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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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旅路-5


洞窟から出て来た道を戻り、宿へ向かった。とにかく休まなければ。襲いかかってくるモンスターとはあまり戦わず足早に帰路へと向かう。

サマーティはあの後何事もなかったかのように接してくれた。それでも気持ちのモヤモヤは消えないし、かえって大きくなる。


「あれー?!臨時休業??」


マリーが驚くのも無理ない。朝あったはずの看板はなくなっていた。窓から覗くと、真っ白いシーツで家具は覆われている。

キシュが扉に貼られている紙切れを睨む。


「はぁー?!なんでこんな時期にバカンス行ってんのよ!」


どうやら宿主達は少し早めにバカンスを楽しむようだ。疲れ果てた体を少しでも早く癒したかったのにそれができず、キシュは苛立っている。


「まぁまぁ落ち着けって!代用の宿があるって書いてあるし…」


サマーティーは紙切れの続きを読む。

が、代用の宿はここから4-5キロ離れた先の村と書いてある。怒り爆発寸前もみんなは渋々示された宿へと向かった。

着いた時にはもうヘトヘトで何をする気にもなれなかった。とにかく用意されている大浴場へと一向は向かい疲れを癒し、上がるや否やベッドへ潜り込んだ。1人を除いて。


キシュはサマーティの部屋をノックした。返事がない。ねむっているのだろうか?鍵がかかっていない扉を開けるとサマーティの剣先が出迎えた。


「悪い…。いつものくせで…」

「いいの。普通のことだわ。」

「どうしたんだ?キシュが俺の部屋にくるなんて?」

「…謝りたくて…」


サマーティは剣をしまいベッドに座ると、キシュもその横に座った。


「…。キシュが謝ることじゃないよ。」

「サマーティが言ってることわかるんだけど、やっぱり誰かが死ぬのは嫌で…。って、なに言ってんだろね?私…こんなんだから父さんにまだまだ認められないんだよね…。」


乾いた小さな笑い声が虚しい。

自分の甘さ。けれど捨てたくない想い。矛盾した感情は胸を小さくそして深く刺す。


「キシュの感覚は普通だよ。」

「むしろ俺が麻痺してるんだよ。昔はさっその辛さ俺も抱えてた…。けど捨てたんだよねー。痛みに耐えきれなくて…捨てる方が気楽だからって…。」


いつもと違うサマーティ。塞いでいたものを開けてしまった気持ちになった。


「ごめん…。なんか変なこと言った…」

「いやいや!俺もなんか自分語りしてごめん。」

「ううん。なんかあんたの話聞けてちょっとスッキリした。ありがとう」


「強くなればいい。そしたら殺さなくて済む方法があるはずだ。」


その真っ直ぐな瞳にはいつものいやらしさがない。心に響いた。そうだ解決策はいつだって単純。けれどとても険しい。けれど逃げれば負ける。そんなものだ。そう。強くなればいい。圧倒的な劔は最大の盾。


「そうね!強くなりましょ!」



自分がいかに口だけの存在だったのか痛感した。甘い。そして恥ずかしいほど世界が狭かった。今回の旅で自分の実力を嫌なほど実感した…。このチャランポランなサマーティーにすら自分は追いついていない。それに気がつけただけ価値はある。父が一人旅を反対したのが今なら少し理解できる。


大きな手。横にあるサマーティの手にふと目が引き止められる。この手で何度守られただろう。

ありがとうの気持ちで胸がいっぱいだ。


「!」


キシュの熱い視線が自分の手に向けられていることに気がつく。


ーこ…これは…



ー…いける!!!




確信した。よくあるではないか、弱っている女子はガードが緩むと!サマーティはジワリジワリと手を動かす。


ーし…しかし!!こんな状態で落として何の意味があるというのか?!本気で悩んでいる!しかも色恋沙汰以外で…!!!もし失敗でもしたら流石にメンタルが…!


生唾を飲む。

サマーティーの手はジワジワとキシュの方へと伸びたり止まったり。誘惑と懸命に戦う。


「それでなんだけど。」

「わ!」


いきなりキシュが喋りかけたので驚いて両手をあげてしまうサマーティ。不思議に思うキシュ。


「なに驚いてんのよ?」

「べ…別に。なんでもないよ!」

「?まぁいいけど…。今日の件どう思う?」

「今日の件??え?今日???なんかあった?」

「あったに決まってるでしょ?あの二人組!」

「あ!あぁ……。きっと今日の奴らも、こないだの奴らもその宝石目当てで間違いないだろう。」

「ソリティアの集落の件もなのかしら?」

「俺は違うと思う。」


確かに、ソリティアの集落で起こった戦いは無差別だった。それに比べて静寂の森やドビッシの祠で戦ったやつは明らかに宝石を狙っていた。


「たしかに、そうね。目的が違ったように思えるわ。一体なんなのかしら?」

「わからない…。俺はこんなことが起きるなんてグビドから聞いてなかった。こんな危険な仕事だって。」

「あたしもよ…。」

「ひとまずドラグーンを経由してさっさとベルゾナッドに向かおう。」

「そうね。こんな危険な仕事早く終わらしたいわ。」


サマーティの部屋を後にして、廊下を歩く。今日の事を考えた。あの少女と青年。異国の文字が刻まれていた。何かのマークのようにも見えた。確かそんな集団が居たような気がするが思い出せない。ドラグーンで探る必要があるかもしれない。やらなくてはいけない事が沢山ある。

ため息をついて自分の部屋へと戻った。マリーとコロッツィオはスヤスヤ眠っている。キシュもその隣のベッドに潜り込み眠りについた。




「おはよ〜!!」


マリーの元気一般の声で目が覚めるキシュ。まだ眠い。目をしばしばさせ、窓に目をやるとしとしと雨粒が落ちている。


「やだな雨。」

「本当嫌よ。髪の毛がひどい事になっちゃう。」


コロッツィオの方を見るといつもよりも頭が大きいのがわかる。


「天然パーマって大変そう。」

「全くその通りよー。気分はブルーだわ。もうこれ以上抑えるのは無理。」


コロッツィオは肩を落とす。

サマーティを起こして、出発した。ちんたらと歩いている暇はない。一向はドラグーンへと向かった。




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