信ずる者-2
月明かりの元、動く影。同系色のマントに身を包み移動する。
ジョージの読みが当たり、クロノアとドラグーンの国境には検問らしいものがなかった。それはとても不思議だ。検問が緩すぎる。これでは狂信者たちもユルユルに入れる。けれども今はそんなことを考えている暇はない。
みんな必死に草木をかき分け前へ進む。この森、手入れをされているようなされていないような…かろうじて獣道がある。
「っ!」
マリーが屈みこむ。
「どうした?」
「なんか〜、枝に足が引っかかったみたいで〜…無理矢理引っ張っちゃったぁ…」
「何やってるんだ…見せてみろ。」
ため息をこぼしマリーの足にライトを当ててみると、長いブーツが破れ、その先の肌に擦り傷が見える。
ジョージはコロッツィオを呼び止め、マリーが怪我したことを伝えた。するとみんなが足を止め、こっちへ向かってきてくれる。
「ごめんね〜。」
「そんなに傷は深くなさそうよ!これくらいなら、痛み止めの魔法と包帯での止血で済むと思う!」
そう言ってコロッツィオは痛み止めの魔法を唱え、傷口に包帯を巻こうとする。
「ありがとう〜」
マリーはブーツを脱ぎ、コロッツィオに傷を見せると、コロッツィオの表情は固まり、動きが止まった。
「コロッツィオ〜??」
「どうしたの?」
ひょっこりと覗き込むキシュにはなぜ、コロッツィオが動きを止めたのか理解できなかった。
いや。キシュだけではない。サマーティーもジョージもわかってなかった。
「ごめんジョージ…ライトもう少し近づけてくれる?」
そういうので、ジョージはライトを近づける。
みんな理解した。
この最悪な状況に。
「え?えぇ??何なに〜??」
「ねぇさん…ちょっと我慢してね…」
コロッツィオは魔法を唱え、それを抜き取った。
「っ〜〜〜!」
声を殺し叫ぶマリー。コロッツィオはすぐさま、痛み止めの魔法を唱える。
けれどもコロッツィオの動揺は止まらない。
「どうしよう…」
マリーの足は真っ赤に腫れ、棘が刺さった箇所は青紫に変色している。明らかに毒だ。
最悪なのは植物性の毒ということ。
解毒魔法は動物性の毒にしか聞かない。何種類か植物性に効く解毒剤は持っているが、なんの植物がわからないので、試すのは怖い。最悪、毒素と毒素が反応し最悪な事態が起きることも考えれる。
「あの枝だと思うんだけど〜…」
そう言って指差した先にあったのは膝あたりまでお生い茂る細く固そうな蔓。葉には白い毛が生えて全体的に白い。よくよく見てみると、たしかに鋭い棘が点々と生えている。
見たこともない植物。
「見たことある?」
コロッツィオの問いかけに皆んなは首を横に振るう。
「近くに村がある。そこに行くしかないだろ。」
サマーティーの言葉はドキっとさせる。
「けど、そんなことしたら〜、身元がバレちゃう…」
「今はそんなこと言ってられねーだろ!命かかってんだぞ!」
サマーティーの一言に嬉しくてうるうるしてしまうマリー。やっぱり見習うべきものをサマーティーは持っている。
「ジョージは顔はバレてない…。頼める?ジョージ??」
「勿論だ。」
ダッダッダ…
「!!」
気付いた時はもう遅かった。
油断していた。いやそれどころではなかった。
遠吠えとともに大きな影が降り立つ。
牙を剥き、怒りをあらわにした鋭い瞳。
白く光り波打つ毛を纏った狼。
「こんな時に!!」
戦闘体制に入る。
「まって!」
細く鈴のような可愛い声が響くと、狼はお座りをして、声の方に顔を向ける。
草をかき分ける音が近づいてくる。
緊張は解けない
なにがくるかわからない。
けれども予想とは裏腹に草の間からやってきたのは弱い11歳くらいの小さな少女だった。




