旅路-3
「おはよう。キシュ」
頬に柔らかな感触とサマーティの声。頭は働かないが適当に左腕を振り上げた。
「ったーーーー!!!」
サマーティの叫び声とマリーとコロッツィオの笑い声が聞こえる。むくりとベッドから立ち上がりひとのび。
「サマーティーって本当にこりないよね〜。」
「でも俺のキスで起きたぞ。」
「ちょっ。キス?!!」
ついつい口が滑ってしまったことに今気がつくサマーティー。朝からボコボコを覚悟した。
「サーマーティー!!!!」
「いや!いやいやいや!違う!ホッペに軽くしただけ!ホッペ!ホッ!」
いい音が宿に鳴り響く。
サマーティの左頬は大きな赤いもみじ。静かな食事。サマーティの目は涙ぐんでいる。
そんなの御構い無しに、コロッツィオが口を開く。
「今日サラマンダー倒したら、モンスター討伐もいったんお終いだよね?」
「そうよ。サラマンダーはここの近くにあるドビッシーの祠にいるみたい。」
チラチラと視線を感じる。
けれどもその主が誰なのか見当がつかなかった。宿の亭主はずっと帳面を見てるし、おかみさんは厨房で料理をしている。
気のせいだとキシュは思う事にした。
一向は仕度をして宿を後にし、ドビッシの祠へとむかった。
亭主は窓から一向の背中を見ている。
おかみさんも厨房からでてきた
「ご苦労さま。」
亭主とおかみさんはその場に膝まづく。
どこから、現れたのかそこには黒ずくめの少女が立っている。
「どうしたの?アベド教徒達??」
「いえ…違うのですが…」
「?ではなぜ呼び出しを?」
「不信なもの達がいましたのでご連絡いたしました。」
「…聞きましょう。」
「ここら辺のモンスターハントは賞金も少なくグループで行動するハンターは滅多に来ません。それに彼らは10年は放置されていたサラマンダーを討伐すると言っていました。」
「…確かに変ね。」
「先日連絡のあった不審者達。カイゾン飼育施設の事件。もし同一人物であれば、このルートを通る可能性もあると推測いたしました。彼らはカイゾン事件の容疑者の特徴であった大きな刀とダガーを所有していました。」
「…念には念を…。」
「我ら"影の葉"は些細な疑念も抱えてはならない。報告に感謝するわ。それでどのくらいの力量かわかる?」
「さほど強くないかと思われます。」
「ケーシュがそう感じるならそうなのかしら…。でも侮れないわ。水無月と皐月の攻撃を回避してるんだもの。」
「ドビッシの祠には誰が?」
「卯月と長月を転送してもらっている。」
「それなら問題ないですね。」
「そうだといいけど…」
「?どうされたのですか?」
「例の件で、長月も卯月も結構疲労してるのよ。今出せる力はいつもの三分の一くらいじゃないかしら。」
「?!大丈夫なのですか?」
「わからないわ。けど今出兵できるのは彼らだけだからね…それよりも…」
「?」
「心配は体力とかの問題じゃないのよね…」
「?」
ため息が一つ。少し呆れながら少女は言ったが、2人には理解できなかった。
ドビッシの祠はジメジメとして薄暗い。あたりには獣の骨が転がり、水滴がいたるところからこぼれている。
「うわぁ!ちめたっ!」
「男のくせに…なさけなっ…」
「ごめん…。」
意外にもなよいサマーティーに呆れるコロッツィオ。
「薄気味悪い場所…。2人とも大丈夫?」
「あたしは平気!凄く楽しいわ!」
「あたしも~!外の世界っていろんな場所があるんだね~」
思っていたよりも強くて安心した。2人の瞳はキラキラしている目新しいものはすべてワクワクものなのだろう。一向は奥へ向かった。ドビッシの祠自体はこの洞窟の最深部にある。
面倒だ。もし深傷を追ってしまったら戻るのに時間がかかる。今だって、魔物を倒しながら進んでいる。何事もなければいいのだが。
「サラマンダーってどんなのかな??」
「火吹きトカゲだ。伸ばしたら腰の高さまである。」
「ヘェ〜。」
どうやら最深部についたようだ。様子がおかしい。
「??サラマンダーって人なの?」
まだ姿も見えないのにマリーは呟いた。
「?何いってるの?んなわけないよ」
「この感じ。人だよ?ねぇ?コロッツィオー」
「そうね。人だわ!」
突如突風が襲ってきた。いや、ひきよせられている。突風はキシュ達を引き寄せ、祠の中央で叩き落す。
「っー…」
顔をあげるやいなや、何かが物凄い勢いで向かっている。
「皆離れて!」
キシュとサマーティは大きく後ろにジャンプした。
コロッツィオとマリーは腰をつけたまま後ろに引き下がる。
大地が飛び散る。
「きゃぁぁ!!」
「マリー!コロッツィオ!!」
直撃は防げたものの、飛び散った大地が2人にダメージを与えている。
「やっぱりダメだね。」
手についた土を払いながら少女が呟く。ピンク色のウェーブのかかった髪。顔は白地に紫の線が右から左に無数に筆付けされている面で覆われている。目の部分は二つ大きな穴が開いていて翠の瞳が写っている。先ほどの撃が彼女から出されたものだと信じれない。
「まぁ。大丈夫だろ?」
奥から、健康的な褐色肌これまた、顔を左側に大きな菊が描かれた面で覆っている。目の穴からは水色の瞳が覗いている。長いドレッドヘアーを一つに束ねた青年が長の一文字が記された巨大なウチワを背にしょいながらこちらにくる。
「悪く思わないでね。あんた宝珠もってるわね?渡しなさい。」
「?!」




