ドラゴンの王国-6
三人は部屋の真ん中に立っている。
何もなかったように時間が流れている。空は薄暗い紺とオレンジが混ざったままだ。
そしてビッツとコロッツィオの手には鍵が。マリーの手には本が。
「も…戻ってきましたね。」
「だね~…。」
お互い顔を見合わせ、手元の物を確認する。
「夢…じゃないんだね。」
「そのようですね。あ。これ。」
ビッツは手元にあった鍵をコロッツィオに渡した。
「きっとこれは僕には使えない物だと思います。」
「ありがとう。…でもあたし達に使えるのかしら?」
「大丈夫ですよ。」
「ね〜ね~、この本って貰えるの?」
「ん~、それは難しいですね…」
「やっぱり?」
「この禁書はきっとお二人のためのものでしょうが、それ以上に歴史を紐解く為の大事な資料です…。ただ、この本への取り扱得るように許可を頂きますね。」
「えー!!持ち運びは禁止ってこと?」
「すみませんが…。」
「ま。しょうがないよ~。ねっ。コロッツィオ!ねっ。」
少しふくれるコロッツィオをなだめる2人。
「本当に申し訳ないです。今日みたいに歴史の情報を掴んだら教えてもらえますか?」
「勿論だよ~!ねっ?」
「うん。おーけ。この本読みたかったんだけどな…」
「何言ってるの〜?本開いても読めないよ~。」
「2ページだけ読めるの」
「え~!!」「えっ!!」
マリーとビッツの声が響く。2人はコロッツィオが開いたページを覗き込むとページには古文ではなく、現代の言葉でオルトロス・シルフィの説明が記述されている。
次のページを開くと、この本が作られたいきさつが記述されている。ただこのページは召喚魔法の説明と違い、まだ執筆中だ。
「す…すごい。この内容がすべてわかれば歴史がひもとける!」
「うわ~!!なんかドキドキするね~」
「なんかあたし達すごいことしちゃったんだね。」
三人はきゃっきゃっしていると、遠くから鐘の音が響く。6時の合図だ。
「?まだ6時??結構この中にいた気がするんだけど…」
「空間が切り離されていたということでしょうか??」
「…そうなのかしら?まぁ、よかったわ…これで2人には心配かけずに済む…」
「キシュさんサマーティーさんにはお2人がここにいることは伝えていたのですか??」
「あ。言ってない…やばいかも…すぐ戻るって言っただけだ…」
ここまで長い時間離れるとは思っていなかった2人は焦り始める。
「たしか~今日は城内の宿だよね~?!ここから結構遠くない?!」
「うん!うん!!急着ましょ!!」
「そ~だね~。それじゃーね!また明日本見せてね~!」
「えぇ。それでは明日。」
急ぐマリーとコロッツィオを見送り、ビッツも身支度をする為部屋に戻る。
「あ。レビィリアさん。」
荷物を纏め、帰ろうとヒールをコツコツ響かせやってくるレビィリアを引き止めた。レビリアはビッツの声に振り向き、深々と礼をする。
「副長。お疲れ様でした」
「お疲れ様です。あ。先ほどの2人ですが、私の部屋にあるアネグリの閲覧許可を与えようと思っています。」
「え?あのアネグリを閲覧許可??あの本は封印されていたはずじゃ…」
「それが開けたんですよ!2人だけがあの禁書をひもとけるみたいです。」
「まぁ…!!それでは学者達に伝える必要がありますわね!」
「ええ。そうですね!あの2人にはここへの自由入館許可を与えてください。長官への報告もお願いしていいでしょうか??」
「もちろんですわ。」
にっこり微笑むレビリア。本当に頼りになる。
「ありがとうございます。あ。すみません帰るところを引き止めてしまって…」
「構いませんわ。それではお先に失礼いたします。副長は本日は無理なさらずゆっくりなさってくださいね」
「はい!お疲れ様です」
レビィリアを見送ったあと館内の戸締りをする。もちろん魔法で。暗くなった空を見上げる。風が少し冷たい。すーっと息を吸い込むと身体中を冷たい空気が巡る感じがして、あぁ…生きてるんだなぁと感じる。昨日までは生きるか死ぬかの状態だったのに…改めて一日を大切にしようとビッツは思った。
帰路の途中、コロッツィオとマリーの言葉を思い出す。
兄に嫌われてるとか思って接するのはやめよう。
図書館から少し歩いたところにビッツの家がある。少し小さい館。館以上に広い庭が目立つ。門番達がこぞって泣いて帰還を喜んでくれている。ビッツは1人1人に感謝の言葉と謝罪の言葉を送った。
玄関から勢いよく駆け寄る人影が見える。母だ。
「ビッツ!!!」
「母さ…」
平手の音が響いたと思ったら、母の泣き声が響いている。
「あれだけ、母さんは反対したのに!!こんなことが起こるから…」
何度も何度も胸を叩く母の手には力がこもっていなかった。自分の事を大事に大事に思ってくれているのが痛いほど伝わる。申し訳なさそうに謝り、小さく震える母を抱きしめる。
「ごめん…心配かけて…。」
自分の部屋で落ち着く。服を着替え、下のダイニングへ向かう。すぐにおりてきなさいとのことだった。ダイニングテーブルには自分の好物が広がっている。どんどん食べなさい。と母は喜んでいる。兄の姿が見えない。少しの期待は結局叶わず仕舞いだろう。
母に問いかけてもきっと機嫌を悪くするだけだ…。
残念な気持ちを押し殺して食事をする。
その日はすぐに寝ることにした。
明日の朝少し早めに起きてキシュ達に会うために。
ふかふかのベットで眠る。
心地の良い感触。すぐに眠れる。
真っ暗闇から声が聞こえた気がした。
『私に服従しろ。』




