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第3話裏:ようこそ湖の町レイクポートへ

全くこいつは取りあえず行動して、試してみるって事にはならないのか。

こんなに可愛い兎さんが、その身を犠牲にして提供してくれったっていうのに。

これじゃあ駄目かもしれないとか、失礼にも程がある。

あっ、とりあえずこいつはもう逃がしてもいいか。


「じゃあ、俺はこの子を逃がしてくるからちょっと待ってて」


エンにそう言い残して森に入ろうとしたら、後ろで動く気配を感じる。

ちょっと付いてこられるとまずいしな。


「あっ、付いてこようとしても気配で分かるから」


俺が一言釘を刺して置くと、ぴたりと動きが止まる。

うん素直で宜しい。

取り合えず、エンから見えないところまで進むと、ウサギの角を治してやる。

以前のものより立派なものにしておいた。

すると、ガサッという音がして目の前のウサギ()より一回り大きな角ウサギが姿を現す。

そしてジッとこっちを見つめてくる。

(あんな弱そうな冒険者が角を持って行くのですから、貴方さまはもっと立派なものを持っていかれるべきでしょう)

(お父様はこの付近の角ウサギで一番立派な角を持ってるからね。魔王様には相応しい)

俺の腕に抱かれていたウサギもそう言うので、一応もらい受ける事にする。

もちろん、折った角は元通り以上にして治してあげたが。

すると、さらにガサガサという音がして熊や、蛇、鳥や、狐、狼などの様々な魔物が現れる。

そして、全員がそれぞれ最も優れた個体の素材を提供してくれるというのだ。

断ったら…角ウサギのは貰ったのに、僕たちのじゃダメなんですねと凄く悲しそうな顔をしてきたので、仕方なくもらってやった…

そして、全員を元通り以上にして治してやったが、これって結局どっちが徳したんだろうね?

お陰で、この森の魔物は全て俺を魔王どころか魔神といって崇めだしたから、そのうち役に立ってくれるといいな。

おっと、時間を掛けすぎた、すぐに戻らないと。

俺は魔物達に別れを告げて、エンの元に戻る。


「あの…普通に逃がしたんですよね?」

「うん、そうだよ」


何も聞くなよ?という意味も込めて、満面の笑みで応えてやるとすぐに口を瞑った。

全然納得してない顔をしているが、聞いても無駄だという事は理解してもらえたようだ。

意外と、空気が読める奴で良かったよ。


「じゃあ、行こうか」

「ええ…」


すっげーウズウズしてるなコイツ。

そんなに気になるなら聞けばいいのに…答えないけどな。

顔を見ただけで、こいつの考えてる事なんて大体分かる。

こいつは交渉事でもポンコツに違いない。

一体、なんなら出来るんだろうな。


「道だ!」

「うん、ここを真っすぐ歩く人の気配がポツポツとしてたからね」


んなもん見たら分かるだろう。

これが道じゃなかったら、なんだというのだ!ったく。

というか、道に連れていくと言ったんだから当たり前だろ?

信じて無かったのか?失礼な奴め。

これはマイナス査定だな。

お前ら…!

しばらく歩いていると、ちょいちょい魔物が前に現れて拝んでから、森に戻って行く。

きっと先の連中が、話を広めたのだろう。

人間ならまるで有名な聖者が町に来たからそのご尊顔を拝見して、有り難いからついでに拝んでおこうといった感覚なんだろうな。

その度にエンがこっちをチラチラ見てくるのがイラッとするが。


ようやく森を抜けたか。


「はー、どうにか生きて帰れる」


横でアホが、また当たり前な事を言っているが、もう放置でいいだろう。

目の前には平原が広がっているが、町は丘のちょっと向こう側だな。

人口は…いま、町に居るのが6121人。

まあ、住人以外の人も含まれているがこれはちょっと期待が出来そうだ。


「ふーん…あの先に町があるんだ」


取りあえず、町についたら飯だな。

自分で作った方が美味いものが作れるが、雰囲気を合わせると不思議と現地で食べる現地の料理の方が美味しく感じたりするからな。

本当に謎だ。

ペットボトルの六甲の美味しい水より、名も無い汲みたての綺麗な井戸水の方が美味しく感じられるようなもんか?いや、ちょっと違うか?いや、そんなもんだろう…いや、微妙に違うか…どうでもいいか。


「ここからは、僕が案内しますよ」

「っていっても、一本道だけどね」


こいつは本当にアホだな。

街道に辿りついてから案内したとところでなんの手柄にもならんぞ、このど阿呆めが。

まあ、本人も確かに…でもそれ言っちゃうみたいな顔をしている。

逆に言われるようなことを言うなと言ってやりた。


「えっと…カナタさんは、身分証明書とか持ってます?冒険者では無さそうですけど、商業ギルドや魔法ギルドの発行する身分証でも良いのですが」


唐突にそんな事を言い出したが、持ってる訳無いだろうこのど阿呆め…いや、これはエンが知らないのも当然だな。

俺の出自は伝えて無いしな。

召還されましたなんて言って、大騒ぎされても困るしな。


「えっ?それってどんなやつ?」

「えっと、これです」


ふむ、一応中身は読めそうだな。

なになに、仮冒険者免許証…やっぱり仮免じゃん!

レベル6か…雑魚だな。

ステータスはっと…

ん?何その手?

もしかして、取っちゃまずかった?


「ダメですよ!ギルドの発行するものには、本人の詳しい情報やステータスが乗ってますので、無暗に見てはいけないんですから」


と思っていたら、急にエンがプリプリ怒り出した。

そりゃそうか、冒険者未満でもプライバシーってのはあるしな。

しょうがない、返してやるか。


「えっ?そうなの?じゃあ、仕方が無いか」


返そうとしたら、いきなり吹き出しやがった。

唾掛かったらどうすんだよ、キタね―な。

っていうか、ああ、もしかして取られたの気付かなかったのか?

むしろ、逆になんて気づかなかったのかが知りたい。

普通分かるだろう…まあいいや、普通に返すか。


「ん?見ちゃいけないんだろ?返すよ」

「え、あっ…はい」


なにビビってんだよ。

普通に返すって、失礼な奴だな。

エンがビクビクしながら、俺の手から仮免を受け取っている。


「はあ…気を付けてくださいね!体重や年齢が乗ってますから、うかつに女性の冒険者証を覗いた日には殺されたってしょうがないですよ!」

「それは怖いねー」


それは良い事を聞いた。

是非お知り合いになりたい女性の方が居れば、カードをこっそり盗み見よう。


それからしばらく進むと、外壁と大きな門が見えてくる。

見張りは、門の横に2人と門の上のやぐらに4人か。

大分手前から照らしているが、夜も開放しているみたいだな。

それでか…


「止まれ!ってなんだ、エンか」

「ああ、こんばんわガンツさん」


エンに声を掛けて来たのは、頬に十文字傷のあるかなりおでこの広い40代の男性か。

エンよりは強そうだが、雑魚だな。

こいつクラスで門兵になれるのか。

これなら、10万人居たとしても5分もあれば皆殺しに出来るな。

国を取るのは簡単そうだ…しないけどね。

いや、国を相手取る事があるかもしれないからさ。


横でおっさんとエンが仲良さげに話している。

顔見知りか…なら話は早そうだな。


「それで、後ろの男性は?」

「ああ、こちらはカナタさんという方で、森で迷っていた僕を拾ってくださった方です」


エンの説明に対してこっちを伺うように見てくる。

この反応少しは分かる奴か…

じゃあ、何かあっても力ずくでどうこうしようとは思わないだろうな。


「ああ、うちのルーキーを助けてくれてありがとうな。ところで見ない顔…というより、見ない人種だがイースタンか?」

「イースタンになるんでしょうね。カナタと言います。まあ、俺としては東洋人って言われた方がピンと来るけど」


俺が身分証を持っていない為。どうやら町に入る為の手続きが別途いるらしい。

裏の詰所に案内される。


「さてと、街の滞在許可証を発行するから、まずはこちらの用紙に記入してくれるか?」


差し出された用紙を見る。

エンのギルドカードの時もそうだったが、普通に読めるんだよな。

文字の形状は、あからさまに他の世界のものと違うのにな。


「ああ、読めるし書けるのか…この辺はテンプレだな」


書く方も問題無さそうだ。

まあ、問題あればエンとおっさんの知識を魔法で奪えば良いだけだから、特に困らないんだけどね。

ただ、文字が読み書き出来る原理くらいは知りたいな。

記憶に刻まれたのか、変換されてるのかくらいは分かると、応用が利きそうなのだが。


「そうだ、こいつの身元保証人はお前で良いのかエン?身元保証人が要れば、このまま発行して終わりだが」

「ええ、命の恩人でもありますし…なんとなくですが、信用に値する人だと思いますよ」


色々と考え事をしていたら、何やら横でも話が進んでいる。

なんで俺より弱い奴が、俺の身元保証人になれるのか不思議だがそういうものなのだろう。

というか、知り合いと一緒ならオッケーって奴か?

実際一人だった場合懲罰歴や、人相書きとの照合…さらに周辺国家からの逃亡犯罪者の可能性の確認で1ヶ月くらい監視付きでの生活になるらしい。

ここは、流石にエンに感謝だな。

これだけでも、十分役に立ってくれた。


「ようこそ、レイクポートへ!」


おっさんが何やら自慢げに言っているが、それってRPGの町の入り口に居る村人Aか兵士Aのセリフだからな。

そうやって言われると、異世界に来てるなーって感じがしてワクワクしてくる。

まあ、俺の場合地球から異世界に転生してから異世界に召喚されたという、冗談みたいな状況だが。


「うん、素晴らしいな」


しかし、本当になんの特徴も無い中世っぽい、ヨーロッパぽい町並みで、すっごい普通っぽくて…ゲームの世界に入り込んだみたいな感覚だ。

これから、楽しみだな。

遅くなりました。

ブクマ、評価くださった方、本当に有難うございます。

凄く意欲を刺激されるのですが、仕事の都合上こちらはこのくらいの投稿ペースになると思います。

宜しくお願いしますm(__)m

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