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ハッピーポッピンロリポップ  作者: タケウチタケシ
第一章 コルトゥーラ
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5『おめざにキャンディ』

【あらすじ】イエスロリータ猛タッチ。

      5


 柔らかな日の光で目を覚ました。

 何だかいやらしくて最高に幸せな夢を見ていた気がする。

 下着の中が大変なことになっている。なるほど、これが夢の精というやつか。キンモクセイの花が咲き乱れている。

 何だこれ……。

「……あ」

 そうだ。そういえば俺、寝る前にエイリーにキスしたんだった。

 それを思い出すと、マイリトルサンがたちまち大暴れ大蛇伝説していくのが感じられたけど、

「あ、エイリーもういないのか……」

 エイリーが寝ていた机を見ると、すでに誰もいなくなっていた。

 まぁ、メイドさんだし朝も早いんだろうな。

 窓を開けると、エイリーより一回り小さい女の子達が、庭で洗濯物を干したり掃除をしたりしていた。だけど、それは手作業じゃない。

 みんな当然のように魔法で風を出して洗濯物を乾かしたり、庭の落ち葉を集めたりしている。

「んーっ……」

 伸びをする。

 俺は本当に、魔法の世界にきたのだ。

 さぁ、無能力者として、魔法の世界を満喫しようじゃないか。

 ……と思ったけどまだ眠い。眠ってようかな。まぁ、いいよね。お姫様(だが男)だしね。

「うへぁー」

 情けない声を出しながら、ベッドにずべーっと寝転がる。

 うーん、最高だ。二度寝しても誰からも怒られることもない。好きな時に食べて寝て、ロリメイドさんを眺めて。最高だ。

「……ん?」

 枕元に見慣れない物が置いてあった。

「キャンディ……?」

 棒の先に丸いキャンディが付いているタイプのやつだ。

 いや、それ自体は非常に見慣れたものなんだけど……剣と魔法の世界に何でキャンディがあるんだ?

 ……これ、本当にキャンディか?

 匂いを嗅いでみる……キャンディだ。ほのかに甘い匂いがする。

 きれいな白い棒の先に、金と白のグラデーションのかかった包みが付いている。サイズは、少し大きめのアメ玉ぐらいだ。

 きっとエイリーがおめざにくれたんだろう。ありがたく食後にいただこう。そう思ってポケットにしまう。

 そういえば、キャンディとかきれいな包みとかがあるみたいだけど、この世界の文明ってどれぐらい進んでるんだろう。

 再び窓の方へいき、外を見る。

 メイドさん達からさらに視線を遠くに向けると、どこまでも広がる広大な畑の向こう側に、大きな青々とした山が連なっている。

 ぽつぽつと見える建物を見ると中世ぐらいな気がする。

 でも、キャンディがあるってことは、そこまで古い文明じゃないのか。スマホとかあるのかな。ないだろうな。

 あぁ、となるとエロ動画とかエロ漫画とかもう見えないのか……。そう思うと寂しいな。

 でもまぁいいか。これからリアルエロ漫画みたいな生活をするわけだし。

「姫、朝食のご用意ができました」

「うん、今いくー」

 ドアの外から聞こえたエイリーの声にそう答えて、とてとてと歩きだす。

 さぁ、お姫様二日目、張り切っていこう。


「おはよう、パーチェ。昨日はよく眠れた?」

「はい、お母様。もうケガも痛くありません」

 席に付くと、国王は俺に『よっ!』と声をかけた。

「さぁ、今日もモリモリ飯を食おうぜ!」

 そう言いながら、すでに両手に細長いパンを持っている。これが、彼なりの励まし方なのかもしれない。

 国王夫妻とエイリーと俺。今日も四人の朝食が始まる。

 俺が無能だと分かってもみんな、とても優しかった。

 でもそれは、俺の実力じゃない。パーチェちゃんが、俺の人格が入ってくる前に積んだ人徳のおかげだ。

 こんなの、横取りじゃないか。

 と、ちょっと沈んだ気分になったけど、……まぁ、もう横取りでもいっか。

 こうなったらとことんクズを謳歌しよう。昨日、エイリーの寝込みを襲ってキスしちゃったしな。

 それにどうせ、元の世界にいても俺は引きこもること間違いなしだったし、それならお姫様として守られつつ、ロリメイドさんを毎日眺めて幸せに暮らそう。

 そう考えると、改めて本当にいい世界なのかもしれない。

 能力者になったとしても、炎とか電気とか出す相手と戦うのなんて怖いし、ならここで、ロリメイドさんを眺めるだけの平和な一生を終えよう。

 何だかほっとした。そうだ。元の世界よりよっぽどましじゃないか。謳歌しよう。

「お父様、お母様。昨日は取り乱してしまいまして、ごめんなさい」

 三人が驚いて食事の手を止める。国王までもがパンを手にしたまま止まっている。

「……それは仕方がないわ、パーチェ」

 と王妃。

「自分に能力がないだなんて知ったら、誰でも取り乱してしまうもの」

「そうだそうだ。気にすんな」

 再びパンをガツガツ食べ始めた国王は、どうやら本当にそこまで気にしていないようだった。

 パーチェちゃんが死ぬまで俺が守る、ということで自分の中で結論を出したらしい。

「お父様、お母様、私、無能力者でも大丈夫です。お父様もいらっしゃる、お母様もいらっしゃる、それにエイリーやたくさんのお付きの方々がいてくれる……こんなに幸せなこと、ありませんわ」

 ふんわり、と微笑んでみた。

 さぞかし前の俺がやったら気持ち悪かっただろう。だけど今の俺は美少女(だが男)だ。

 この姿、様になっていることこの上ない。

 もちろん、前までの俺と喋り方が全然違っているけど、見た目と声がこんなんだから自然に演技ができる。

 きっと、あと三日も経てば、演技とも思わず自然に喋れるだろう。

 あーあ、前の俺もこれぐらい話せればなぁ。

 まぁ、今の俺は王族の跡継ぎでお姫様で、しかも美少女(だが男)だからな。

 やっぱ、見た目がいいと誰にでも愛してもらえる気がして、朗らかで、優しい気持ちになれるんだろうな。

 これが、可愛い子は優しくて、ブスは心までブスっていう事情のメカニズムなんだろうな。まぁ前世(?)の俺がそうなんだけど。

 何だか嬉しくて幸せで、自然とにこにこしちゃう。

 適度に会話を挟みつつ、食事が進む。

「エイリーちゃん、今日は私達、国の見回りに行ってきますね」

 王妃がエイリーに微笑みながらそう言った。

「えぇ、今日はそのご予定でしたね」

「その間、パーチェに色々教えてあげてね」

 にこりとする王妃に、

「色々、とは?」

 エイリーが首を傾げる。

 能力の使えない俺が、何を教わることがあるんだろう。

「パーチェ、あなたが能力を使えないと分かった今、基礎的な体力作り、そして一通りの護身術は身に付けるべきです。エイリーに教えてもらってね」

 エイリーは納得したように頷くと、

「かしこまりました」

 と頭を下げる。

 おぉ、この穏やかなママ、朗らかに優しそうな顔して俺にのほほんとした人生を送らせる気はどうやらないらしい。まぁ、娘(だが男)を思ってのことか。

 それにしてもエイリーの手取り足取りで、護身術が教えてもらえるのか。楽しみだ。

 この体なら身体能力のスペックもかなり高そうだしいけるだろう。

 あ、でもこの女の子みたいな体に筋肉が付いてゴリゴリしい体になっても嫌だな……。

 と、俺が乗り気でワクワクしながら朝食後のトレーニングメニューを聞いていたら、

「お前もついにやる気になってくれたか」

 国王が大袈裟に喜んでそう言った。

 どうやらやはり、パーチェちゃんは能力を使うことを嫌がっていたらしい。

 なので、国王夫妻はもちろん、エイリーを始めとした付き人もパーチェちゃんの前で能力を使用することが禁じられていた。それどころか、能力の話すら嫌がった。

 それが昨日、俺が『能力について知りたい』とか言ったため両親は『ついにその気になったか』と感動して、そして……無能力者であることが判明したのだ。

 そういうわけで、両親である国王夫妻の能力やエイリーの能力を、(パーチェちゃん)が何も知らないのはごく自然なことだったようだ。

 だからエイリー達には、パーチェちゃんが急に能力について興味を持ったように見えているんだろう。

 いやはや、そりゃあもう興味津々ですよ!

 今日はマンガの世界みたいな能力をすぐ近くでもっと見られるのか。楽しみだな。

 国王がウィンドで、エイリーがナインの歯車だろ? 王妃ってそういえば何なんだろう。

 テンションが上がってきて、食事もいつもより少し急いで食べてしまった。


 その頃には、ポケットに入れたキャンディの存在を忘れていた。


続く

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