雪山-3
暑い…。ひたすら暑い。さっきまで寒いーと言っていたのが嘘のようだ。気温は外より少しだけあったかいだけ。暑い理由は一つ。
「また来た!」
「くそーどんだけいるんだよ!」
「もうへとへとだよ~」
「やだー!!」
魔物がさっきからひっきりなしで襲ってくる。魔物は飢えているせいか必死で襲いかかる。
文句を垂れながら対応をとる。防寒具の前部分は全開にしている。そうでもしないと暑すぎて無理だ。みんなヘトヘト。1人を除いて…
「この調子でガンガン行くわよーー!!!」
1人絶好調のキシュ。鞄の荷物はもういっぱいである。キシュだけではない。サマーティーも皆んないっぱい。先ほど倒した敵をくまなく調べる。フカフカの毛を持つ大きな熊のような魔物。ジョージ曰く爪が大変貴重とのこと。キシュとサマーティーは状態のいい爪を切り落としマリーの鞄へ詰める。
ジョージがこちらに向かってきた
「おい。あっちに休憩できそうな場所あったぞ。テントはるか?」
サマーティーが腕につけている時計に目をやる。もう夜の8時だ。ジョージの見つけた場所は湧き水も出ている少し広い穴だった。
穴の先には二つの道がある。一つは外につながっているが、その先は崖でほぼ行き止まり。
もう一つは下り坂が続いている。
とりあえずコロッツィオが結界をはり、テントをはる。マリーが魔法で火を起こし、残りの三人は食料を確保しに出かけ、鳥を何羽か手に戻って来た。手持ちの食料と合わせてキシュが手早くシチューを作る。
「ほんとキシュって器用だね!私のお嫁さんになってぇ!」
「ダメぇ〜!キシュはあたしの〜!」
そう言ってマリーとコロッツィオがキシュにスリスリ。
「もー…。2人だって器用でしょ。」
「キシュは俺の嫁だから。駄目だぞー☆」
ホワホワした女子たちのトークはその一言で一気に冷め、白い視線がサマーティーを襲う。
その横で黙々とと食事を済ましジョージが立ち上がり、泉で食器を軽く洗う。
「あれ〜??もうごちそうさま〜??」
「あぁ。悪いが先にテントに入っている。」
「はーい」
ジョージがテントへ入った後、残りのみんなもささっと片付けをしてテントへ潜った。
何時間たっただろうか?キシュはふと目が覚めてしまった。あたりを見回す。スヤスヤと眠るマリーとコロッツィオ。何かにうなされているサマーティー。その横にいるはずのジョージがいない。
キシュはテントの外に顔をやると、崖へとつながる穴へ向かうジョージの後姿をみつけた。
上着を持ってこっそりと後をつけて見る事に。
ジョージは外を見つめてぼんやりと座っている。
その斜め前にキシュも腰を下ろす。
「起こしたか?」
「ううん。勝手に起きた。」
「俺の後をつけて来たのか?」
「まぁ。そういうこと。」
ジョージは呆れているようにみえた。
少しの間気まづい。ジョージを見るとさっきと変わらず外をぼんやりと眺めている。
きっとビッツのことを考えてるに違いない…
そう思った。
「ごめんね」
「?何のことだ?」
「ドラグーンでのこと。あたしずっと、ジョージはビッツのこと嫌ってるって勘違いしてた…」
その一言にジョージは驚いた様子。
一瞬驚いた様子を見せたかと思うと、優しく困ったように笑った。
初めて見る表情。
「…誤解されても仕方ない。俺自体、よくわからないんだからな」
「え?」
「血の繋がりがあるのはビッツだけなんだ…けどダメなんだ…」
汚れたものを見つめているような冷たい眼差しに変わっている。何となく想像がつく、きっとあの女性だろう。
「…あの人?ビッツの…」
「母親だ。俺にとっても義理の母親なんだが、俺はあいつ…それに父親も許せない。ビッツはあいつらの子供だ…。ビッツに心を許すと、あいつらにも心を許してるみたいで…」
「それであんなに冷たかったんだ…」
「まぁ、ずっとあぁだったから、今更直せと言われても難しいんだがな。」
「でも、病院では弟想いのいいお兄さんだったよ?」
「俺も驚いたさ。まさか俺があんなこというなんてな…。」
2人の小さな笑い声が重なる。
「これからよろしくね。」
「もちろんだ。」
お互い手を取り固くてを握りしめ、テントへと戻って眠りについた。
日の光が当たらない暗い朝がやってくる。ジョージが一番の早起きで、皆を起こして回る。
「まだ朝の6時だぜ?早くねぇ?」
寝ぼけたサマーティーの声。
「それじゃあんただけ寝てれば?」
と冷たくキシュがいうもんだから、サマーティーは笑って、嘘だよ。と連呼する。
湧き水で顔を洗い、水筒に水を詰め、テントをたたみ出発の準備ができた。
現在地はちょうど山の真ん中あたりをすぎたところになるらしい。今いる場所を東の方へ進めばいい。
「けどさ、ここからでて東行っても道無かったよね?」
「そういえばそうだな。道無かった。」
「…ということはこの道か…」
キシュ・ジョージ・サマーティーはこの洞穴から続くもう一つの道を見つめた。マリーとコロッツィオがその穴へと近づく。緩やかな坂の先には空洞しか見えない。
「行き止まりっぽいよ~?」
キシュ達も穴を覗き込む。
確かに行き止まりっぽいけど、壁が遠かった。下がありそうだ。
「一応行ってみよ。もしかしたら降りれるかもしんないし…」
「降りれるんじゃないか?コロッツィオの魔法でどうにかなるだろ。」
「ジョージいいこという〜!」
「えーしんどい〜!」
嫌がるコロッツィオをマリーがなだめながら、一行は先へ進む。予想に反して、道は下まで続いている。少し高めの段差をキシュ・ジョージ・サマーティーは軽々と飛び降りる。マリーとコロッツィオは男群が受け止めてあげる。そんな時でも魔物はやってくる。
大きなコウモリは、縄張りを守るために襲ってくる。小さいと可愛らしいコウモリも、狼位のサイズになると気持ち悪い。
宙を舞う魔物。ジャンプ力のあるジョージは軽々と攻撃をくりだし、サマーティは魔物が近寄るのを見計らって攻撃をする。そんな二人をみて羨ましく思う。素早さは二人よりも抜きんでている自信はあったけど、攻撃はさほど与えれない。
「あぁ。飛び道具があればな…」
「キシュ!!」
サマーティーの声が響く。
気がついた時にはサマーティーが目の前に立ってくれている。両腕に軽いが複数の傷が見えた。
「あ…ごめ…」
「戦ってる時は集中きらすな!」
最後まで言い切る前に喝。
悔しい。普段はこんなことないのに、ましてこのおちゃらけ男に怒られるなんて…。
けど…
変な気持ちになった。この気持ちが何なのかキシュにはわからない。
魔物を倒した後のお宝探し中にぼやくキシュの声をサマーティは逃さない。
「なんか言った?」
「別に。飛び道具が欲しいなって…」
「ブーメラン的な?」
「そう。じゃないと攻撃できないんだもん…」
ふくれっ面のキシュ。
思わず笑いが溢れる。
「キシュはそういう類の武器も扱えるの?」
「まぁね。」
「だから、さっきボンヤリしてたんだな…。本当に優しいな…」
「うっさい…」
「お〜い!こっちに宝箱みたいな…」
マリーがいい終わる前に素早く宝箱の前に移動するキシュ。呆れるコロッツィオに宝箱に呪いがかかってないか確認してもらう。何度ここで宝箱の呪いにかかったことか…。安全ということで宝箱をあける。
そこには薬草と刃のついたブーメラン。
「すごいタイミングじゃん。」
ひょいっと持ち上げるサマーティから勢いよく奪うキシュ。勢いがよすぎて、サマーティはこける。
そんなの御構い無しだ。ブーメランをじっくり見る。宝箱に入っていたのに刃こぼれ一つない綺麗な状態。真っ赤に色付けされた金属に鋭い刃。少し熱気を感じられる。試しに注に投げると炎が飛び出す。間違いない。これはアグニ・チャクラム。気合が入る。一緒に入っていた、チャクラム専用のグローブをつけ、腰に装備する。
「よーーーっし!気合いれていくわよー!」




