ドラゴンの王国-3
国王の間に通されるかと思っていたが、通されたのは自室だったようだ。扉を開けると年の割にはガタイの良い男性が立っている。右目に眼帯をしている。きつそうな顔つきだが笑顔で迎えてくれた。
「あの厄介な魔物を倒してくれたのはグビドの縁者だったのか!納得したぞ。お前たち名前は?」
それぞれ自己紹介する。キシュは最後に挨拶をした。
「グビドの娘のキシュです。」
「娘?あいつ子供いたのか…。っで?どうしたんだ?」
「あの…あたしたちのために祝賀会が開かれるって聞いて…」
「あぁ。そうだが。明日の夜予定している。」
「その祝賀会…。中止していただきたいんです。」
「なに?なぜだ?」
「僕たちはグビドから依頼を受けて動いています。」
国王は質問を返す。そりゃそうだ。
「それで?なぜ祝賀会を中止したいんだ?」
「どうもその依頼かなり危険だったようで…僕たちは狙われているような…」
「?!狙われてるとは…どんな奴らにだ?」
「え…っと…。まだ確証があるわけではないのですが…レルエナ帝国の暗部…。」
「レルエナだと?」
国王は考え込む。
確かグビドは今レルエナを探っていると言っていた。こっちにも影響があるのか??グビドは足跡を残さない。それではこの者たちも残してはいけない…。そうなるな…
「まだわかりませんよ。僕の憶測でしかありません。」
「…それで公の記録に残る祝賀会は中止したいと言うことか…。足跡は残さない方が身のためだ。わかった。中止させよう。それと今回の討伐の件も偽装させるようにする。」
「ありがとうございます!」
「いや。いいのだ。私もある程度事情は知っているからな。しかし、…私としても礼はせねばならん。」
「…お礼だなんて…」
「いやいや。義理とはいえ甥の命を助けてくれたのだから。それくらいせねばならんよ。」
「え?!」
「あの子は血は繋がってはいないとはいえ、私にとっては可愛い孫のようなものだ。」
優しく微笑む国王が印象的だった。その日はドラグーンに滞在することになった。コロッツィオとマリーは城の図書室へと向かうと言い飛び出した。キシュとサマーティーは城下町に買い物をしに出かけることにした。
石造りの道。賑わう露店。果物・肉のいい香り。2人は武器屋を探し歩く。
「なぁ、なんで突っかかったんだ?キシュらしくない。」
「え?あーぁ。ビッツのこと?
あたしも良くわからないわ。なんだか無性に腹が…」
「って…!ちょっ!!キシュ?!」
キシュがいきなり駆ける。サマーティーは驚いて追いかける。その先にはコブと一緒に歩くふてぶてしいジョージがいた。キシュはジョージの目の前に飛び出す。コブとジョージもいきなりの出来事に驚く。
「…お前は…。」
「ちょっと聞きたいことがあるの。」
「なんだ?」
「あなた、ビッツのお兄さんなんでしょ?なんであんなに冷たいの?」
キシュの問いかけに一瞬驚き、そしてため息がこぼれる。
「いきなり何かと思えば…赤の他人には関係ないことだ。どいてくれ。」
キシュの肩を掴み、押しのけ前へと進む。コブは笑ってキシュに話しかける。
「あいつはそんな酷い奴じゃないんだ。ただ…不器用なだけなんだよ。」
前からジョージがコブを呼ぶ。
コブはにっと笑い、ジョージのもとへ駆けていく。
「どうしたんだよキシュ?やっぱりらしくない。ビッツが好き…」
平手の音が響く。
「わかんないのよ。わたしだって…。兄弟なんだよ…同じ血を分けた…」
手が震える。なんだろう。自分には兄弟なんかいないのに。なんか変な感じだ。息が荒くなる。
なんだろう。頭がぐるぐると回る。記憶が回る。ループする。
「大丈夫?疲れ溜まってんじゃないのか?」
手の震えが止まる。サマーティーの暖かい手が包んでくれたおかげだ。不思議とぐるぐると回る変な感じも止まった。
「あ。…ありがとう。」
「どうする?戻るか?」
「大丈夫よ。それよりも武器を新調したいわ。これから先の道のりは結構厳しいはず。」
「まぁ。そうだな。北上するにつれ魔物は強さをますからな…」
「えぇ。だから行きましょ。」
「そうだな。」
「手は離してよ。」
「あ。ばれた?」
「バレバレよ。言っとくけどあの時の事忘れたわけじゃないでしょうね?」
「あの時の事?」
とぼけた表情にむかついた。
抑えていた感情が漏れる。
「あたしはあんたの事好きなんかじゃないの!」
「わかってるよ。だから好きになってもらえるように頑張ってるんじゃないか。」
当たり前のようにさらりと発言するサマーティー。言われたキシュが照れる。
「どんなに頑張ったって、どうにもならないわ。」
「わからないさ。」
「ふん!」
腹が立つ。どこまで本気でどこまで嘘なんだろうか、この女たらしは。男性経験がないからと言って騙されはしない。サマーティーを睨むと笑顔がかえってくる。
気まずい。
とぼとぼと武器屋にむかった。




