第一章『一緒に悪を潰そうぜ』その1
第一章 一緒に悪を潰そうぜ
七月二十三日 午後十二時三十分
やかましいセミの鳴き声にも、汗で張り付くシャツの感触にも慣れてきた夏休み目前の正午過ぎ。俺は文庫本片手に少し汚れた天井を眺めていた。開け放たれた窓から入ってくる生暖かい空気がなんとも心地悪く、不快指数は現在進行形でグングン上昇中。
大学の夏休みはとにかく長い。だからといって俺は進んで旅行の計画を立てるわけでもなく、無意味に引きこもってインターネットやオンラインゲームに没頭するわけでもなく、ただ「なんで学費が高いのに休みばかりなんだ」という故郷の母親のぼやきなんかを無意味に思い出したりしているだけ。
俺はぼんやりとお盆くらいには実家に帰っておこうとだけ考えて、部室の気だるい雰囲気の中に身を沈めた。
ここは大学の第三部室棟一階の一室。その木製のボロ引き戸の上には『世界治下経済研究会』のプレートが掲げられている。この会に籍を置くのは全部で五人で、今は俺を含めた四人がこの部室にいる。
「なあ、オビワン」
部屋の気だるさそのままの声が俺を呼んだけれど、手にした文庫本に視線を落とすフリをして無視。
オビワンというのはあだ名で、決して俺が外国人だとかハーフだからとかいうことではない。そしてその由来もライトセイバーを振り回すのが得意だからではなく、名前の字面からついたものだということも先に言っておきたい。
小尾一という俺の名前を見た先輩――今の声の主であるキリュウさんの「オビワンのほうがカッコイイ」という一言で、俺は入学三日目にしてめでたくそのあだ名を拝命したわけだ。
ちなみに今返事を返さなかったのはその呼ばれ方が気に入らないからではない。単に相手が何と続けるかがわかってしまったからである。
「おいオビワン」
「またパシリに使う気なの?」
二度目の呼びかけに応えたのは、俺ではなく備品のパイプ椅子に座っていたナコさんだった。俺はこちらに向いていたキリュウさんの視線がなくなったことを確認してから顔を上げた。
「パシリとか聞こえが悪いな」
キリュウさんが面倒くさそうにタバコの煙を吐いた。南向きの窓から差し込む光で逆光になっているにも関わらず、その金髪はやはり目立っていた。開襟の派手なアロハシャツに身を包んだその姿はどう見てもカタギの人間ではないように見える。この同好会に入らなければ、俺のような凡人は絶対に関わらないタイプの人だ。でも――
「もっと他の言い方あるだろ。パシリってのはな、パシリをすることでしか存在意義を見出せないヤツのことを言うの。俺はパシリをしなくてもオビワンにはここにいてもらいたいと思ってるぜ」
こういうことを平気で口に出せる人だ。見た目ほど悪い人ではない。
「うっわー、どの口がホザくかね」
「ああ? 後輩思いの優しい先輩だろうがよ。なあ、オビワン?」
ここで振られては無視することもできまい。俺は文庫本を閉じて顔を上げた。
「ええ。先輩にはいつも――」
「律儀に答えなくてよろしい」
ナコさんに遮られて、反射的にキリュウさんを見やる。彼は俺に向けた笑顔を固めたまま、ナコさんに向き直った。
「良好な先輩後輩関係を邪魔すんな。早くアイスでも食いたいんだよ、俺は」
「ガッツリ本音漏れてるし……やっぱりパシらせる気じゃないの」
そう言って椅子から立ち上がるナコさん。でも立ち上がったところで頭の高さがそれ程変わらないのが見ていて悲しい。七分袖のシャツにタイトジーンズと大人っぽい格好をしているのにも妙な虚しさを感じる。彼女は短く切った髪を払い、小さい身体を大きく見せようと腰に手をやって胸を張った。
「自分のことは自分でやりなさい、子供じゃないんだから」
「だって面倒だろ、購買まで行くの」
パシられそうになった身でありながらも、俺はその意見には同意だった。第三部室棟から購買部のある文化会館まではおよそ百メートル。一見近く感じるが実際歩くと中途半端に遠くて面倒な気分になってしまう。
第三部室棟ミステリーの一つ『心折れる百メートル』だと以前ナコさんが言っていたけれど彼女自身の口からしか聞いたことがないから、多分彼女の冗談だったのだろう。しかしそれはそれとして行くのが面倒なのは事実なので、ここはナコさんに頑張ってもらいたいところではある。
「ちょっとオビワン」
「は、はい」
エールを送っていたところに鋭い声で不意打ちを食らってしまい思わず文庫本を取り落としそうになった。
「アンタがすぐに言うこと聞いちゃうからヒトシが堕落していくんだよ」
「はあ……」
「待ちな、ナコ」
僕の気のない返事は、キリュウさんのドスの効いた声にあっさり潰された。
「何度言えばわかる。俺はジン。キヤナギヒトシじゃなくてキリュウジンだ」
タバコを灰皿に押し付けてからナコさんを睨みつけるキリュウさん。何も知らない人が見れば失神しかねないくらい恐ろしい形相だが、図らずともここに在籍している者――無論俺も――は『知っている人』だ。
とはいえ、俺はナコさんのように彼に噛み付くような真似はせず、文庫本を古い木製机に置いて壁の一角に目をやった。
そこには『世界治下経済研究会』と書かれたこれまた古い――だが重厚そうな木の板がかかっている。その下には歴代のサークル会員の名前が書かれた小さな木のプレートがぶら下がっていて、俺は一番上の一列――つまり現在のメンバーの名前がかかっている列に視線をやった。
一年の列には俺の名前が真新しい板に書かれてぶらさがっている。その隣の二年の所にはキリュウさんこと木柳仁の名前。正しくはナコさんの言う通りキヤナギヒトシと読むのだが、そう呼ぶと「カッコ悪いだろ」と、今のように視線だけでハムスターくらいなら殺せそうな顔で怒られるので、目下サークル内ではキリュウさんと呼ぶようになっている。俺のあだ名のことといい、この人はカッコイイとかそういうことで物事を判断する節があることが最近ようやくわかった。
そんなキリュウさんの名前の隣にあるのが、今まさに彼と対峙している小動物もとい、三年の三輪奈々子さんの名前だ。一見中学生にも見えてしまうくらい小柄だが、キリュウさんと堂々と渡り合うのを見てもわかる通り、小さな体の中には度胸やら勇気やらがパンパンに詰まっている。前にキリュウさんが言っていた『身体はSでも態度はLL』という言葉がはまり過ぎて困る。
俺はそんな二人が言い争いをするのをぼーっと眺めた。
「オビワンの件はこの際置いておいてやる。けど名前に関しちゃ放ってはおけねぇな。何度も言ってるだろうが」
確か前に呼び方に対して怒っていたのが五日前だから……うん、割と我慢したほうだ。
「だったら私も何度でも言わせてもらうけど、本名で呼んで何が悪いのよ」
「カッコ悪いだろうが。これも何度目だ、このチビ豆タンクが」
「チビか豆かどっちかにしなさい。そういうの重複って言うのよ。ヒトシって『上を見上げる』とか言っちゃうクチ?」
小さいことに関しては否定しないんだな。
そんなことを考えながら、超極地的な温度上昇現場からから再び視線を壁に戻す。四年のところにかかる功刀恵の名前に鼓動が早まるのを感じながら、横の院生のところに目をやって――
「飽きないね、木柳君も三輪君も」
部室にいた四人目、たった今俺の視界に入った名前の人間が口を開いた。
院生でありこの世界治下経済研究会の会長の森崎理一郎さんはフチの無いメガネを上げて柔和な笑顔を向けてきた。今までずっと喋らなかったのは彼がほとんど口を開かない人間だとかいった理由ではない。ただ単にサークル内ではキリュウさんとナコさんが喋りすぎている――悪目立ちしすぎているとも言える――だけで、その中に決して口数が少ないわけじゃない彼が埋もれてしまっているだけなのだ。
「小尾君は一番若いのだから元気よく混ざってきたらどうだい」
「縁側の年寄みたいなこと言ってないで止めてくださいよ、リイチさん」
俺は頬をかきながら言った。リイチさんはメンバー全員を苗字に君付で呼ぶため、僕もオビワンではなく小尾君と呼ばれる。当然キリュウさんのことも木柳君と呼ぶのだが、リイチさんに対してキリュウさんが怒ることはない。
キリュウさんをはじめ他のメンバーもリイチさんには一目置いているようなのだが、それがなぜなのかは不明だ。単に会長だからというだけではないのは雰囲気的に理解できるが、詳しいことは入ってから三ヶ月しか経っていない俺にはわからない。
「それにしても暑いね」
リイチさんが唐突に話題を変えてきた。ナコさんとキリュウさんの喧嘩など日常茶飯事な上に、特に固執する話題でもなかったので、俺はそうですねと頷いた。
「これでも真夏日じゃないらしいですよ」
「本番は八月に入ってからだろうね」
別に示し合わせたわけじゃないけど、二人そろって窓の外を見た。相変わらず生暖かい空気しか入ってこない。見えるはずも無いのにモヤ~っとした空気の流れが見えた気がした。
「クーラーとか買えないんですか?」
ついそんな言葉が口を突いて出た。だが言ってからすぐに気が付く。返ってくる答えなど最初から決まってるじゃないか。そんな愚問だったがしかし、リイチさんは律儀に応えてくれた。
「確かに僕たちなら買ってもらえてもいいかもしれない。けれどここは『世界治下経済研究会』という潰れる直前の弱小サークルだ、世間的にはね」
わざとらしい含んだ言い方に、俺はつい噴き出してしまった。リイチさんの目はレンズの向こうで笑っている。
「部室にクーラーなんかつけようものなら、どこから盗んできた? なんてことになりかねないですよね」
「全くだ。低賃金で辛い仕事をさせられる土木作業員の気持ちがよくわかるよ」
リイチさんは笑いながらメガネを直した。なかなかどうして彼らしいウエットに富んだ例えである。建物を建造するにあたって脚光を浴びるのはデザイナー、あるいは大工だろう。でもそれだけでは建物は建てられない。測量をしたり、土地をならしたりする土木作業員の存在が必要不可欠である。でも彼らが表舞台に出て注目を浴びることはない。そんな縁の下の力持ち的なところが俺たち『世界治下経済研究会』に似ていると言いたいのだろう。
そんな感じで一人で納得していると、入り口のボロ戸がゆっくりとスライドした。
「あら、空気がこもっちゃってるじゃない」
続いて女性の声がした。鈴鳴りのような繊細で心地のいいその声に俺の心臓が大きく一回跳ねた。
戸の隙間から姿を現したのはやはり四年の功刀恵さんだった。
半袖のブラウスに淡いブルーのロングスカートといういでたちの彼女からはまるでどこぞのお嬢様のような印象を受ける。それに加えて背中まで伸びる黒髪と、優しい中にも凛とした雰囲気を漂わせる目元のせいか、道着袴にナギナタなんかを持たせても似合いそうだ。
「やあ、功刀君」
俺を妄想の中から引っ張り出してくれたのは、リイチさんの爽やかすぎる声だった。すぐに頭を切り替えて小さく会釈すると、ケイさんは小さく微笑んでくれた。照れと恥ずかしさで頬が上気するのを感じる。
「あ、ケイさん」
「ういっすー」
いつの間にか言い争いをやめていた二人もケイさんのほうへ向き直っていた。ケイさんは挨拶もそこそこに入ってきた戸を全開にする。
「こんな暑い日に閉め切ってたら熱がこもって大変よ。こうやって窓と戸を開けて空気の流れをつくってあげれば少しは涼しいでしょ」
確かに言われてみればいい具合に空気の通り道ができて涼しい空気が室内に流れ込んできている。
「どうして窓しか開けてなかったの?」
全くその通りだ。小首を傾げるケイさんに、僕は心の中で大きく頷いた。暑い部屋で空気の流れをつくれば涼しくなるなんて常識じゃないか。それなのに暑さでぼーっとしていたせいか、全くそんなことまで頭が回らなかった。
と、ここまで考えて俺はあることに気が付いた。
失礼な話だが、キリュウさんとナコさんなら俺と同じように頭が回らなかったとしても納得できる。だがリイチさんに限ってそんなことなどあり得るだろうか。
そんな疑問が浮かんだが、それはすぐに氷解した。
「木柳君と三輪君が喧嘩すると思ったからなかなかね。喧嘩が始まってから戸を閉めに行くのも感じが悪いじゃないか」
「前回が四日前だったから……確かに周期的には来るところですね」
ケイさんが納得したように頷く。
なるほど。あの争いを木製の引き戸を挟まないで廊下に出すわけにはいかない。この部室棟はボロボロのクセに声だけは妙に響くのだ。それら全てを理解した上でリイチさんは引き戸を開けなかったのか。
「周期って……」
短いタメ息と共にナコさんの呟きが聞こえた。それが合図だったかのように俺、リイチさん、ケイさんの三人は引き戸を開けることのできなかった原因の二人を見た。だがその視線には非難めいたものは含まれておらず、むしろケイさんに至っては笑すら浮かべている。
いわば予定調和というやつだ。以前リイチさんがこの「二人の喧嘩は『新喜劇かプロレス』のようなものだ」と言っていたが、まさにその通りだと思う。
とはいえ当の二人としては居心地が悪いことには変わりないのだろう。キリュウさんとナコさんは所在無さげに視線を彷徨わせると、きっかり五秒後同時に「ごめんなさい」と頭を下げてきた。こういうところは無意味に気が合うから面白い。
おそらくリイチさんとケイさんも同じことを考えていたのだろう。俺たちは顔を見合わせると肩をすくめて小さく笑った。
「それよりケイさんよ。今日は卒論の資料集めにいくんじゃなかったんすか」
キリュウさんが窓際のパイプ椅子に座って自慢のヴィンテージジッポーで新しいタバコに火をつけた。
そういえばケイさんは今日は図書館に行くからここには来ないと言っていたのを思い出す。それにしても提出は年明けの二月だというのに、今の時期から卒論の準備に入るなんて恐れ入る。いや、これが本来の学徒のあるべき姿か。
「あら、来ちゃダメだったかしら?」
「そういうつもりで言ったんじゃないっすよ」
「ふふ、わかってるって」
悪戯っぽい笑みでキリュウさんをあしらうケイさん。そのまま本棚のところまで行って一冊の本を抜き出した。
「『各国の経済学とその心理』……?」
近くに寄っていったナコさんが本のタイトルを読み上げる。
「タイトル聞いただけでノーミソ破裂しそうだな、オイ」
キリュウさんが眉根を寄せながら窓の外に向かって紫煙を吐き出す。仮にも『経済』と看板を掲げるサークルの一員なのだから、せめて読んでから脳みそを破裂させるべきではなかろうか……いや、そもそもを言うなら破裂なんかさせるなという話なのだけれど。
「卒論のテーマからは少し趣旨がずれちゃうけど、参考までに読もうと思ってね」
ケイさんは顔の高さで本をちょいちょいと動かしてから、肩に掛けていたトートバッグに入れた。
「これでよし」
小さくタメ息をつくケイさん。彼女にしては珍しい。どうやら相当お疲れのようだ。
「そうだ。ねぇねぇケイさん」
ケイさんの背中を不安げに見ていたナコさんがポンと手を叩く。彼女はケイさんを呼んだにも関わらず、なぜか俺の方に視線を向けた。
「オビワンに手伝ってもらったらどう? 資料集め」
何を言い出すんだこの人は。
「そうっすね、荷物持ちにでもしたらどうっすか。つーか、経済学部だから少しは役に立つっしょ」
キリュウさんまで思いついたようにそんなことを言い出す。リイチさんも何か言うわけではないが、なんとも楽しげな笑みを浮かべて僕を見た。
どうして俺がこんな暑い日にケイさんと二人で図書館に行って一緒に資料集めを……してもいいじゃないか。
むしろこっちから頼みたいくらいだ。キリュウさんとナコさんのニヤニヤ顔に若干イラついたがこの際どうでもいい。
「確かに助かるけど、オビワン君に悪いわよ」
ケイさんが困ったような表情を浮かべる。
すぐにでもそんなことありません、と首を横に振りたいところだが、ふと思いついて躊躇する。どうせ後でナコさんとキリュウさんに「エサにがっつく犬みたいだった」などとバカにされるのがオチだ。とはいえここで断れば「ヘタレ」の一言で一蹴されてしまうだろうし、なによりケイさんにいいところを見せるチャンスを棒に振るなどできるはずもない。
つまり問題はどうやって自然な流れで手伝いを了承するか。俺はそれこそ『待て』をかけられた犬のような気持ちで必死に頭を回転させた。
「そうですねぇ……終わった後にアイス一本で手を打ちましょう」
我ながら素晴らしい文句だと思う。ナコさんが「そう来たか」と小さく舌打ちをするのを横目に頬が思わず緩んだ。
ケイさんは切れ長の目を少しだけ見開いて、
「それじゃあ、お願いしようかな。アイスも一本と言わず二本でもいいぞ、オビワン君」
と優しく微笑んで俺の額を小突いてきた。
清楚で奥ゆかしい雰囲気を纏う彼女だが、時折こうして茶目っ気を見せてくるから、やられるこちらはもうたまったものじゃない。今のをアイスに換算したら一億本は固いな。
そんなバカなことを考えてしまうくらい、俺の頭は完全に沸騰してしまっていた。
「よかったね、アイス買ってもらえてさ」
「ケイさ~ん、俺にもアイス買ってきてくださいや」
ナコさんとクリュウさんの二人が思惑通りに行かなかったことに対する恨み節のようなことを口々に言う。キリュウさんの場合、素でアイスが欲しいだけのような気がしないでもないけど。
「はいはい。終わったらみんなの分買ってくるね」
そんなキリュウさんにも優しく返すケイさん。
「帰らずにここに戻って来るということは、それ程時間はかからないということだね」
気の無いガッツポーズをきめているキリュウさんを横目にリイチさんが言った。ケイさんがコクリと頷く。
「二時くらいには終わると思います。長すぎるとオビワン君に悪いですし」
全然そんなことありません、と言えるほど俺の心臓は強くはない。さっきの『アイス一本』でなけなしの勇気は使い果たしている。
「じゃあ、行ってきますね」
ケイさんが踵を返したので、慌ててそれに倣う。それにしてもこんな幸運が舞い込んでくるなんて本当にラッキーだ。可愛い拳で小突かれた額に触れながらついついニヤついてしまう。
「ケイさんにヘンなことしちゃダメだぞ」
「アイツにそんな度胸無いだろ」
嬉々として部屋を出て行こうとした背中に邪気まみれの声がかかる。俺は半身になって振り返るとナコさんとキリュウさんに鋭い目を向けた。無論、口元が緩みきっていることを承知の上で。
俺はいつもでも嫌らしい笑みを並べるナコさんとキリュウさんを頭からシャットアウトするようにわざと大きな音を立ててドアを閉めた。