雪山-1
一向は雪山・パゴロプステに登る前に近くの街で一夜を過ごすことにした。街はたくさんの人であふれかえっている。一足早い北の大地の冬支度が始まっている。真っ先に防具屋へ向かう。店はたくさんの人だ。皆寒さ対策の防寒具を新調しようと入念に見ている。
キシュ・マリー・コロッツィオの考えている冬とは別物なようで、三人は初めて見る防具に困り果てる。ジョージはマリーとコロッツィオに色々教えている。キシュはウロウロとわからない防具を手に取り悩んでいると、サマーティーが横にきたと思いきや、あれやこれやと防寒具をポンポンと手の上に置いて行く。
「ちょっ!ちょっと!!適当に置かないでよ!」
「え?適当じゃないよ。これ全部いるぞ?」
「何であんたがそんなの知ってんのよ?ジョージ!!ちょっと来て!」
マリーとコロッツィオの防寒具を一緒に選ぶジョージを呼び寄せる。
「なんだ?」
「こんなにいらないわよね?」
むっすりとサマーティーが手に置いた品々を見せる。
「なんだ。無駄ないじゃないか。」
さらっと応えて、二人の元へと戻るジョージ。
「な?」
「な…何であんた知ってんのよ…」
「え?だって俺、北出身だもん。あれ言ってなかった?」
「言ってないわよ。」
「あ。そうだっけ?ま。いいや。これぐらいはマジでいるから。」
「…わ…わかった。…ありがと。」
キシュのありがとうに感激するサマーティーは感極まって飛びつこうとするも、すかさず交わされ床へと一直線。毎度のことなのでマリーもコロッツィオも相手にはしていない。唯一、ジョージだけがサマーティーを心配してくれた。
宿はどこも満室で、唯一空いているのは一泊1人200ディーラのボロホテルと最低でも一泊2000ディーラのリゾート高級ホテル。お金もないことから、ボロホテルに泊まることに…。ボロホテルは狭くてどう頑張っても1人一室。
(マリーとコロッツィオは同じ部屋に泊まるが…)
久しぶりの個室にくつろぐ。
ベッドに腰掛け、そのまま後ろへと倒れる。
ポケットにしまっている宝珠を取り出し、見つめる。ルビーの原石かなにかにしか見えない。これがそんなに大事なものには見えない。
ノックの音。
扉を開けるとサマーティーが立っている。
「どうしたの?」
「いや。お菓子貰ったから一緒にどうかなーって…」
「いらないわよ。」
扉をしめようとすると、サマーティーの足が勢いよく伸び、阻止する。
「うそうそ!ビッツのことで思うことがあって…」
「…始めかっから、そう言いなよ」
呆れながらキシュはベッドに腰掛ける。隣に座ろうとするサマーティーには、椅子に座れと顎で指図すると残念そうに椅子に腰掛ける。
ポケットから取り出したビスケットをキシュに数枚渡して、サマーティーは話だす。
「ドラグーンに入って、レルエナからの襲撃はないって思ったんだけどさ、あれ…レルエナの仕業なんじゃないかな…って。」
「あたしも同じこと思った。けど、レルエナはパソナ主体の国で、あんな高度な魔法使える人間いるわけないわ。」
「そうなんだ…だけど、それ言い出すとどこの国の奴らもあり得ないことになる。ビッツの受けた魔法はこの世で使えるものなんていないはずなんだ。」
「…」
「ただ…一種族を除いて…」
「え?」
「ソーサーだよ。彼らの魔法は神も恐るほどって言われてる。」
真剣な面持ちで言うもんだから、ついついキシュは笑いが溢れてしまった。
「ちょっちょっとまって…ソーサってそれこそ伝説の種族じゃない。あんた何言ってんの?この世に存在なんてするわけないじゃん。」
「ソリティアが居た…。彼らは伝説ではないけど、絶滅した人種とされていたんだ。この世界の人種情報はかなり曖昧になってる。伝説が事実…ってことは多いにあるんじゃないかってこの頃思うんだ…。もしレルエナがソーサーの戦士をもっていたら…」
確かにそうだ。
自分たちの知る事実はあくまでも教わったものだ。
決して自分たちの目で見たわけではない。
今までの当たり前はもはや当たり前ではなくなりつつある。
「…可能性としてはあり得るけど…。」
「今後は目立った行動は控えないとまずいだろうな。あいつらいろんなネットワークを使って俺らの特定をしてくるはずだ…。」
2人はもしゃもしゃとビスケットを頬張りながら話す。
「そうね。…偽名アカウントもってる?」
「もちろん。キシュは?」
「あたしもある。当分は偽名アカウントで行動ね。」
「おーけ。このことはジョージには話さないでおこう。」
「わかったわ。」
話が終わると同時にビスケットもすべて口の中へと消えて行く。
サマーティーの口元にビスケットのかけら。
「ビスケットついてるわよ。ここ。」
キシュは自分の左口元をトントンと指差す。サマーティーは右の口元を払う。ビスケットは左の口元についているのに。
「だからこっちー。」
「ん。」
呆れたキシュは指ではらってあげようとしたとたん、ペロリとサマーティーが口元についているビスケットをなめとろうとしている。
ペロリ
キシュは変な感触を指に覚えた。
というか、サマーティーが指をなめた。
2人の顔が真っ赤になるがサマーティーだけはすぐに真っ青になった。
「ちょっ!!ちょーー!!!!事故!今の!!!じーこー!!!!」
「でてけーー!!!!」
ビンタの音が宿に響く。
「あはは~。またやってるね~」
とマリー
「今日のはいつもより大きい音ね。何したんだろ?」
とコロッツィオ
「な…なんだ?」
とジョージ。




