうした?」
「こんなの初めてみた…」
みんなも壁画に注目する。
「神さまにお祈りしてるんじゃないの〜?」
「神さま?」
不思議そうにするキシュに、コロッツィオは三つ目を指していう。
「え?あたしたちの村ではこの三つ目は神さまを指してたよ?」
「三つ目を神のシンボルとする民族は今となっちゃ少ないけど太古は多かった。レルエナでは偶像崇拝が、暁の時代に廃れたから俺らはあんまり拝むことはないけど。」
「へー…父さんからは聞いたことあったけど…初めてみたかも。」
「俺もだ…。」
「ドラグーンはたしか独特な宗教だったっけ??」
「独特…?まぁ他がどうとか気にしたことはないがそうなのかもな…。まぁ神なんて信じちゃいないが…」
三つ目の部分にキシュの指が触れる。
何か違和感。三角形に配置される目の一番上。黒く塗りつぶされてるんじゃない。これは穴?手を入れ探る。何?突起??
それを強く押してみる。
「わっ!!!」
横の壁が上へ開ける。壁にもたれて居たサマーティはそのまま床へと転がってしまう。
「大丈夫??」
「はは…」
大きな笑い声をあげるサマーティ。
「あった!!よかった…よかった…やっぱりあったんだ!」
皆んなも微笑む。
むっくりと立ち上がるサマーティ。扉の先は真っ暗で何も見えない。マリーの魔法であたりを照らす。細い一本道。奥はどこまでつながっているのだろうか?
とにかく進むことにする。
壁には壁画が描かれている。どうやらこの道、先ほどと違って魔物たちは居なさそうだ。サマーティは持っていたペンライトを取り出し壁画を照らす。
カシャ。カシャ。
スティック型のペンライトはカメラ機能も搭載されている。
「なぁ…知ってる?」
ふとサマーティが話し始める。
「なぜ暁の女帝が神格化されてるか?」
突拍子も無いことすぎて驚いた。
口を開いたのはジョージ。
「人ならざる力を持っていたからだろう?」
「ドラグーンなのにレルエナの歴史知ってるの?」
コロッツィオが尊敬の眼差しでジョージに問いかける。
「暁の女帝はドラグーン史にも大きく影響を与えているからな。彼女がいなければ、レルエナとドラグーンはもっと血を流していたと教えられている。」
澄ましたジョージに女子一同ほーとなる。
「…そう。暁の女帝はパソナにもかかわらず巨大な魔力を持ち合わせ、このオーランソ大陸を統一した。けれど統一できたのは魔力が強かったからだけじゃ無い。彼女の思想が1番の理由って言われてる。」
「思想〜??」
「そう…パソナは昔選民思想が強くて、他の種族に対して排他的で、侵略に侵略を重ねた。けれど暁の女帝は違った。彼女は民族の垣根を取っ払い宗教を根絶し全民族協力し一つの国を作り上げることを目指したんだ。巨大な魔力は作り話で、事実は彼女の思想がオーランソ大陸統一を達成させたと言われてる…。」
「なんか昔の人っぽく無いわね…考え方が…」
「全く持って…だから神格化されてるんだ…。」
「へぇ〜。」
世界の歴史に興味などなかった。しかしサマーティの話す言葉はとても面白い。そうこうしてるうちに薄暗い明りが見えてきた。あかりのする方へ行くと、高い高い天井。中央には祭壇があった。祭壇に続く階段は四方から伸びている。
「ちょっと祭壇見てきていいか?」
サマーティが1人階段をかける。
祭壇に到着するとそこには棺があった。サマーティはひとしきり写真を撮ると、また戻ってくる。その間みんなは休憩。サマーティが戻ってくる。
「ねぇ〜ねぇ〜!!」
マリーが興味津々に問いかける。
「ん?なに??」
「その暁の女帝って民族統一目指してたのオーランソ大陸だけなの〜?ラファノ大陸は〜?それになんで今は民族統一が持続されてないの〜?」
マリーの質問はサマーティーを少し楽しませてるように見えたが、コロッツィオは、少し呆れている。
「もう〜!ねぇさん!それ父様に教わったじゃん」
笑ってとぼけるマリーにサマーティは意気揚々と答えてくれた。
「それは女帝が最悪のタイミングで死んだからだよ。」
「ラファノ大陸への交戦中に突然死んだんだ。」
「突然〜?」
「そう。突然。女帝の死に関しての資料が全くと言っていいほどないし、そっから約100年の資料が残念なことにないんだよね〜なんでかわかる?」
「わかんない…」
「内戦でしょ?」
ボソっとキシュが答える。
みんなが驚いている。
「そう!」
「内戦〜?」
「ラファノ大陸との戦争は甚大な被害と膨大な費用がかかったらしいわ。これに不満を持った人たちが女帝の死をきっかけに独立の旗を掲げたの。…ほんっと馬鹿げてる…その内戦のせいで数多の命が失われたのよ。」
「命だけじゃない。知識までもが失われたんだ。ドラグーンなんて最悪だ。そのとばっちりを受けて、レルエナほどではないがかなりの技術、知識が失われている。」
その話に驚くみんな。
「それじゃ今より昔の方がすごかったのか?」
「多分ね。」
「ロストテクノロジーだね。なんだかロマンあるねー」
「そう!ロマン!!追求かまとまんないんだよ〜」
目がイキイキとするサマーティを見て、なんだか羨ましさを感じる。キシュ。
自分にはあるだろうか?
追いかけるべきものが…
ジョージが立ち上がった。
「そろそろ行こう。」
「え〜やだなぁ。」
と渋るマリー。笑うコロッツィオ。
「ねぇさんダメだよ!また魔物たちと戦わないといけないけど、こっから早く出なきゃ〜」
ふくれるマリー。みんなの笑みがこぼれる。
重い腰をあげ反対側の通路へと足が動く。
サマーティは相変わらず後ろでカシャカシャ。
ジョージとキシュが一緒に歩いている。
「すごいな…。あいつ。」
ボソリと呟くジョージに同調するキシュ
「うん。なんだか眩しい。自分がちっぽけに感じるよ。」
「全くだ…」
「あたしさ、この世界に全然興味ないんだよね…父さんに言われた仕事こなす日々。楽しみって言ったら仕事終わりのお風呂くらいだよ…」
「そうなのか?お前も意外とあーいう類の話詳しかったじゃないか。」
「父さんの教え方がよかっただけ。それに私はあいつみたいに歴史に魅了されなかったし…」
「そうか…まっ俺も似たようなもんだ…。ただ任務をこなすだけ。あいつみたいに好奇心旺盛なやつが羨ましい。」
優しく笑うジョージにつられてキシュも笑った。昔なら自分の気持ちを言える人はいなかった。だから忘れようとして何も考えずにいた。けれど今は違う。本当の気持ちを吐き出せる。それは目を背けないこと。
キシュはなんだか嬉しかった。
暗く細い道の先は行き止まり、横のボタンらしきものを押し、扉を開ける。すると、来た道とは違い少し広く天井の高い広間に出た。
みし…
「え?」
何かいる。
キシュが天井に目を向けた瞬間だった。それは降ってきた。




