信ずる者-1
レルエナ国境部隊は連日慌ただしい。今まで、ゆるゆるの検問が厳しくなっているのだ。特にドラグーンとの国境は無月の幹部がやってきてるともっぱら噂担っていた。もしそれが、暗部の葉月だとすると何を報告されるかわからない。皆、大真面目に仕事をしている。極秘の仕事。いつもと違う雰囲気をだすな。おかしなやつがいればとらえろ。この情報を漏らすな。
徹底された黙秘のもと検問は進められている。
キシュは構えていた。それもそのはずだ、あれだけレルエナからの攻撃を受けたのだから、血眼になって自分たちを探しているに違いない。しかも、自分たちの顔はばれている。どうやってくぐり抜けるかが問題だ。人数を分散させ、変装するのが最善の策と思った。皆を集め話して見る。
「ちょっと待て。なぜ俺達はこんなにコソコソしないとダメなんだ?」
ジョージには内緒でいたかったが無理そうだ。キシュはサマーティーを見る。話した方がいいだろうという表情。
「私達にもわかんない。けど、なぜかレルエナに追われてるの…。しかも無月に…」
ジョージが驚く
「無月?あのレルエナの特殊部隊の?お前らなにしたんだ?」
「何もしてないわよ。あたしたちはグビドに言われた仕事をただやってただけ。」
「あの無月が動いてるということは、相当のことだぞ…。しかしあいつら何やろうとしてるんだ…」
「それがわかれば楽なんだけどな~。どうもあいつらの狙いは宝珠っぽいんだ。」
「宝珠?」
カバンからとりだし、ジョージに見せる。
「これがあいつらの狙い??どうみてもただの石だろ?よく言ってルビーの原石…か。」
「でも確かなの。」
「俺らの仕事はこの石を運ぶことで、こんなに危険がついて回ってるなんて聞いてない。こいつの価値を知ってるのはグビドだけだ。」
「なるほど…。キーマンはグビドか…。グビドとはベルゾナドで落ち合うのか?」
「そう。この石を祠に収めて、連絡することになってるの。」
「そしたら、あたしたちはお別れだね。」
「あぁ…。そうだったな。」
場が少しシュンっとなる。ベルゾナドでコロッツィオ・マリーと別れると思うとさみしい。
「しんみりなんのはまだ早いって!今はどうやってレルエナ領に入るか考えようぜ!」
サマーティーの明るい声は場の雰囲気を変えてくれる。そうだ。時間がない。
「検問と言っても、公共の交通ルートでしかされてないんじゃないのか?」
ジョージがぽつりと呟く。
「まぁ、そうだけどあの辺一帯公道しかなくない?」
「!まって…。そうでもない。」
サマーティーが何か閃めき、カバンから分厚いメモ帳を取り出し勢いよくページをめくる。
「あった!!」
興奮気味でサマーティーが叫ぶ。
皆がメモ帳を覗き込む。
「これだ!これ!」
サマーティーの指差す方をみて見る。
「なに?」
「王の墓??」
「お墓~??」
「そ!ここならきっと抜けれる!」
女子三人のブーイングが響く。
無視してサマーティーは話す。ジョージはサマーティーの話しに興味心身だ。
「ほらみてくれ、この絵!どうみても両サイドの出口がある雰囲気だろ?」
指差す絵には確かに入り口らしきものが四方向全てにある。
「確かに絵では記されているが、実際はどうなんだ?」
「わからない。ただ文献でしか見たことないから…」
「ちょっと!!そんな不確定な情報だけ?あんたの憶測じゃん!本当にあるかもわかんないとか!!」
「落ち着け。サマーティーの案に俺は乗る。」
「ジョージ〜!」
キシュはサマーティーの表情の変化を逃さない。あれはコロッツィオの村で見せた表情だ。好奇心いっぱい、探検楽しみ!!の表情!!
「ジョージ!!騙されないで!こいつはただここを探検したいだけよ!」
「なっ!!」
いきなり的を得られたので、顔がおかしくなるも急いで戻す。
「んなわけないだろ!お…俺は真剣に考えてるんだ!」
フルフルと力説する姿ほど嘘くさいものはないと皆が思った。
「それにあんたここどこかわかってんの?クロノアよ!クロノア!!」
キシュの発言に、ジョージ・サマーティーもハッとなる。クロノアは技術発展国家である。あのサーチャーの主要プロダクトメンバーの大半がクロノア。多数の国が開発に関わったと言っても、本当のところはクロノアが開発したのも当然。けれどもレルエナとの同盟条項はそれを許さない。レルエナとは友好関係にあるが完全に属国。名ばかりの独立国家なのだ。レルエナとは違う国といえど、国境付近の検問は強化されている可能性が高い。こっそりクロノアの領地に入ってしまうと身元がばれかねないし、最悪レルエナに垂れ流されかねないのだ。
「まぁ…ここでうじうじしててもしかたない。ここらは平地で、隠れて移動することも無理なのは確かだ…。もし道があるとすると大分と南下して、この山超えるしかないか…」
「これ以上の遠回りは避けたいよね。」
「う~ん。それじゃ、一か八かかける?」
「それしかないのかも〜」
「いや!それしかないだろ!レルエナだって戦力が無尽蔵にあるわけじゃない…。検問強化には限りがあるはずだ。」
「サマーティーの言っていることは一理あるな。確かに今、レルエナは内部の警護に人を当てているので精一杯のはずだ。クロノア経由は案外あたりかもしれない。」
力むサマーティーを無視し、皆ジョージの意見に同意する。悲しむサマーティー。
とりあえずルートは決まった。
墓を突っ切って、検問を避ける。
サマーティーとジョージは出発の支度をするため部屋を後にする。
五分後に下に集合だ。キシュ達も荷物をまとめ部屋を後にする。




