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ハッピーポッピンロリポップ  作者: タケウチタケシ
第一章 コルトゥーラ
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4『堕ちるところまで堕ちてしまえ』

【あらすじ】この世界の能力者の分類方法などを教わったロリコン。自分がどこにカテゴライズされるのかウキウキしながら訊ねたら突如攻撃される。

     4


 気が付くとベッドの上だった。

 何だか夢を見ていたような気がする。

 なぜか俺がお姫様になっていて、ロリロリメイドさんと一緒に剣と魔法の世界を冒険する、みたいな、何とも幸せな夢だった気がする。

 でも、そんなわけがない。俺はイジメられっ子の妖怪系高校二年生男子なのだ。

 さぁ、今日もロリエロ画像及び動画をネットから漁る一日が始まるぞ。

 ベッドから起き上がると、

「……おぉ」

 どうやら夢じゃなかったみたいだった。

 さっきのパーチェちゃんの部屋と比べると、若干質素な部屋にいた。

 部屋にある鏡の中には、美少女(だが男)がいる。

「いたたた……」

 それにしても額がやたらとずきずき痛む。鏡を見ると、おでこに漫画みたいに×印で治療がされていた。

「いってぇ……何だ? このケガ……」

 あれ、寝る前俺、何してたんだっけ……?

 エイリーや国王夫妻と朝食を食べて、国王の能力を見せてもらって、俺も自分の能力を知りたくて、エイリーに能力のタイプとクラス、ランクを教えてもらって、『魚の雨』の話を聞かせてもらって、そして──

「あ、そうだ……」

 ケガの原因を思い出すと余計に傷が痛む。

 そうだ。エイリーが突然、俺に攻撃してきたんだ。金色に光る歯車がまっすぐ俺の方に飛んできて、思いっきり頭に当たって……そして、どうやら俺は気絶したらしい。

 あの歯車は何だったんだ。

 教わった八つの属性ではなかった気がする……となると、エイリーは珍しいと言われているナインの能力の使い手なのか?

 でも何で俺を攻撃する必要があったんだろう。やっぱりエイリーは俺の……パーチェちゃんのことが嫌いなんだろうか。

 いや、そんな個人的な恨みで人を攻撃するような子じゃないと思う。美少女に悪い子はいないのだ。

 確か俺は、エイリーに『エイリーの能力』と『自分の能力』の両方を訊いた。そしてエイリーは『同時に教える』と言って俺を攻撃した。

 と、なると、エイリーは俺を攻撃して危機的状況に陥れることで、俺の能力を強制的に発現させようとしていたんじゃないだろうか。

 でも、だとしたら何であのタイミングで俺の能力は発現しなかったんだろう。間違いなく危機的状況だったはずだ。

 ずきずきと痛む頭を押さえながら、とりあえずエイリーのところに事情を聞きにいこうと立ち上がり──


「無能力症!?」


 ばんっ、と机を叩く音と怒鳴り声が聞こえて、その場に立ちすくんだ。

「リベロさん、落ち着いて。パーチェに聞こえてしまいます」

 王妃の声が聞こえる。先程のような穏やかさはなく、声には怯えが見える。

「落ち着いてられるかよ! 自分の子どもが、無能力症なんだぞ!? どういうことか分かるだろ!」

「ねぇ、エイリー。本当なの? 本当にパーチェは、その……」

 王妃は声を潜めて、

「……なの?」

 と言った。その……の後は聞こえなかったけど、無能力症、と言ったようだ。

「えぇ、残念ながら」

 エイリーが落ち着いた声で答える。

「私は先ほど、パーチェ様を害するつもりで能力を使用しました。もし姫が何らかの能力を持っていれば、私の攻撃を受ける瞬間に、能力が発現したはずです。ですが、それがなかった……」 しばらくの沈黙の後、

「もし、私が直前で能力を解除していなければ、私は──パーチェ様を殺していたかもしれません」

 はっ、と、王妃の小さな悲鳴が聞こえた。

「そんな、まさか。俺達の子だぞ。霊獣級能力者二人の子どもだぞ!」

「リベロ様、落ち着いてください。基本的に能力のタイプやクラスは受け継がれますが、例外もあります。弱者から強者が生まれる世界です。その逆もあり得ます」

「そんなことは分かってるよ!」

 もう一度、机を叩く音がした。国王の声にも焦りが見える。

「そんな……あの子はこれからどうやって生きていけばいいの?」

 王妃の嘆く声が聞こえる。泣いているのかもしれない。

「俺達が死ぬまで守る。何があってもあいつを守り抜くんだ」

「でも私達は、あの子が大人になった時、まだ戦える? とてもそうは思えないわ。あの子が天に召されるまで一緒にいられる?」

「それは……」

 国王が黙る。

 まぁ、無理だろう。間違いなく国王夫妻が先に死ぬ。パーチェちゃんはまだ十歳そこらだけど、国王夫妻は三十才ぐらいだろう。

「ご安心ください」

 イスが引かれる音がした。エイリーが立ち上がったようだ。

「私が、命に代えても姫をお守り致します」

 しばらく、重たい沈黙が続いた後、

「……頼んだぞ」

 と、国王が絞り出すように行った。

「無能力者が悪い連中に捕まったら、何をされるか分からないからな」

「そうね。ましてやあの子はこの国のお姫様だもの。無能力者だと知れ渡ったら、この国自体が危険だわ」


 無能力者。


 どうやら俺のことらしい。

「でも、酷いわ……。無能力者なんて、精霊王級能力者よりも少ないんでしょう?」

「えぇ、希少だと言われているナインよりもさらに……」

「どうしてあの子が、こんな酷い罰を負って生まれてきたのかしら……可哀想だわ」

 ようやく話が読めてきた。

 どうやら、俺は何百万人に一人の難病みたいなものらしい。

 魔法の世界で。

 みんなが当たり前に魔法を使える世界で。

 俺は、無能力者。

 無能。

 何にも、持ってない。

 今までたくさん言われてきた。

 ここでも言われなきゃいけないのか。

 昔から、顔がよくなかった。写真で見ても、不細工な子どもだった。その上、にこりとも笑わないから、不細工さと不気味さ、そして何より無愛想さをじっとりと増幅させていた。

 運動神経がなかった。走っても遅いし、長距離を走ると死にそうになるし、野球のフライは怖くて避けるし、サッカーは飛んでくるボールが怖くて思わず手でガードしちゃうし。

 勉強もできなかった。だって、英語も国語も理科も社会も必要ないだろ。織田信長が何したって俺の人生に関係ないだろ。歴史なんて昔の人が書いたラノベみたいなもんだろ。そんな本当かどうか分からないものをありがたがって勉強するなんて本当にくだらない。英語は分からなかったらスマホで検索するし。

 俺は何もしてないのにいじめられた。顔がよくないだけで。俺は何にもしてないのに。

 何か一芸、あればよかっただろう。

 例えば、勉強ができたり。

 例えば、運動ができたり。

 例えば、愛想がよかったり。

 でも俺は、何もできない。

 全部は、顔のできが悪いことが悪い。このせいで俺はイジめられて、人生に対するモチベーションが上がらなかったのだ。

 その結果、無能、と呼ばれた。

 能が、芸がないから。

 何もできないから。

 その点、この世界の俺は違う。顔はいいし王族だし、可愛いロリメイドさんまでいる。

 楽しい剣と魔法の世界を、レッツエンジョイ。


「──だと思ったのに!!」


 八つ当たりのように、ヒステリックを起こしたように叫んだ。

 無能。

 無能無能無能。

 無能なんだ。

 喉の奥が血の味だ。泣けてくる。ぽろぽろと頬に涙が流れていく。

 期待してたのに。この世界の新しい生活に期待してたのに!

 顔がよければ全部幸せになれると思ったのに! どうして俺の人生は、こうもうまくいかないんだ!

 俺は、イジめられても絶対に泣かないと決めていた。泣くと、イジめているやつらが調子に乗るからだ。

 だから、イジめられても『は? だから何? それ楽しい?』みたいな顔をして、やり過ごしていた。泣く癖が付くといけないから、家でも、どこでも泣かないようにしていた。


 でも、もうダメだ。


 心が、ぽっきりと折れた。

 俺は、何にもできない。

 どこにいても、何をしていても、顔がよくなっても、王族に生まれたって、無能だ。『俺』という存在事態が、魂レベルでダメなんだ。

 今まで、それこそ物心付いた時から我慢していたどろどろとした負のエネルギーが、思い出したくないたくさんの思い出と一緒に一気に噴出して、もう止まらなかった。

 大泣きする自分の声が子どもそのもので、その声を聞いていると余計に悲しくなって、輪をかけて泣けてくる。

「パーチェ、入るぞ」

 慌ただしいノックの後に、国王が入ってきた。その後ろから心配そうに顔を覗かせる王妃と、エイリーが見える。

「どうした? まだケガが痛むか? うちの城のホーリー魔法総動員して治したんだがな……もう一回やるか?」

 俺の肩を持って、心配そうに色んなところを調べている。

「大丈夫? パーチェ。まだ痛む?」

 王妃が、少し無理して作った笑顔を見せながら俺を撫でる。

 誰かに撫でられるのなんて、いつ以来だろう。国王夫妻の優しさに胸が締め付けられて、

「私は、無能力者なの?」

 言ってしまった。

 言ってから、しまったと思ったけど、もうどうでもよかった。どうせ、俺には何もできないのだ。

 国王夫妻とエイリーは一瞬息を飲み、気まずそうに顔を見合わせた。嫌な沈黙が続いたけど、

「姫、」

 突然、エイリーがそれを打ち破った。俺の足元に片膝を付いてしゃがんだ。

「あなたに能力がないのなら、このエイリーがあなたの剣に、あなたの魔法になって、永遠にあなたを守りましょう」

 あぁ、かっこいいなぁ、と。

 それに比べて、自分は無様だなぁ、と。

 女の子に、こんな小さな女の子に守られるなんて。情けない。カッコ悪い。最悪だ。

 生まれ変われたら、って何度も考えたのに。

 結局、このザマだ。


 俺は自室に戻された。

 あまりに泣きじゃくるものだから、エイリーが付き添いとして一緒に部屋まで付いてきてくれた。

「ねぇエイリー。私は本当に無能なの?」

「えぇ、」

 エイリーは、俺のベッドのすぐ横にイスを置いて腰かけた。そして、静かに続ける。

「姫は、いわゆる無能力症という大変発症例の少ない病気です。病気といっても先天性のものなので、こればかりは治りません」

 エイリーは結構言葉を選ばずばずばと言ってくる。どうやらエイリーは、パーチェちゃんのことが嫌いというより少し苦手なだけで、そもそも基本的に思ったことをそのまま言う傾向が強いらしい。

「先程、私は姫に対し、能力者としての通過儀礼を行いました」

「どういうこと?」

 通過儀礼というと、民族の若い男衆が鼻ピアス付けました、とかそういうイメージが強いけど……。

「本来、能力というのは能力者がピンチになった時、自動的に発動するものです」

「うん……?」

 だんだん呼吸も落ち着いてきた。ぐっしょり濡れた枕から顔を上げてエイリーを見る。

「ピンチっていうのは、ケガしたり、襲われたり……ってこと?」

「えぇ。ですが安全な城育ちの姫がそういった危機に陥るはずもなく、姫が自分の能力を知りたいと仰ったため、あのような形でわざと危機的状況を作ったわけです」

 なるほど。その結果、俺の能力は自動発動せず、今も頭がヒリヒリするのか。


 あれ。


 何か今、恐ろしいことを思い付いてしまった。

 パーチェちゃんは、まさか『俺』という存在が乗り移ってしまったから無能力になってしまったんじゃないのか。

 俺という無能な存在が中に入ったから、無能力になってしまったんじゃないのか。

 こんなに可愛い子が無能力だなんて考えづらい。たいていこういう貧乏クジを引くのは、妖怪系の俺みたいなやつなんだ。

 だから、もし──

 もし俺の魂(?)がある日パーチェちゃんから出て、パーチェちゃん自身の魂がこの体に戻ってきたとしたら、そのパーチェちゃんは無能力なんだろうか。

 俺という無能が、パーチェちゃんの体に『無能力』という変な『クセ』を付けてしまったんじゃないのか。

「姫、色々お考えですか」

 顔を上げると、いつの間にかエイリーは本を読んでいた。

「!?」

 え? 普通この場面で本とか読む?

 ビックリして逆に冷静になったわ……。

「……うん。色々考えてる」

 俺が答えると、

「姫……私は嬉しかったですよ」

 と恐ろしい返事をしてきた。

「へ!?」

 う、嬉しいだと!?

 おいおいこのメイドさんやっぱパーチェちゃんのこと嫌いだったっぽいぞ!

「そんなに驚かないでくださいよ……」

 俺の表情を見て、エイリーは苦笑いした後、

「……え? あ、あぁ、ち、違いますよ? 姫が無能力症だったことを喜んでいるわけではなくてですね、」

 両手を振りながら慌てるエイリー。

 あ、そういうことじゃないんだ。びっくりした。

「じゃあどういうこと?」

「それは、その……」

「その?」


「姫が……ようやく能力と向き合おうとしてくださったことが」


「え?」

 よく話が分からない。

「どういうこと?」

「姫は物心付いた時から能力を酷く嫌がり、恐れていましたよね」

 どうやらそうらしいので、

「うん」

 とだけ無難に答えておく。

「私には、実戦級のナインの能力者であるということしか取り柄がありません。そんな私が、一国の姫と胸を張って話せるのは、能力のことぐらいしかないのです」

 そんなことないのに、と思ったけど、パーチェちゃんがエイリーに、こういう時どういう風に受け答えをしていたのか想像できなかったから何も言わなかった。

 エイリーの今までの態度は、無愛想じゃなくて、自信がない自分への後ろめたさだったのだろうか。

「ですが、姫が能力のことを嫌うのであれば、私は自ら進んでその話をすることもできません。そんな姫が、能力について知りたいと仰ってくださって、私はとても嬉しかったんですよ」

 そう言って、エイリーは読んでいた本をぱたんと閉じた。そして、日頃の真面目な顔からは想像もつかないほど、ただの女の子みたいににこりと笑った。

 やっぱり可愛いなぁおい。

 クラスにいたら、可愛い子部門の一位か二位は獲れそうだ。

 その顔があまりにも可愛くて、ずっと見つめていたくて、ずっと見つめていて、でもそれが変なことだと気が付いて、

「でも私、無能力者だよ?」

 と、無理矢理言葉をひねり出した。

「そうですね。正直に申し上げますと、お仕えする姫が無能力者だなんて非常に残念です」

「しょ、正直に申し上げ過ぎでしょ!?」

 普通そこは『そんなの関係ありません』とか言うところでしょ!

 本当にこの子は、真面目が過ぎてド直球のストレートを投げまくるが故におかしく見えるタイプなのかもしれない。

「すみません、もう少しうまく言うべきでした……」

「いや、いいよ。そうやって、言葉をねじ曲げないでまっすぐ伝えてくれるのは、エイリーのいいところだよ」

「そうですか……ありがとうございます。姫、確かに私は姫が無能力者で残念です。ですが、そんなことは関係ありません」

「……うん?」

「姫が無能力者であっても、私が姫のために戦います」


 再び目を覚ますと、真夜中だった。こんな時間に起きてしまうのも仕方がない。だって、今日ほとんど寝てたしな……。

 室内を見ると、柔らかなオレンジ色の照明の中、エイリーは机にもたれかかるように眠っていた。

 毎日こうしてパーチェちゃんの部屋で寝ているのか、それとも今日が特別なのか分からないけど、大変だなぁ、と何だか他人事のように考えてしまう。

 そう、これは俺のことなのだ。

 この豪華な部屋も、この能力者の溢れる世界も、無防備な幼いメイドさんも。

「あーあ、何だか惜しいなぁ」

 俺が無能力者じゃなければ、きっとすごい楽しい世界だっただろうに。

 ……いや、待てよ。

 もともと俺はイジメられっ子で、もうすぐ絶賛不登校の予定だったんだぞ? 彼女もいないし友達もいないし、両親にすら疎まれてたし。

 そんな俺が今ではどうだ?

 一国のお姫様で美少女(だが男)だぞ?

 しかも可愛いメイドさんもいるんだぞ?

 ゲームやマンガやネットがないのが残念だけど、この世界がゲームやマンガみたいなもんだし、ネットより刺激的だしな。

 状況は『完璧な理想形』ではないものの、あの濁った、何の希望もない元いた世界に比べたら間違いなくプラスの方向へ向いている。

 そうだ、そうだよ!

 もう勉強をする必要もない! 学校でイジめられることもない! それどころか、みんな話しかけたら言葉を返してくれる! しかも笑顔で!

「何だここは……」

 天国か。

 しかも、周りは幼いメイドさんだらけだ。その中でも特に可愛いメイドさんが俺のそばにいる。

 そうだとも! あの世界に比べたら、俺は何とまぁ恵まれた世界にきたんだろうか!

 もう勉強をしなくてもいい! 学歴や出席日数を気にする必要もない! 食べ物も好きな時に好きなものが好きなだけ出てくる! そして何より、周りにはロリメイドさんがたくさんいる!

 しかもしかも! 俺はこの国の姫だ!


 多少のオイタは、目を瞑ってもらえるのでは……?


 ごくり、と生唾を飲む音が、深夜の部屋に響く。

 多少のオイタ。

 俺の横で眠っている、無防備な幼いメイドさん──

 今までエロマンガでたくさん見てきた、ロリっ娘メイドさんを、あはんうふんしてしまう展開が、今、俺、できてしまうのではないか……?

 この可愛いお姫様には、リトルサンが付いている。こう見えても立派に男なのだ。

 男なら、やっぱり、したくなることがあるだろう?

 白いシルク製のネグリジェの中で、小さい魂が固く固くのたうち回っている。これが大蛇伝説の真相だと言わんばかりに大暴れしている。

 心臓が固く固く脈打つ。これ、周りに聞こえてないか、と心配になるほど、どくりどくりと鳴っている。

 無防備に眠っているエイリー。

 中までぎっしり羽毛なベッドは、降りてもまるで音がしなかった。

 足元にもふかふかな絨毯が広がっている。足音もしない。

 エイリーのすぐそばまでやってきた。メイド服を着たままなところを見ると、やっぱり今日は特別にこの部屋にいてくれているようだ。

 オレンジ色の光に、うなじのやわやわとした黒い毛が輝いている。うなじは透き通るほど白く、張りのある肌に覆われた細い首は、どうしてこんな儚げな存在が生きていられるのか不思議になるほどに弱々しい。

「まつ毛長いなぁ……」

 寝顔が安らかだ。右の頬を下にして眠っていて、右の手の甲で、頬がふにゅっとなっている。可愛い。どれだけ日頃気張っていても、やっぱり子どもなんだなぁと嬉しくなる。

 すー、すー、と上下する肩や寝顔。ますます俺の大蛇伝説がヒートアップしていく。

 整った目鼻立ち。幼い顔付き。

 俺はお姫様。

 無防備な幼いメイドさん。

 多少のオイタは、ねぇ?

「あ、ダメだこれ、我慢できないわ」

 呟いてから、エイリーにそっと顔を近付けて──


 キスを、した。


 唇が、柔らかい。

 顔がちっちゃい。むにむにする。張りがあってぷるんぷるんしている。

 エイリーはすやすやと眠ったままだ。

 まだやるか……?

 いや、ダメだ、ダメだ。

 これ以上やったら、俺、本当におかしくなる。

 下着の中の大蛇は、いよいよ、それこそ文字通り一触即発(一度でも触れてみろ即発射するよ?)状態だ。

 頭がくらくらする。

 キスしちゃった。

 女の子とキスしちゃった! ましてや、こんな小さな、幼い、可愛い女の子と!

 心臓がばくばくする。

 俺はそのままベッドに潜り込み、興奮のあまり気を失うように眠りに就いた。


続く

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