抜け道-1
オーーーン
オーーーン
ロボの合図が聞こえる。2度長く鳴くとき、そこが目的地の合図だ。
ここまでの道のりはあっけないほど何もなかった。
「もー!サマーティー!余計なことばっかりするから!」
「だって〜…」
「キシュも!思いっきり殴らないで!気持ちわかるけど…」
「だってぇ…」
プリプリ怒りながらサマーティーに回復魔法をかけるコロッツィオ。プンプンのキシュとみんなから白い目で見られるしょんぼりサマーティー。
制服姿のキシュに大興奮でついつい調子に乗って
手を握ったり、肩を組んだり性懲りも無く続けていたのだ。最後の方なんかボロボロになりながらもまだキシュにちょっかい出そうとするので、ジョージが見張っていたくらいだ。
気を取り直し、テンション下がるサマーティーを無視して服を着替える。今からは気を引き締めなければいけない。
ニコ曰く、安全ではないらしい。それにレルエナにつながっていると言っても、そう教えてもらっているだけで、ニコは内部がどうなっているか知らないようだ。サマーティーは内部の地図らしきものを持っているようだったから、特に問題はなさそだが…
しかし、この『忘れられし王の墓』はいつの時代のものかも検討がつけられていないらしい。入り口も最早入り口と言えるものではない。木々が多いしげるなか、蔓がうっそうと巻きつき、垂れ下がっている洞窟。それが入り口だという。
長い間誰もここにはきていないのがわかる。しかしそこまで古い時代のものでもない気もする。比較的今の建築と似ている気がするから。
サマーティーの方を見てみると、皆がいることも忘れていたるところを触ったり、壁のかけらをとったり、メモしたり慌ただしい。
「いったいこれはいつの時代なんだ…壁はこんなにも…?ん…壁自体はもろくない…」
「そんな古くないでしょ?これ??」
軽くサマーティーに尋ねる。サマーティーは振り向きもせず、ひたすら壁をみながら答える。
「そういう風に感じるだろ?でも違うんだ…紀元後の時代にもこういう建築素材を使ったものがあるんだけど、脆さが全然違う。それに触った感も…こんな素材は見たことが無いんだ…。まさか…紀元前??」
「紀元前??あの暁の女帝の時代??」
「そうかな…って…。ちょっと似てるんだよ。レルエナ旧宮廷跡の壁とかと…」
「お~~い!行くよ〜~!」
奥の方でマリー・コロッツィオ・ジョージが待っている。サマーティは小突いても動こうとしないので、頭をおもいっきり引っ叩いて服を引っ張る。渋々と歩く。歴史的な事となるとサマーティーはいつもこうだ。それにニコに文献を漁るとも言っていた…何なのだろう?
「あれ?言ってなかったっけ?俺考古学者やってんだ。」
サマーティーのあっけらかんとした発言に驚きを隠せない一同。
「前はさぁ、レルエナの王立大学で活動してたんだけどさ、やっぱ色々かたっ苦しくなって、今はフリーでやってんだ。」
「え?でもあんた、ただの賞金稼ぎじゃ…」
「賞金稼ぎは資金貯めるため~。」
「だからか…」
ジョージのため息に皆が注目する。
「おかしいと思った。こんな遺跡一般人は知らないはずだ。そうか…レルエナ王立に所属してたら知ってるな…」
「まぁね。けど、ここに関しては家漁ってたら出てきた感じ〜」
サマーティーは笑って肯定する。
ジョージは呆れている。
「筋肉バカだと思っていた…」
「筋肉バカだなんて〜!ひでぇ~」
笑うサマーティーとジョージが不思議なマリーとコロッツィオ。
「??ただの筋肉バカでしょ?」
「あ。筋肉ドスケベ〜バカだよー!」
「ひ!ひどい!!」
ズタズタに言われて傷つくサマーティーをフォローするキシュ。
「レルエナ王立大学ってのはね、オーランソ大陸で1番優秀な大学なのよ…。すなわちこいついいたくないけど、天才ってこと…」
マリーとコロッツィオの驚きが響く。キシュも驚きでいっぱいだ。まさかの王立大学に所属して今はフリーということは、一体何歳で大学を卒業し、研究員になったのだろうか?疑問が頭を巡る。
「扉か…」
扉は格子状の鉄の扉。しかしおかしい扉が開いた形跡がある。
「これは…」
サマーティーが調べる。
「これは最近開かれたのか?」
「先客がいるかもしれない…ってことか…」
ジョージの発言に一同緊張する。特にキシュ。
「レルエナ?まさか…」
「最悪そういうことになる。」
「そんなのおかしくない?!なんでこんなとこで待ち伏せるの?そんなことしなくても国境付近の検問強化する方が得策なきがするけど…それになんでこのルートが特定できちゃうの?」
コロッツィオの言うことは確かだった。もし、先にレルエナがここにいてたらおかしい。居場所を把握してることになる。そんなことできてたらとっくの昔に捕まっているはず…。キシュはあることを思い出す。そして面倒だと感じた。
「…アベド狂信者かも…」
みんながが注目する。
「あいつらの集会は廃墟で行われるって聞いたことがある…もしかしたら、ここ奴らの集会所なのかもしれない…」
「…その可能性が一番高いな…」
「面倒だな。今日その集会がなければいいんだが…」
「ないことを願うしかないね〜」
一同は意を決して錠を壊し中へと進むと、また扉がある。丈夫そうな石の扉。鍵はかかってない。とってを押すと思っていた以上に簡単に扉は開く。
「うっ!!」
とっさにキシュは鼻を手で覆う。瘴気が酷い。ジョージが急いで扉を閉めようとする。同時に何かが勢いよくするりとすり抜けたのがわかった。皆は急いで戦闘体制をとる。骨にカラカラの皮膚とボロボロになった布が垂れ下がり、まばらな髪はゆらゆらと空を揺れている。背に携えた大きな斧を手にとり振りかざす。
振り落とされた斧は大地に大きな割れ目を作る。その大きさは斧の三倍。瘴気だ。瘴気の力と怨念…とでもいうのだろうか?その力が大きく作用しているのだ。一体どうすれば…ジョージとサマーティの攻撃は斧で阻まれる。マリーの魔法はあまりきいていないようにみえた。
癒しの光が骸骨の頭上から指す。
その光は力の源。命をつなぎとめる光。風が叫ぶ。高音が響く。
コロッツィオは手応えを感じた。
「こいつは瘴気の塊だからあたしに任せて!!」
皆は頷き、コロッツィオを全力でサポートする。守り、魔力を補充したりする。まるで意識があるかのように骸骨はコロッツィオを狙う。全力で守る。どうにか倒すことができた頃には手持ち魔力回復剤はかなり減ってしまった。それでも先に進まなければいけない。
街に戻るには距離がありすぎる。
「この先どうしよう…コロッツィオに頼り切ってちゃダメだわ。」
「そうだな…」
「そんな!あたしはいけるよ!」
「駄目だ。コロッツィオには俺らの回復もしてもらわないと!」
サマーティーの発言はまともだがなんだか皆イラっとする。キシュの舌打ちに戸惑うサマーティ。
ここであーだこーだ言っても意味がない。とりあえず先に進むことに。キシュは先ほどの骸骨をゴソゴソと調べる。やっぱりみんなドン引きになっているけど、これだけはやっとか無いと後で後悔するよりましだ。骸骨が身につけている布はボロボロだったけど、素材は最高級のシルクに金糸で織り上げられている。指にはサファイアと思われる美しい宝石が埋め込まれた指輪。取れるものはすべてとる。指輪を外した瞬間、骸骨を構成する骨という骨、干からびた皮は音もなく塵となった。
「ど…どういうこと?」
コロッツィオとマリーがキシュの手から指輪を覗き込む。
「これ…どっかで見たことあるかも…」
「この指輪?」
「違う~。宝石のほう〜」
「え?これサファイアでしょ??」
サマーティとジョージも指輪を覗き込む。サマーティはキシュの手から指輪をひょいっと取り上げ、ポケットにしまいこんでいた虫眼鏡を取り出し、観察し始める。
「あっ!!あれだよあれ!森の宝石全集の!!」
「え?」
コロッツィオの声が響く。コロッツィオ曰く、この宝石は命の輝きといって、新緑の朝露と月の光が交わってできたものらしい。かなりうそっぽいが、伝説的な宝石であるらしい。その効果は魔力の回復らしい。
「え〜!え〜!何その効果!今まさに必要なやつじゃない!」
「そ…そだよね…。なんなんだろこの出来過ぎ感…なんか怖いっ…。」
「とりあえず、ほいっ」
サマーティーがコロッツィオの指に指輪をはめる。少しぶかぶかだった。
「うわぁ…ぶか…っぎゃぁぁ!」
指に指輪をはめた瞬間、ギュっと締め付けられた。
「大丈夫?!コロッツィオ!何かやばい?!」
「だ…大丈夫。ゆ…指輪が」
キシュはコロッツィオの指に目をやると、さっきまでぶかぶかだった指輪がキッチリはまっている。
「さっきまでブカブカだったのに…」
「なんか、ジャストサイズだよ…」
皆が不思議そうに指輪を眺める。
サマーティーは必死にメモ。
指輪の効果はすぐに現れ、コロッツィオの魔力は少しづつ回復している。これで、この墓地を攻略する準備は整った。瘴気をなるべく吸わないために、皆は布を口元にまきつけ、マスクが代わりにした。扉を開き死者の住処へと進んで行く。




