ハッキム-3
サマーティーの横にいたのは、誰もがウットリするような女性。
一つにまとめたブロンドのウェーブヘアー。透き通るような空色の瞳に泣きぼくろ。真赤で上品な唇。そして何よりも、美しいボディライン。胸なんか、キシュの三倍もありそうだ。
なんだか変な気持ちになった。抱きついてきたり、キスしようとしたり自分にちょっかいをだしている奴が、実は超絶美人と話している。しかもおふざけしていない様子。なんだろう?もやっとする。
「すごい綺麗な人だね~。あたしもあんなバディーになりたい~」
「マリー静かに!」
「キシュ。ここからじゃどんだけ頑張ったって、しゃべり声は聞こえないよ。」
コロッツィオが言わなくたってそのくらいわかってた。
声なんか聞こえない。そんなことくらいわかっているはずなのに、必死に二人の会話を聞こうとしている。無我夢中で。読めもしないのに、唇の動きをみたりもした。
サマーティーが相手のカップをとって飲んでる。モヤモヤ
お互いの頬にキスをしている。
挨拶だ。それでもモヤモヤ
キシュは自分がモヤモヤしている理由はサマーティーの悪ふざけのせいだと思い込んだ。あの男にとって女なら誰だっていいのだ。いちいち相手をしていた自分に腹が立つ。
相手がサマーティーの首元を引っ張ってキスをしている。
キス!?
「ちょっ!キシュ見つかるよ!」
コロッツィオとマリーの声を無視して、キシュは立ち上がってしまった。
「落ち着いて~!キーシュー!」
マリーとコロッツィオが必死に肩を引っ張ると同時にサマーティーがこっちをふりむく。目があった。
サマーティーは顔面蒼白でうつむいてしまった。すると横にいた女の人と目が合う。ニヤニヤ笑っている。気に食わない。するとサマーティーともう一度キスをして、立ち去って行った。怒りが頂点に達した。
「きゃ!」
マリーとコロッツィオの手を振り払い、キシュは立ち上がってしまってその場を去ろうとすると、サマーティーが急いでかけてくる。こっちも急いで店を出る。腕を掴まれた。
「なに?!」
「それはこっちのセリフだよ!なんでここに?」
三人はドキッとした。サマーティーが何してるか気になって後をつけたとか言えない。サマーティーがマリーとコロッツィオに気がついた。
「なんで二人とも変装してんの?」
「こ…これは!え…えぇ〜っと…」
「2人がお洒落したいって言ったから、ショッピングしてたのよ!変装じゃないわ。」
とっさに出た自分の嘘の出来栄えに満足する。そうだ。自分はこんなチャラい軽い男に遊ばれる女ではないのだ。キシュは今ならなんでもできそうな気分だった。
「なんでそんなに怒ってんの?」
「怒ってないし。」
「いや。怒ってるだろ?メルシアとキスしたから?それなら誤解だ。あいつは誰にでもあんなんだし。」
馬鹿じゃないの?キシュは鼻で笑った。サマーティはまさか、私が惚れているとでも思っているのか?
「そんなのどうでもいいし。あんたあたしが嫉妬してるとでも思ったの?自惚れすぎじゃない?」
サマーティの呆気にとられた顔。笑いそうになる。
サマーティのプライドに傷をつけれたことで怒りは消えた。満足だ。ざまぁみろ。
少しの罪悪感は感じつつもそんなのは放っておいた。
「サマーティーも用事は終わったようだし、出るわよ。いい?皆。」
三人とも異論はなさそうだ。
ハッキムを後に一向は目的地のベルゾナッドへ向かう。セルエの森を超えるのが一番の近道だ。途中町がないのがきついが一日野宿すればいいだけだ。
キシュの横にはマリーが。
サマーティは後ろでトボトボ歩いてる。見かねたコロッツィオがサマーティのそばへ行った。
マリーが心配そうに話しかける。
「キシュ〜…。いいの?」
「なにが?」
「サマーティだよぉ〜。」
「いいのよ。本当のことなんだし。」
「まぁそうだけどぉ〜。サマーティの秘密勝手にこじ開けたのあたし達だよ〜。」
「ま…まぁ。そうだけど。秘密にしてるほうが悪いのよ。」
「秘密って大事だよ〜!あたし達に迷惑かけないためかもしれないしぃ!!」
「…」
キシュが考えていない言葉をマリーは言う。秘密。自分勝手な解釈をしてしまっていたのかもしれない。と思った。後ろの方でコロッツィオがサマーティを殴っているのを二人はちらりとみえた。
「あいつがそんな心遣いできるのかしら?」
「…ぅ〜ん…。わかんない〜」
マリーは苦笑いで応える。
「でもサマーティも普通になってるしぃ〜。まぁーいいんじゃな〜い?」
「そうね。」




