ドラゴンの王国-1
冷たい風で気がついた。
広がる世界に大地はない。あたり一面青い空。
「キシュ!!」
サマーティーが強く抱きしめてくる。いつも通り平手を繰り出そうと動こうとした。
「落ちるぞ。」
男性の声が聞こえた。
突然の知らない声に驚く。手をゆっくりと引っ込める。
「そういうこと。」
「あんた…後で覚えときなさいよ。」
「はいはい。」
サマーティーの空返事にむっとする。
「ところでここは…」
「飛竜の上だよ。」
「え?なんで?」
「あの戦闘が終わってから、少しして来てくれたんだ。俺らの戦闘で強い魔力が感知されたらしい。」
「あぁ。確かにあの魔物の魔力は強かったわね。」
「あれも相当だったけど。俺はキシュの力だと思うんだ。」
サマーティーの囁きに、呆気を取られる。なぜ魔力の無い者から感知できるのだ。サマーティーはキシュの心を察するように笑い、また囁く。
「あの時のこと覚えてないだろうけど、キシュから物凄い光がでてすごかったんだぞ。一瞬であの魔物倒したからな。」
「え?…そうなの?」
「まぁ後でゆっくり話すよ。」
「わかったわ。ところで、今どこに向かってるの?」
「ドラグーンだ。あと少しかかるみたいだ。もう少し休む?」
少し考える。ムカつくけれど、今の態勢はとても楽で気分がいいし、どうやらよっぽど疲れているようだ。
「そうさせてもらうわ。」
ため息のように返事をし、サマーティーの胸にもたれて目を閉じると、すぐに意識は遠のいった。
すぐに静かな暗闇がキシュを包む。
笑う少女の声。穏やかな午後の光。大きな暖かな手。幸せで満たされる。
声が響いた。
「お姉ちゃん」
「キーーシュ〜!!キーーーシュっ!」
「ちょっ!静かにっ!」
間の抜けた声と焦り越え。顔の前で名なにやらやり取りしている。慌ただしさで目が覚める。
「んん…」
「おはよ〜。」
「おいっ!起こすなよ!」
ぼんやりとした頭でもわかる。
サマーティーがお姫様抱っこをしていることが。すぐさま飛び降りる、振り向くと、皆座っているそれに目の前には誰も座っていない長椅子。…ということはこの男は座っていながら自分を抱き続けたということになる。長椅子に座らせずに。
顔めがけ平手を繰り出され、いい音が響く。
「だからおこすなっていったじゃん!」
恨めしそうに、サマーティーはマリーとコロッツィオにいった。2人はクスクス笑ってごめんごめんと返す。
「2人とも起こしてくれてありがとう。」
「当然のことよ!」
あたりを見回す。少し広めの部屋。石造りので寒さをしのぐため、カーペットが辺り一面にひかれ、壁には毛皮で埋め尽くされている。大きな窓から光が降り注がれ、明るい。
「ここは?」
「ドラグーンの城だよ。」
頬をさすりながらサマーティーがこたえる。
「ところで、あなたさっき言ってたわよね?」
「ん?」
「あの魔物との最後。何があったの?」
サマーティーの前に、コロッツィオが答えた。
「キシュがわけわかんない呪文を唱えたの。そしたら、それが突然光って、物凄い魔法が発動したのよ。」
コロッツィオはキシュの首飾りを指差す。首飾りには大きめでまん丸とした淡い水色の宝石がついている。キシュは手にとってみた。
「これが?」
「そう。…一体なんだったのかしら?あたし、結構魔法史は得意なのに、あんな魔法は初めて見たよ。なんなんだろ…。マグヌメルムなんて聞いたことない…」
「マグヌメルム?」
「キシュが唱えた魔法だよ。」
首飾りをはずし、宝石を手にとって見つめる。自分が物心ついた時から持ってた首飾り。なんで?
部屋をノックする音が響く。
マリーが席を立って、扉を開けると食事と一緒にビッツが入ってきた。
「みなさん調子はどうですか?」
「ばっちりだよ~!」
「キシュさんも大丈夫そうで良かったです。」
「心配してくれてありがとう。このとうりもう平気よ。」
キシュたちの座っていた椅子の前のローテーブルに食事を置き、どうぞと一人一人にビッツは料理を手渡す。焼きたてのパンに、お肉がふんだんに入ったシチュー。どれもこれも美味しそうだ。ドラグーンは肉料理が有名なのだ。
「ところであたし達なんでお城に?」
「国王様から感謝状が授与されるんです!物凄く名誉なことなんですよ!」
「え?!なんでそんなことに?!いらないし!!!」
今は目立った動きはしたくない。
感謝状なんてもらってしまうと、公に足跡が残るじゃない。
サマーティーの方に目をやると困惑した表情が見える。サマーティーも始めて聞いたようだ。
「ビッツ!あたしたちそんなのいらないわ。」
「え?でもそんな。祝賀会の準備がもう…」
「いいから!国王様に会える?」
「え…僕じゃ…」
「それじゃ誰に言えば会えるの?」
ビッツは困った顔で答える。
「…兄さんなら…」
ビッツの両肩をがっしり掴む。
「お兄さんに会わせて。」




