旅路-4
何が起きてる?宝珠?あの宝石のことだろうか??こいつらは一体何者だ?キシュは頭を必死に働かす。どちらにせよ、こいつらに渡してはいけないことはわかる。
目が泳いでいる。
ビンゴ。90%の確率でこいつらだ。
卯月は長月を見る。長月も同じ結論だ。2人はバレないよう、こっそり魔法陣の紙を手に取りこの状況をキャプチャした。
「手荒なことは避けたいの。それを渡してくれる?」
「!!」
キシュの前にサマーティーが立つ。
「なにいってんだ?宝珠ってなんの事だ?」
「とぼけても無駄だぞ。」
「とぼけてなんかいない。」
「本当の事いってくれたら、命は見逃してあげるわよ?」
「何言ってんのよ…?」
キシュ達は立ち去ろうと、後方にジリジリと歩く。
「逃がすかよ。」
両手を組んで長月は念じる。
すると上下の岩が口を閉じ、逃げ道を防ぐ。
「くそっ!」
「やるしかないじゃない…」
逃げられない…。4人はとにかく戦闘態勢にはいる。一方だるそうに戦闘体制をとる卯月に長月。
「あー。くそっ!こんな状態でやらなきゃならねーのか。」
「本当…最悪よ。」
まずは誰から狙えばいい?厄介だ。かなりの攻撃力をあの娘はもっている。その横の奴は…魔法?を扱う…。
キシュはターゲットを決めた。サマーティをみると、彼も同んなじことを考えていたのがわかる。
2人は駆け出す。まず動いたのはキシュ。二刀の刃が長月に振り下ろされる。しかし、その攻撃はウチワの持ちてで防がれる。
その隙にサマーティが後ろから斬りかかるが卯月の蹴りで邪魔される。
後ろに引き下がる。
「やりにくいわね。」
「集中攻撃は無理だ…。さしでやり会わないと…。」
「さがってぇぇ!」
マリーの一声。2人は急いでその場から離れる。
炎が矢のごとく放たれ、卯月と長月を襲う。
長月はウチワを一振りし、炎から身を守っている。
「あっつー…」
卯月の方は少々ダメージをくらっているようだ。
「ザルアが仲間にいるの?」
「そのようだな…。」
「嫌だなぁ…魔法攻撃の耐性が下がってるのに…。」
「俺は回復系は苦手だぞ。」
「知ってるよ…。あたしはあの黒い女の人狙うわ。」
卯月がマリーに拳を振り下ろす。マリーはどうすることもなく、頭を抱える。
「?!」
卯月の拳は見えない盾に邪魔された。これは知っている。防御魔法だ。辺りを見回す。コロッツィオが息を切らして驚いている。
「で…できた…」
「コロッツィオ!ありがとう!」
卯月は一歩引き下がる。
「どういうことなの?あれは…。」
「見た目からしてルラじゃない…ソリティアか?」
「状況が変わってきてるね…。」
「そうだな…。今の状態じゃ不利だ…。」
「マリー大丈夫?!」
「うん!平気だよ!コロッツィオが防御魔法かけてくれたの!」
「すげーじゃん!さっきできないって言ってったのに!」
「本番に強いってことよ!私やっぱ天才…」
キシュ達は作戦を立てるため集まった。すぐに口を開いたのはサマーティだ。
「俺は女の子に傷つけるのは嫌だから頼むわ。」
女子一同呆れ顔。
サマーティが長月に向かう。キシュも卯月に向かう。
キシュの攻撃をかわす卯月。
蹴りが腹にあたり、体が宙に弧を描く。
その間にマリーは炎の攻撃を放つ
卯月は防ぎきれない。
サマーティの剣は長月を襲っている。ウチワの持ち手で防いでいてもどうすることも出来ない。サマーティの蹴りで長月は後ろへ吹き飛ばされる。勢いよく壁にぶつかる。肋骨が何本か折られたようだ。血を吐き出している。
長月は手を組み念じた。大地の岩が浮き上がり、長月の身を守る。
サマーティの剣は岩に邪魔されて直撃できない。
それでも諦めずに振るい続ける。
「さて…どうしたもんか。」
サマーティは長月を見つめ守りの薄い部分を見つけようと必死だ。その間は長月の攻撃が繰り広げられる。大きなウチワから風の刃が放たれる。かまいたちだ。一振りに複数の風が襲ってくる。よけきれない。肌を何度も切り裂かれ、血が垂れる。
どこだ?どこかあるだろ…。
目を絞り見つめると、足元にピントがあたった。
大地から吹き出される土が上へ上昇するにつれ、硬い岩に構築されている。あそこだ。
風の刃は避けれない。相手に近づけば近づくほど、傷が深くなる。
痛みに耐え、間合いをつめ振りかざす。
長月が声を殺し、膝間付いた。
「長月!!?」
卯月が振り返ると左足首からふくらはぎにかけて大きく切り裂かれた長月がいる。ちがあふれでている。長月は苦しながらも両手を組み念じた。大地から水が勢いよく浮上し、傷口をかばっている。血の吹き出る威力は治まったがこのままでは出血多量で危険な状態だ。
俺の計算では足首の切断はできたはずだ。すんでで、防御集中させたな…。なんて奴だ…。
キシュは武器を直す。
その場にいたもの全ての手が止まる。
「キシュ?どうしたんだ?!」
「これ以上はもういいでしょ。相手は戦えない状態だわ。」
「何言ってんだよ?こいつらやっとかなきゃ後々厄介だぞ!」
「殺しはしない!!」
2人がやりとりしている隙に卯月は長月を左肩に抱える。
「大丈夫?」
「俺はいいからやれ!」
「ダメよ…ここはいったん引く…。相手も止めてくれてる。それに奴らの顔もとれてる!今は無駄死にするもんじゃない…」
卯月はキシュ達の方を振り向く。
「感謝するわ。この恩は決して 忘れない。けど注意して…その甘さが仇となるわよ。」
卯月がポケットから、魔法陣の書かれた紙を取り出す。魔法が発動し2人の姿は跡形もなく消えた。
閉じられた岩は元に戻った。へなへなと皆腰を落とした…。けれどサマーティーだけは違う。いつもの優しい笑顔がない。
「キシュ!あの娘のいう通りだ。今回は丸く収まったけど、あんなのラッキーなだけだ!!」
「なんでよ!人を殺すなんてだめよ!」
「殺さないと、こっちが殺されるんだぞ!!」
返す言葉がなかった。
わかっている…。そのくらいわかってるけど…
「…ごめん。言いすぎた…」
サマーティは背を向け、いままで塞がれていた道へと歩き始める。
「キシュ…キシュは間違ってないよ。殺しなんてやっちゃいけない。」
コロッツィオがキシュに優しく言葉をかける。
涙がうっすら目を覆っているのをすぐに気づいたから。
「ありがとう。…でも、サマーティの言ってることもわかるんだ。」
「うん。あたしも…わかる…」
「二人ともいこー!!」
マリーの間の抜けた声で2人は笑ってその場を立ち去る。




