〓ひさしぶりの場所〓
ハッキムでのやりとりをサマーティー視点で書いて見ました。
ハッキムのカジノオーナーは今は亡き、マキニアのギャング・コーフィンの妻レベッカが経営している。レベッカはその美貌と頭脳明晰さで、部下から慕われている。一悶着あった時期、サマーティーは用心棒としてよく雇ってもらっていた。腕を買われて、一味に誘われたりしたが、いつも彼は断っていた。彼には常に求めるものがあったからだ。レベッカはサマーティーの頭の良さを気に入っていた。しばしば、彼と話をした。そこで、彼の歴史に対する探究心に興味をもってくれた。だから彼女はサマーティーを引きとめなかったのだ。用心棒としての仕事が終わってからも友達として、付き合っていた。今回レベッカの部下がすぐにサマーティーを見つけ、ホテルを手配してくれた。そのお礼をいいにサマーティーはレベッカの元に訪れた。彼女は相変わらず美しかった。少しのおしゃべりをし、礼をした。彼女を危険な目には合わせることはできない。
サマーティーは彼女には深い話はせずに帰った。レベッカの部下であるメルシアがサマーティーを送り届けた。彼女も用心棒時代仲が良くなった。尻の軽さは紙のようにペラペラだが、口の硬さはダイヤのようで、とにかく変わった女だ。メルシアは鼻が聞く。マキナの血が強く、危険を察知する能力が長けている。もちろん腕っ節もいい。極め付けに、いい体をしている。男には不自由していないと聞いている。そりゃそうだろう。
夜こっそりレベッカに呼ばれ酒場へ行くと、懐かしいメンツが酒を煽っている。一緒に酒を酌み交わし、最近の動向について聞いてみると、ここはレベッカとドラグーンによるいい感じの関係が築けているらしい。それもこれもレベッカの人間性の賜物だろう。
ドラッグに手を染めている他のマフィアは片っ端から潰しにかかっている。恨みを買っているから、その対象で大忙しのようだ。早めに切り上げ宿に戻り別れを告げるのを忘れたので、少し皆には待ってもらった。
メルシアがいつも酒を飲んでいる酒場に向かうと、いつもの席でいつもの朝食をとっている。近づくと、すぐにこちらに気がついた様子。
「こんな朝っぱらからどうしたのよ?」
「今日立つから、挨拶に。」
「そっかそっか。それはいいわー。あんた、昨日の話じゃ相当厄介ごとに巻き込まれてそうだし。こっちに迷惑かけんじゃないわよ。」
「わかってる。だからお前んとこにきたんだよ。」
「ふふ。オーケー。レベッカには私からちゃんと言っとくわ。」
「よろしく頼むな。」
「わかってるって。それより何もなしでお別れなんて、さみしいわね?」
「そうか?」
サマーティーは知らんような顔をして、メルシアのコーヒーのカップを奪い、口にした。
「あたしまだ、あんたの味しらないのよ?おかしくない?」
「何もおかしくないだろ?」
「ふふ。そういうところがまたいいんだけどね。」
メルシアはニヤニヤしてサマーティーに言った。いつものやりとり。いつもの別れのやりとり。
「それじゃぁな。」
「死ぬんじゃないよ。」
お互いの頬にキスをして別れの挨拶は終わるはずだった。
メルシアはサマーティーの首元を最後にぐいっとひっぱり唇にキスをする。いつもと違う挨拶。
「!」
「どうした?メルシア。」
「あんたの後ろ。右奥から物凄い殺気を感じるわ。」
素知らぬそぶりでメルシアの言う方向に目をやった。
「え。え!えぇ!!?」
思わず声が漏れる。サマーティーの目の先にいたのは物凄い形相をしたキシュと、女の子二人。
「ん?あんたの仲間?」
「あ。あぁ。」
どうやってこの場をやり過ごそうか、とにかく考える。しかしいい案が思い浮かばない。そんなサマーティーを横目に色々と気がつくメルシア。ニヤニヤしてサマーティーが振り向くまで呼んだ。
「なんだ…!」
唇にメルシアの唇が触れる。サマーティーの血の気が引いた。メルシアは大笑いし、席を立ちその場を去っていく。
キシュのあの形相からして絶対に誤解してるはず。サマーティーはとにかく誤解を解くためにキシュと話すため、キシュの方へと歩いていく。サマーティーが近づくにつれ、キシュは逆方向へと歩いていく。まるで、磁石の反発作用のようだ。
「ちょっ!まって!!キシュ!」
酒場を抜けるキシュ。一気に走って右腕をつかんだ。
「なによ?」
「それはこっちのセリフだよ。なんでここに?」
ハラハラする女の子たち。よーく見るとマリーとコロッツィオだ。
「なんで二人とも変装してんの?」
「こ…これは!え…えぇ〜っと…」
「2人がお洒落したいって言ったから、ショッピングしてたのよ!変装じゃないわ。」
腕を組んで睨みつけるキシュ。
絶対に嘘だと思った。
「なんでそんなに怒ってんの?」
「怒ってないわ。」
「いや。怒ってるだろ?メルシアとキスしたから?それなら誤解だ。あいつは誰にでもあんなんだし。」
キシュは睨みながら鼻で笑う。
「そんなのどうでもいいわ。あんたあたしが嫉妬してるとでも思ったの?自惚れすぎじゃない?」
アッパーパンチをくらったような衝撃。かなり傷ついた。マリーとコロッツィオはハラハラ。キシュはすっきりした面持ち。
「サマーティーも用事は終わったようだし、出るわよ。いい?皆。」
異論はなかった。
一向はハッキムを後にする。
サマーティーは後ろをトボトボ歩いている。コロッツィオが横にきてくれた。
「サマーティー大丈夫?」
「あ。ごめん。」
「なんで謝ってんの?謝んのはこっちよ…ごめんね。あたしと姉さんが言い出したんだ…。」
「え?」
「サマーティーの後つけよって。だってサマーティー、ハッキムについてから様子変だったじゃん。」
「そうだったのか…。まぁ俺も何も説明してなかったもんな。」
「あの人、サマーティーのいい女なの?」
「まさか!んなわけないって。あいつは友達だよ。誰にでもあんなんだよ。」
「そんなんだから怪しいんだよ。友達がキスする?」
「あいつにとってはキスなんて握手と同じだよ…
しかもあいつ平気に寝首かくような殺し屋だぞ。怖くて俺無理…」
「?!なんでサマーティーがそんな人と友達なの??」
「昔ハッキムで、マフィアに雇われたことがあったんだよ。それで。あそこのボスとも仲が良くなって、昨日は挨拶しに行ってたんだよ。」
「なるほど…。なんだか納得だわ。」
「な!誤解だろ?」
「私の誤解は解けたけど、…ねぇ。」
コロッツィオはキシュの方をみる。
「まぁ、これ以上さっきの話しはしないことね。きっとキシュのなかでは終わってるわよ。」
「そうだよなぁ。はぁ、自惚れかぁ…。キッツイなぁ。まっ。自惚れっちゃ自惚れなんだけどね!」
「サマーティーは落ち込んでるより、女の子たらしてる方がいいわ!」
「コロッツィオ…ありがとな!」
勢い余ってコロッツィオに抱きつくと、威勢良くビンタがかえってきた。
「あたしにはそれしないで。」




