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ハッピーポッピンロリポップ  作者: タケウチタケシ
プロローグ
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セミの鳴く中で

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 小学生の頃、恋をしましたか?


 俺はした。すごく、好きな子がいた。

 大人しくてお上品で、誰にでも優しい、そして何より可愛い女の子だった。

 その当時俺は小五のクソガキで、恋が何なのか、好きってことがどういうことなのか、むらむらと沸き上がるこの気持ちをどうしたらいいのか、まるで分からなかった。

 でも、色んな本やマンガ、テレビの言葉を借りれば、これが俺の初恋であったことに間違いはない。

 俺の初恋の相手は、小学五年生の女の子だったわけだ。

 結果、その恋は叶わなかったけど、無防備なスカートから伸びる彼女の細くて白い脚、華奢な体、動くたびにずれる肩のブラ紐、骨ばった、それでいて柔らかそうな鎖骨、時々見え隠れする、膨らみ始めた胸──

 その、触れたらはらりと壊れてしまいそうでどこか神秘を帯びた花……いや、つぼみに、俺は恋をした。

 そして時は流れ……といってもたったの六年。

 高校二年生になった俺がここにいる。

 つぼみに恋したクソガキ時代から、俺の女性の理想像はまるで変わっていない──


「それでロリコン扱いっておかしいだろ……」

 ガンガンに冷房が効いているはずなのに空気がどんよりとしていて、何より臭い。

 この六畳のマイルームが、俺の唯一の安息の場所だ。

 外からはセミの鳴き声が聞こえる。一匹窓に張り付いたみたいで、ものすごくうるさい。

 窓を叩けば飛んでいくだろうけど、立ち上がって窓のところまでいくのすら面倒だ。

 ベッドとパソコンデスク、トイレへの往復。これが俺の行動範囲になっている。典型的なニートの生活をしているけど、残念ながら俺はニートじゃない。列記とした学生で、今は夏休みなのだ。

 だけど正直、二学期からはニートになりたい。学校なんていきたくない。

 小学校、中学校と九年間耐えてきて、何で高校でもイジめられなきゃいけないんだ。

 イジメの原因は色々ある。というより、『どんな事象でもイジメの原因になり得る』と言った方がいいもかもしれない。

 その数多くのイジメの原因がある中で、俺のイジメの原因は、顔だった。

 だった、というか現在進行形だ。顔だ。顔がよろしくない人間の末路なんて、誰もがよく知っている。

 小さい時から観てきたアニメでは、カッコいい、イケメンのヒーローが、不細工な、キモい悪役をブチのめして、みんなから感謝される。『やったぜ!』って喜ぶ。

 不細工な俺は、容赦なくブチのめされた。だけど、誰も『可哀想』だなんれ言わない。教師ですら口を揃えて、

『やったぜ!』

 だ。

「あぁ。子どもは、美しいなぁ」

 パソコンの画面に写し出されているのは、実に2テラに及ぶエロ画像だ。しかもエロ画像はエロ画像でも、法的にも人間的にもアウトなロリ画像、いわゆる『アウロリ画像』という、持っているだけで逮捕される恐ろしい画像だ。ちなみに動画もある。

 それが実に2テラ分、アウロリ画像、及びアウロリ動画のみで2テラ分あるんだから我ながら恐ろしい。

 でも俺は、少女を愛してはいけないという暴法を敷くこの世界が一番怖い。

 人間が人間を愛することの、いったい何がいけないのだろうか?

 こんなのおかしい。少なくとも、お互いの同意があればいいじゃないか。百歩譲ってそれがだめだったとしても、子どもを産む準備が整っている女の子なら、もう充分に一人の女性として愛してもいいんじゃないのか。大人達の勝手な固定概念で、彼女達の恋心を踏みにじってはいないか。俺はそう思う。

 画面の中の彼女達は、無垢で無防備な笑顔を向けている。自分が何をさせられているのかもよく分からないままに、淫らな姿を晒している。

 そういった姿に、俺は酷く興奮する。

「何かないかな……」

 2テラあっても毎日見ていると飽きるもので、日々新しい画像を探す作業をしている。

 ネットで巨大掲示板を漁る。日課のようになってしまっていて嫌になる。時間の無駄だといつも思う。だけど、他にやりたいこともない自分に気が付いて、もっと嫌になる。

「何だよ、全然ないな……」

 今日は不作か、とため息を吐きながら掲示板を漁っていると、

「お……?」

 くだらない会話や一発ネタのようなものの中に、目を引く一文があった。

『夏は川に行け。子どもの水着姿がたくさん見えるぞ』

「なるほど……」

 あまりに無縁だから忘れていたけど、家から自転車で三十分ぐらい走ったところに、川遊びで有名な川がある。

「特にやることもないしな……」

 引き出しの奥から久しぶりに自転車の鍵を取り出して、部屋を出た。

「出掛けてくる」

 リビングでテレビを観ていた母親にそれだけ伝えて家を出た。特に興味もなさそうだった。


「おぉ……」

 ぷりっぷりのお尻がそこにはたくさんあった。

 スカートタイプの水着なんだけど、スカートが短すぎて、水着からはみ出た小さなお尻が無防備にぷりぷりしている。

 ところどころ、スクール水着を着た小学校高学年ぐらいの女の子もいて、胸がほんのりと膨らんでいる。あれを見て、興奮しない、触ってみたいと思わない男は何なんだろうか。本当に感覚が理解できない。

 あーあ、あれぐらいの歳で彼女がいたら、絶対にやらしいこといっぱいしてただろうなぁ。膨らみかけのおっぱいや、放送コードに乗せられない未熟なところとか、たくさん触ってただろうになぁ。

 ……何か興奮してきたな。

 小学生の時に履いていた短パンを引っ張り出して履いているから、かなりきつい。きつい状態でマイリトルサンが大きくなると、本当にきつい。

 とりあえず、元気になったマイリトルサンを十二時のところにガッチリとセットして、周囲を見渡す。

 川は周囲を森に囲まれていて、家族連れが数えきれないぐらいいる。人でごった返したその風景には、自然の風情みたいなものはまるでない。

 だけど人がいなければなかなか壮観だったかもしれない。川はところどころ小さな滝をいくつも作っていて、ごつごつとした岩が至るところにある。その風情に少女が咲いて、本当に美しい。

 可愛い子いないかな、と周囲を見渡していたら、

「わお……」

 ドストライクな子がいた。小学校の高学年ぐらいだろうか。紺色のスクール水着を濡らして、一人で無邪気に遊んでいる。

 若干スクール水着が小さいのか、肉付きのいいお尻がはみ出ていて、股の辺りもかなり水着の布の角度が際どい。太ももの付け根で肌の色が変わっていて、夏の日差しの元で信じられないほど白く、しかし健康的に輝いている。

 胸もほんのり膨らんでいる。ぱっつぱつのスクール水着の中で苦しそうに、それでいて柔らかに精一杯膨らんでいた。

 だけど彼女は自分にそんな性的な魅力があるということにも気付かず、脚を大きく広げて危ないポーズを無意識の内に取り続けている。

 ごくり、と、喉が鳴る。

 周囲を見る。

 彼女がいるのは、小さな滝の一つだ。大きな岩があって、人がたくさん集まっているエリアから死角を作っている。

 彼女の近くには今、誰もいない。

 岩場の死角に一緒に入って、声をかけてみようか。仲良くなって話しかけて、あの、水をよく弾きそうなきめ細かい肌や、柔らかな胸や下半身を近くで観察したい。

 そして仲良くなれたら、嫌がらない程度にちょっとだけ、冗談めかしてほんのちょっとだけ、体を触ろう。あの小さな顔を、膨らみ始めた胸を、布からぷりぷりとはみ出たお尻を。

 触ったら、自転車にまたがって颯爽と逃げ去ろう。そして、その柔らかな張りの感触を忘れない内に自家発電(セルフプレジャー)して寝よう。

 今、俺は最大のチャンスを迎えている。

 あぁ、ドキドキしてきた。理想の女の子に触るだなんて。

 犯罪? 大丈夫、バレなければ大丈夫。しかも同意の元だ。何も問題ない。どうせすぐ逃げるし、そもそもあの子、自分が何をされたのかすら理解できないかもしれないし。きっとそうだ。大丈夫大丈夫!

 どくどくと、心臓の音が聞こえる。川に膝まで浸かっているというのに、その川の音より心臓の音の方がはるかに大きく聞こえる。

 決めた、いこう。

 一歩ずつ、慎重に、距離を詰めていく。

 近づくたびに、彼女の姿がよく見えた。黒い漆のような髪は水に濡れてその黒さを増し、ほんのりと日焼けした肌は太陽の下で健康的に輝き、水を弾いている。

 細いけど柔らかそうな二の腕。肩甲骨の辺りの剃られていない産毛。産毛に光る水滴。何も手入れをしていないのにつるつるで黒ずみのないきれいな脇。

 しゃがみながら岩から岩へ移動する彼女は、そのたびに大きく開脚をする。だから、スクール水着の太ももの付け根に小さな隙間が開いて、本当に際どい。文字通り、穴が開くほど、その数センチに満たない穴を凝視する。

 これだけ見つめればちょっとぐらいあの憎い布が動かないかな、とわりと本気で願いながら──


「きゃっ」


 可愛らしい悲鳴が聞こえてから一瞬だった。

 岩から滑り、どぼんと大きな水しぶきをあげながら沈んだ彼女は、十秒ほど浮かんでこなかった。

 俺は、目の前で起きた行動が頭の中で処理しきれずに、完全に処理落ちしてその場でフリーズした。

 というか、別に大したことじゃないと思った。どうせ、滑って落ちて、そのついでにちょっと潜水を楽しんでいるだけだと思った。

 だけどそのフリーズも、苦しそうにもがく彼女が水面に顔を出したことで終わる。

「あ、危ない!」

 危ないことなんて誰が見たって一目瞭然だ。周囲で騒いでる家族連れやカップルが見たって一目瞭然だ。

 でも俺は咄嗟にそう叫んで、彼女のもとへ不格好なフォームで泳いで駆け付けた。

 近くに寄った途端、右腕をぎゅっと掴まれる。うわーい女の子に掴まれるだなんて幸せ! とか考えてる余裕はない。めちゃくちゃな力だ。二の腕が千切れそうだ。これが火事場の馬鹿力ってやつか。恐ろしいな。

 そういえば、ライフセーバーが溺れている人間を助ける時って、下手すると自分も溺れさせられるから、一回わざと溺れさせるんだっけか。

 緊急事態なのに、時間が何十倍にも伸びたかのように色んな考えが頭をよぎる。走馬灯とは違うけど、これは何だろう。

 空いている左腕で彼女の腰に手を回す。完全にパニック状態で、体を大きく動かして暴れている。

 あぁ、スクール水着のお腹、すべすべでぷにぷにで、気持ちいいな。

 あぁ、今のおっぱいかな。張りと柔らかさがすごいな。

 これ、お尻だな。もっちもちのつるっつるだな。

「女の子が溺れてるぞ!」

 どこかでおっさんが叫ぶ。

 誰かの悲鳴。

 彼女の悲鳴。

 ばしゃばしゃという水の音。

 セミの鳴き声。

 川の流れる音。

 耳に水が入って音が遠くなっていく。


 あぁ。子どもって、柔らかいなぁ。


 ふっ、と、体から力が抜けて、世界が徐々に白くなっていくのを感じた。

 あぁ、俺、死ぬのかな。

 まぁ、いっか。

 最悪な人生だったけど、死ぬ間際に可愛い女の子に触れるだなんて、神様もなかなか粋な演出をするもんだなぁ。


 強烈なセミの鳴き声の中。

 俺は少女の体の柔らかさに感動しながら、我ながらしょうもない人生に幕を下ろした。


続く

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