雪山-2
翌朝、空は曇ってどんよりしていた。
宿を出ると肌寒い風が迎えてくれる。
こんな中、あの山に登るのかと思うと気が重い。
ロビーに戻り、ソファーに腰掛ける。ソファーには誰かが読んだであろう新聞が置かれていた。キシュは新聞を手に取りパラパラめくっていると昨日のドラグーンでの戦いが記事になっていた。新聞には不慮の事故として片付けられている。
それもそうかと納得して新聞をソファーへ置いた。
ぞくぞくとみんながロビーへと集まってくる。
「昨日買った〜、防寒具は~いつきるの〜??」
「山の麓につくあたりに小さな村がある。そこで装備すればいいはずだ。」
ジョージを先頭に進む。山の麓までの道のりは険しく、高山で生活をしているマグールに乗ることにした。マグールは大きな鳥で、旅人達の足となってくれる。生息している地域によって、その姿・特性は違って、大陸中部にいるタイプがスタンダード。空を飛ぶタイプもいるらしい。この地域のマグールは羽毛が多く暖かい。高山に生息し、足腰が他のタイプよりもがっしりしている。スピードもゆっくりだ。
マリー・コロッツィオ・キシュはスタンダードタイプしかみたことが無かったので、フカフカの羽毛に顔をすりすりさせている。マリーにいたっては、麓に着いたというのに降りたくないとだだをこねるほどである。
「さ…寒っ!!」
村に到着したのはお昼を少しすぎた頃。太陽が遮られていたからか、標高の高いところにいるからなのかわからないが結構な寒さだった。一向は急いで休憩できそうな宿へと向かう。部屋を少しかりて、防寒具を装備する。
マリーはモコモコのフードつき黒革のロングローブに皮の手袋。コロッツィオも色違いの白革ローブと皮の手袋。キシュは厚手のウィンドブレイカーに裏起毛のスパッツとモコモコブーツ。一見寒そうに見えるが、なかなかあったかい何より、動きやすい。
普段では切ることのない厚手の装備に3人はそわそわ
「ちょっと…暑いかな?」
「ん~ちょっとだけ暑いかも~」
「こんなので動けるのかなー?」
と着替えながら笑って話してたのが、現場に到着するなり吹っ飛ぶ
「なにここ!!この格好でも肌寒いとか!」
「あたしたちは~丁度いいかも~。」
となる。サマーティーはモコモコフード付きのウィンドブレイカー。キシュのウィンドブレイカーにフードがつけられたタイプ。ジョージは上着が長袖になっている。
「ちょっと待って!ジョージ寒くないの?!」
「中にだいぶ着込んでいるが、まぁ寒さには慣れているからなそれにすぐに暑くなるさ。」
言葉の意味はすぐには理解できなかった。
山を登れば登るほど気温は下がる。
気温が低いせいか魔物もあまりいない。体が温まらないので、とにかく冷えて仕方が無い。挙げ句の果てには雪も降ってくる。もちろん吹雪いている。
寒い。
「たしか……ここのはずだ。」
人が1人やっと入れるかどうかの穴に体をするりといれるジョージ。続いてサマーティーが。キシュ・マリー・コロッツィオは戸惑うも、恐る恐るジョージの真似をする。まずはキシュ。穴の上部を掴んで、足を滑らせるようにいれる。
滑り込ませ足は床につかない。どうすべきか悩んでいるとジョージがそのまま体を滑らせろ。と指示をくれた。なんとかなるだろうとそのまま体を滑らすと体は落下する。
「え?え?えぇぇぇ!?」
まさかの高さに驚くキシュをジョージが空中で受け止めてくれる。
「あ…ありがとう。」
「あぁ。マリー!コロッツィオ!!お前たちもこい!」
キシュを地面に降ろし、穴に向かい叫ぶ。
外ではキャーキャーという声。あまり聞こえない。
「何でもいいか1人づつこい!俺が受け止めるから!!」
穴からマリーの足が見える。ジョージが合図を出す。キシュの時と同じ要領でキャッチする。後からコロッツィオがやってくるも、あまりの恐怖で魔法が発動されたらしく、ジョージがジャンプして受け止めようとしたが、必要ないと判断した。ゆっくりと地面へ着地する。
「なんだ。お前浮遊魔法使えたなら、さっさと来れただろ…」
「う…ううん。始めてできた…」
「なんか〜コロッツィオそんなのが多いよね~。」
「うん…あたし本番に強いみたい…」
キシュの瞳はキラキラと輝く。
夢中であたりを見渡す。
凄い…
ゴツゴツした岩肌に美しく光る水晶。水晶は本当に発光している。美しく青い。気温は少し寒いが、風が無いだけまだましだ。しかし美しい風景だけが待っているわけではない。
「キシュ!後ろー!!」
コロッツィオの声と同時に後ろを振り向く。大きな蜘蛛が襲いかかろうとしている。腰にかけているナイフを取ろうとした時、風が頬を横切る。蜘蛛の顔面真ん中に槍は刺さる。蜘蛛は大きく反り返る。キシュはその好きにナイフを手にし、とどめを刺す。
驚いたキシュの横へジョージがやってくる。蜘蛛に刺さった槍を抜き取る。
「こんなもんじゃないぞ。ここからは気を引き締めないとやられる。」
「上等よ…」




