ドラゴンの王国-5
あたりには沢山の文字が宙を浮いている。見たことのない文字達。空間は白地に黒い文字で構成されている。まさに本の中に入り込んでしまったようだ。元の世界に戻るには結界を作り出している元を叩くしかない。三人は自分たちの魔力を頼りに強い波動を探す。
「だめだよ~!すごい数だよ~。」
「マリーさんのおっしゃる通りですね…。数が多すぎて特定が難しい…。」
「潰し廻る?魔力にも限度ってのがあるけどね…」
「そうですね…。とりあえず、一番強く感じる波動を当たって行きませんか?」
「さんせ~い!」
「皆さんあっちですよね?」
ビッツは右斜めを指差す。
「え〜?こっちだよね〜?」
マリーは後ろを振り向いて指差す
「ちょ!ちょっとこっちよね?」
コロッツィオは真っ正面を指差す。
見事にバラバラ。
方向も部屋の端もわからない空間。いろんな方向から強い魔力が感じる。
「一つ一つ潰す?」
「それしかなさそうですね…。」
「それじゃ~どこからいく〜?」
三人は互いに感知した魔力の距離を計算した。
コロッツィオとビッツは100mほど先。マリーはちょっと遠いとのこと。
「マリーさんが感知した魔力は僕たちが感知したものより遠そうですね…。」
「ってか、ねーさんは私たちが感知した魔力なんかより、遥かに先の魔力が強いって感じたの??」
「う~ん。…そうみたい。」
「とりあえず、僕とコロッツィオさんの感知したところが近いですし、その間を行きませんか?」
「そうね。どちらにしても変わりはなさそうだし…近づいたらそこで探知し直して強そうなのから潰しましょ。」
2人はビッツを先頭に歩く。
静かな状況が苦手なコロッツィオが口を開ける。
「そ!それにしてもビッツってすごいよね!飛竜軍にも所属してるのに、あそこの副長さんなんて!」
「ぼく。初めはあそこの所長だったんですよ。完全に親のコネってやつですけどね…。家族の反対押しのけて飛竜軍に入ったんです。」
「反対されたの??」
「えぇ。僕は大人しくって弱くって、いつも誰かに守られてたんです。けどそれじゃダメだって。僕も兄さんみたいに強くなりたいって…まぁ、僕こんなんだから、母にも兄さんにも大反対されたんですけどね。」
「本気だったんだね~。なんか~わかる〜。」
「ありがとうございます。」
少し照れてビッツは応える。
それから少し歩くと真っ白と文字の空間になにやら、塊が動いているのが見えた。
「なんかいるね…。」
「いるね~。」
「準備は万端ですか?」
「あたしは大丈夫。」
「あたしもばっちりだよ〜」
三人は走った。
だんだん大きく。明確になる。塊。あれはなんだろう?オオカミ?頭が二つあるように見える…。あちらも、こっちに気がついたのか、ギロリと睨み、咆哮をあげ、こちらに向かってくる。
三人は構えをとる。
鋭い爪が襲いかかる。防御をとる。マリーの炎が燃え上がる。
苦しそうに悶える怪物。
コロッツィオは気がつく。ここが本の中だということを。
「ねーさん!ビッツ!!炎よ!炎!!ここは本の中だから!とりあえず燃やしまくって!」
「おっけ〜!!」
「え!も…燃やしまくるんですか?だ…大事な書物なんですが…」
「構ってらんないわよ!そんなことー!とりあえずここから出る方が大事よ!」
「そ!そうですね…」
そこからは炎・炎・炎の連発。
強そうなのは外見だけ。案外あっさりと倒すことができた。
「これなに?」
怪物がいたところに光り輝く鍵のような物をコロッツィオは見つける。それを恐る恐る取ろうとするビッツ。コロッツィオの手はビッツの手よりも先にその不思議な物体をとっていた。
「これ…何かしら?」
「鍵〜??」
「か…鍵ですね。」
「あれじゃない〜?さっき感知した敵倒せば〜。ここから出れるとか〜。」
「あっ!ぽいぽい!んじゃサッサっと行こっ!ねーさんとビッツの炎でじゃんじゃん倒しちゃってー!!」
「そんな簡単に…。マリーさん魔力のほうどうですか?」
あははと少し枯れた笑いのビッツ。
魔力はまだまだ枯れてはいないようだが、書物の方が気になる様子。
「ん〜大丈夫かな?まだ疲れてはない~。ビッツは??」
「僕もまだ大丈夫です。ただ、魔力回復剤を持ち合わせてないんです…」
「え?それほんと?」
「申し訳ないです…。机の上においてきてしまって…」
マリーとコロッツィオも慌ててポケットを探る。回復剤は2人合わせて五個。かなり不安が残る。
「キツイですね…魔力を無駄にできない…」
「けど〜あたしたち魔法でしか戦えないよ~」
三人は考え抜いたすえ、雑魚は相手にせず大きい敵だけを集中して戦うことを決めた。
もう一つ先にある強い波動の場所へと向かう。その間魔物が襲ってくるも三人はすべて振り切った。
走るのが苦手なマリーとコロッツィオは目的の場所に着くと息があがり、座り込む始末だ。
「あ〜ん!疲れた~!」
「大丈夫ですか?」
「あたしも疲れたー!!走るとかほんと無理よ!」
「少し休みましょうか?」
三人は腰をおろす。喉が渇く。
どれだけの時間が立っているんだろうか?お腹も空く。ぐったりしてるマリーとコロッツィオ。少し余裕のあるビッツが口を開ける。
「ずっと気になってたんですが、お二人は姉妹…なんですか?」
「そーよ。」「そ~だよ〜。」
同時に同じ答え。
2人は顔を見合わせて笑う。
「あたしたち血はつながってないんだけどね。」
「そ〜そ~。けどそんなの関係無いよね〜。」
2人を見てビッツは驚きそして悲しげに微笑む
「羨ましいな…。僕は兄さんから嫌われてるから…」
「そんなこと無いよ~。あの人?の性格だよ〜。かなりクールだから~、ビッツにもあーなんだよ〜。もしあの人が、あたしみたいだったら気持ち悪いでしょ~」
マリーのようなホワホワしたジョージを想像してみる。自分以上にドジでのんびりしてる…。考えただけでも笑いがこみあげ、我慢できずに吹き出してしまう。
「本当だ…それ僕の好きな兄さんじゃない!」
「好きって感情は人それぞれなんだし、嫌われてるなんてのは誰にも分からないよ。だから!そんな落ち込まないで!」
「…コロッツィオさん。…マリーさん。」
今まで言えなかった不安。悲しみ。
この2人の言葉は考えたことのないものばかり。
自分がいかに下ばかりを見ていたか気づかせてくれる。
「…ありがとうございます…」
その時だ。強い波動が背後から感じられた。
三人は後ろを振り向くと小さな光が素早く動いている。何かが羽ばたいている?蛍のように光っている。目を凝らしてみてみると、小さな羽を持つ女の子?妖精??気づかれた事にきづくと光は三人の中心へとやってきた。
「これ。」
妖精はすっと鍵を取り出す。鍵は妖精よりも少し大きい
「よ…妖精?」
「ばかにしてんの?この神聖さからして精霊に決まってんじゃない。」
「わ〜!!初めて見た!!」
「本当にいるんですね。」
三人の反応に怒る精霊。
「何?!物珍しそうにみないでちょうだい。」
「だって〜」
「物凄くめずらしいんだもん。仕方ないわ」
「もう!みないで!ってか早くこの鍵受け取ってよ!!重いのよ!」
慌ててビッツが受け取る。
「あの…これは?」
「は?次のページに進むための鍵に決まってんじゃないの?」
三人は驚愕した。無理もないこれでこの結界から抜けれると思ったからだ。
「な…なんなの?あんた達そんな事も知らずにこの本を開いたの?って事はこれがなんなのかも知らないわけ?」
三人の頭は縦に動く
「呆れた…。この本はフィヨルスとヴィドの作った禁書の中。2人の力を封印した書物よ。」
「えぇ!!そうなんですか?!いやぁ〜研究してもこの本が何なのかわかっていませんでした!大発見だ…」
この書物の謎が解明できたことに喜びが先に来るビッツを鬱陶しそうに見る精霊。
「そこのマキナ…?ん?違うな…まぁなんでもいいわ。この本になんであんたがいるのかは分からないけど、あなたは間違いなく招かざれぬ客よ。この本にはザルアとソリティアしか入れない。」
「…え?ソリティア??コロッツィオさんが?」
「内緒ね。」
「…え…えぇ。」
「きけ!」
「あ!きいてます!続きを!どうぞ。」
溜息が漏れる
「とにかく、この書物が開かれる事は2人の願い。ザルア・ソリティアがふたたび手を取り合うことを願っていたから…それに私もまた外の世界に出れると思うと嬉しいし。」
「え?」
「ど〜いうこと〜??」
精霊はニコリと微笑む
「この鍵は次のページへの鍵であり、私たちを呼び出すための鍵でもあるの。」
「ってことは…」
「そう。あたし達を召喚する大事な物よ」
「召喚!!まさか召喚魔法!?」
三人が声を合わせて叫ぶ
それもそうである。召喚魔法は神話の中の話なのである。そもそも、存在しないものを偶像化してこの世に呼び出すのか?馬鹿らしいとされ、どの国も研究していない夢の魔法なのだ。
「驚くのも無理ないわね。召喚魔法はフィヨルスとヴィドが封印したんだもの。」
「それが…これってことですか?」
「えぇ。そう。」
「てっことはー、あなたを召喚できる〜ってこと〜??」
「勿論よ。このページにはあたし含めオルトロスの封印がされてたはず。」
「あ。オルトロスってさっきの…」
「あ。戦った?」
「勝ったよ〜」
「そう。あいつ手を抜いたのね。ま。私も戦うのやだからこうやって話してるんだけどね。」
三人はさっきのオルトロスが手を抜いていたのが信じれなかった。炎連発でなんとか勝てたようなもので、かなりの強かった。
「あの〜、ここから出たいんだけど〜」
唐突にマリーが質問した。
精霊はあっけに取られて答える。
「出ればいいじゃない?え?出方知らないで来ちゃったわけ?」
三人とも頷く。
「そこの2人が「出る」って強く願えばいいのよ。それだけ。」
「え?それだけ??」
「そう。それだけ。」
三人は呆気に取られてへなへな座り込む。
「たくさん話ができて楽しかったわ。何かあれば呼んで。」
「いろいろ教えてくれてありがと〜!!えっと名前は…」
「シルフィよ。」
「あ。シルフィ!ちょっと待って!」
コロッツィオがを呼び止める
気だるそうに振り返る。
「なに??」
「あなたはマグヌメルムって呪文知ってる??」
「…知ってるわ…2人の時代にいたあいつらの血を継ぐやつが使ってた。」
「え?」
「あたしが知ってるのはこれだけ。じゃね。」
そうして消えて行った。
「どういうことだろ…?」
「ね〜。」
「ひとまずフィヨルス・ヴィドがキーワードですね。」
「全然しんないよ〜。そんな人〜。」
「だねー。」
三人は一呼吸。
「どうする〜?出る〜??でたい人〜」
三人の手が勢いよく、迷いなく空をきると、周りの景色はあっという間に元に戻っていた。
「あ。戻った」




